第四章

悪魔の素顔

第26話 怒りの日

  ◆◆◆


 旧校舎で見聞きした孝太郎の話をユング大佐に伝えないまま、一日が過ぎていた。


 正直、孝太郎の奴をどう処罰していいのか俺には見当が付かない。

 狂っているとは思うが、マクロ的な目で見れば奴は世界の平和を願っており、現にこの街……兜都は賑わっているのだ。

 その経済の発展は、ゆくゆくは日本を救うことにも繋がる。

 そして奴のエゴイズムとは別に、〈悪魔〉なるものが実在し、それが想像の範疇を超えた存在であったことに、俺は強い衝撃を受けていた。


(今、この世に存在するが実在しないモノを探せ……か。ふざけた話だ)


 つまりそれは、だれもが知っていてだれもが見たことがない相手、という意味だ。

 その代表例が悪魔。

 古今東西のあらゆる人が知る、キャラクターという産物である。


 大通りを歩き回りながらそれらしい影を探してみるが、目にとまる以上それらは現実に実在しているということになる。

 デパートの前で、ファンシーな着ぐるみのマスコットキャラクターを見かけたが、果たしてそれが情報受肉存在……“向こう側の住人”であるのか、俺には判別がつかなかった。


 目に付くあらゆるものを凝視し続けていると、不意に疑わずに済む存在を視界に取り入れ安堵する。

 シズ姉ぇだ。

 馴染みのある人物を見つけて目休めを感じた俺は、通りに突っ立っている彼女に近づいてみた。

 よく見ると彼女は、ショーウィンドウの前に釘付けになっていた。

 こちらには気がついていないのか、茫洋ぼうようとした眼差しでジッとガラスケースを見つめている。


「何してるんだ? こんなところで」


「あ、夏也……」


 声をかけた途端、どこかバツの悪そうな表情でこちらを振り返るシズ姉ぇ。

 彼女が直前まで向けていた視線の先を追ってみると、そこに飾られていたのは純白の輝きを放つウェディングドレスだった。


「……もうすぐ着るんだよな、シズ姉ぇも」


「うん。私も近いうちにここを訪れて、丈を図ったり試着するのかなって」


 俺のためではない、別の男にためにこさえる花嫁衣装。

 その事実に苦虫にがむしを噛み潰した気持ちになりながらも、俺は平静を装いながらうそぶいてみせた。


「そりゃあ、するだろう。シズ姉ぇは分家じゃなくて本家の人間になるんだから」


「分家と本家の違いって何だろうね? 背負って立つものの覚悟?」


「……さあな」


 本家の一員になったらなったで、白面財閥の枢軸すうじくとして新たに守るべきものが生じるのだろうか。

 シズ姉ぇはしばらく考えたような素振りを見せると、いつになく真面目な様相になって俺を見つめてきた。


「――ねえ夏也……ちょっと、つきあってくれない? 話したいことあるの」



 そう言って、迎えの車に一緒に乗るよう促してくるシズ姉ぇ。

 その誘いは、楽しい帰宅デートというよりは、どこか有無を言わさぬ脅迫めいた空気を孕んでいた。

 俺は言われるがままに、停めてあったリムジンの後部席に黙って乗り込む。

 同じく乗り込んできた彼女は、さりとて話題を振らぬまま黙って窓の外を眺めていた。


 車内を異様な沈黙が支配する中、車外に広がる光景は目まぐるしく撩乱りょうらんする。

 やがて窓の外の景色は、商店街からビジネス街へと移り変わり、いくつもの検問を越える。

 そして兜都の中央部……

 セントラルタワーたるクラウンズクラウンへとたどり着いた。


 シズ姉ぇは依然として黙ったまま俺の前を歩き、いつの間にか黒服の男たちが退路を塞ぐように背後に連なっていた。

 やがて奥の会議室へと通され、物々しい雰囲気を感じ取りながら二人きりになった俺とシズ姉ぇ。


 彼女がどのような意図で俺をここに連れてきたのか、俺には判断がつかなかった。


「どうしたんだシズ姉ぇ? 改まってさ」


「夏也……。単刀直入に聞くわ。あんた、本当は何しにこの町に戻ってきたの?」


 いきなり怖い声で尋ねられる。


「何をしに? いきなり何のことだいシズ姉ぇ。いやだな、変なことを言い出してどうしたんだ? 俺が故郷に戻ってくるのに、理由なんていらないだろ?」


