あなたはいつもそこにいる

紫風

あなたはいつもそこにいる

 ドームでは今日も、プロ野球の試合が行われている。

 華やかな選手たち、審判、マスコットにチアリーダー。


 彼はひっそりとそこにいる。

 三塁線より外側にいて、じっと出番を待っている。

 人工芝で覆われたファウルゾーンにたたずみ、じっと戦況を見つめている。

 私だけのヒーロー。


 わあっと歓声が上がる。

 ファウル。

 三塁手が取り損なったファウルボールを、ボールボーイがぱしっと捕球した。

 ボールボーイが時折見事な捕球を見せることがあり、この間パリーグTVに紹介されていた。他の球場のボールボーイも紹介されることがある。

 彼らは、球場によってスタイルが違う。

 ある球場ではパイプ椅子に座っており、インプレイの球が飛んでくると、パイプ椅子を持って逃げている姿を見ることがある。

 ある球場では、片膝を立ててじっとうずくまっている。この球場がそうだ。


 コーチャースボックスの外野に近いところ、球場によってそこは、プルペンだったりする。出番を待つ投手陣が、そこで軽く肩を作っている。

 その脇で、彼らはじっとそこにいる。


 気のいい三塁手が、ボールボーイに声を掛けていく。

 塁に出た選手が、防具を取りに来たボールボーイに、セーフかアウトかなど話し掛ける。

 コーチャースボックスには、攻撃側の一塁あるいは三塁コーチが立っている。


 かぁん。

 三塁側に立っているコーチが、ファウルボールをユーモラスに避ける。

 見ている方はユーモラスだが、避ける方は必死である。なんせ打球速度というものは、 200km/h はするのだから、元選手であるコーチ陣だからこそ反射神経で避けられる。

 転がった球は、ボールボーイがゴロ処理をした。

 今日はよく、三塁線にファウルが転がる。

 ボールボーイとコーチは、あまり話すところを見たことがない。

 

 知っているだろうか、ボールボーイ君。

 フェンスに書かれてるロゴなどに打球を当てると、報奨金が出るものもあることを。



 君たちの前にいる、その三塁コーチ。

 通称『的の飯田さん』。

 当てると1000点。


END.

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あなたはいつもそこにいる 紫風 @sifu_m

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