第百四十二話 計画的復讐
『復讐は衝動的では無く、計画的に』。消費者金融のような
「炎陽の能力『魅了』は厄介よ。炎陽より下位の存在を虜にし、従わせてしまう。原初の妖から代を経て、純粋な妖から遠ざかる程に、対妖能力は劣っていく。智太郎の『能力
俺達の話を纏め、能力を確認した紅音は青ノ鬼に問う。紅音の『
「
「じゃあ俺達の中の優劣は……紅音、
綾人は不安そうに瞬く。能力の受け手で言えば、
原初の妖同士の子である紅音。人の器に、人と妖の二つ巴の魂を持つ青ノ鬼。妖の
「
プンプンと、わざとらしく怒りながらも、美峰の姿を存分に駆使して可愛子ぶる青ノ鬼。一体誰得なんだ。
「んー、
「運が良ければな。未来が読めたとしても、力量不足じゃ話にならん。本気の妖力で攻められれば、対抗不可能だ」
首を傾げた紅音に、青ノ鬼は珍しく自信無さげに溜息をつく。恐らく鴉との戦闘を思い出したのかもしれない。友人である青ノ鬼に本気を出せなかったはずの鴉にさえ、負けてしまったのだから。
「えぇ……? でも
「一概には言えんが、違うな。能力を持たない者が大半でも、生力由来術式や擬似妖力術式を持つ妖狩人達は、実際妖に勝ってきたのだから。基本は
綾人に力説した青ノ鬼を一瞥した俺は、対策を見出す。
「力量に対抗するには、多勢。能力に対抗するには、心理的弱点を突く事だな。千里は兎も角……炎陽の心理的弱点なんかあるのかよ」
臆病、恐怖症、俺への罪悪感など……心理的弱点だらけの千里を思う。原初の妖としては勝ち目が無いが、能力の優劣逆転は狙えるかもしれない。『雪』に負い目のある鴉も可能かもしれないが……炎陽については情報が少なすぎる。
「
サラッと美しき紅音は言うが……『誘惑』などした事の無い俺と綾人は困惑し互いを見つめる。女装しても中身は変わらん。
「……中々ハードルが高いぞ、それ」
「あんた達にはそうかもね。しかも炎陽は元
目を点にして、振り払いた紅音に首を傾げたのは綾人。
「陰間って……なんデスカ? 」
「歌舞伎の『女形』修行中の、舞台袖の少年役者。又は諦めた者。女装して
「ングッ!?……『女形』を
顔を真っ赤にして口を押さえる綾人。俺も内心動揺は抑えられないが……
「どちらにしても、女装してまで炎陽を騙すつもりなら本気で扱いてあげるわ。母様は元花魁だったの」
色勝負なら負けないと言うように、立ち止まった紅音は割と豊満な胸を見せつけるように腕を組んだ。思わず目を逸らしてしまった俺も、綾人を笑えない。
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