「嘘」


 即座に切り捨てられる。


「最近の夏也おかしいよ……ずっとなにかを隠してるみたいだもん。あんた本当はさ、復讐のために戻ってきたんじゃないの?」


「復讐……? ハハッ、復讐だって? おいおい、どうして俺がそんなことを……」


「おじ様が左遷させられて、引っ越すことになったからよ」


 何かを確信した上で発せられているかのような、彼女のい。

 シズ姉ぇは指を立てた手を胸に当てながら、悲痛な叫びをもって続けた。


「家族のことだもの。夏也が怒るのもわかるわ! だけどっ ……だからって、何もスパイになることないじゃないっ!」


「待ってくれシズ姉ぇ、それは……」


「昨日、孝太郎から聞いたの。あんたのこと。わかるよね、この意味」


「…………ッ!」


 ――孝太郎のヤツ、あっさりと婚約者に口を割りやがったのか。

 ククッ、そう言えば子供の頃からチクり癖のある奴だったな。

 つまり旧校舎に現れた俺のことなど、本家の連中にも筒抜けというわけか。


 会議室の周囲に目を配ると、壁の向こうから数人の気配を察知する。

 おそらくは監視員……すぐ近くには警官なども待機されているのかも知れない。


「最初は嘘だと思ったよ。だけど、この間のトンネルでも夏也ってばなにか隠してたしさ……私、あんたへの疑いを晴らしたかった。だから調べたの……転校前の、あんたの住所」


「…………っ!」


「かんばせ市・おおい町。覆高校に通う2年・水月夏也。そんな情報はね、どこにもなかったよ……。あんたの学籍はさぁっ、どこを探しても載ってなかったんだよっ!」


 偽の学籍……それを仕掛けた〈セルフ〉の偽装工作が機能していないのは当然だ。


 兜都学園へ転入する際に宛がわれた偽名を使わなかったのは俺の方なのだから。


 理由はもちろん、夏也という名が自分にとってやはり特別なもので……。

 そしてその名で幼なじみと再会したかったからに他ならない。だが、それが裏目に。


「答えて夏也っ! あんた本当は何者なの!? 私達に近づいたのも……MASKに復讐するためだったっていうわけ!?」


 シズ姉ぇの悲痛な叫びが辺りに響く。

 壁の向こうでは、監視員が緊張していくのがわかる。


 そしてそれを耳にする俺の心は、ひどく空虚なものだった。


「……だったら、何だ?」


「罪、償おう? 夏也が工作員になった気持ち、私わかるよ。生活が苦しかったんだって……すごく理解できる。だけどそれじゃあ、おじ様と同じことじゃない! そんなことしたってダメだよ……私、夏也のこと弁護するからさぁっ!」


「弁護? 弁護って……。……ハッ、……何をしてくれるつもりなんだ?」


「孝太郎言ってたわ。夏也がおとなしくしてくれるなら、自分は彼を告発したりしないって! すごいでしょ!? MASKの未来の社長が、夏也の気持ちを汲んでくれてるんだよっ 争いは何も生まない! だから……だからさぁっ 昔みたいにみんなで仲良くやろうよ! 復讐なんて止めて、過去の事なんか水に流せばいいじゃない!」


「――……、…………なに?」


「大切なのは今をどう生きるか! そうでしょう!? 私達はこれからだってやり直せる! 友達で居続けることができるの! だから夏也も手を伸ばして! 人は哀しい過去にこだわるんじゃなく、輝ける未来に向かって生きるべきだわっ!」


 前向きに、ポジティブシンキングこそが是非であるかのような、彼女の謂い……。


 形容しがたい黒い感情がとぐろを巻き、心の奥底で溶岩のように煮えたぎっていくのがわかる。

 耳朶じだに触れる毒の音色に、俺は腹の底からきしんだ声を漏らさざるを得なかった。


「――……ふざ、けるな」


「夏也?」


「ふざけるなよ……。なんだ? 今、お前は何と言った? 過去を水に流せ? 人は未来に向かって生きるべきだと……? ふざけるな……ふざけるなよシズ姉ぇッ! だったら、過去にすがることしかできなかった者はどうなる!? にのみ希望を見いだしていた人間は、いったいどう生きろと言うんだ……ッ!!」


「な、……え!? ど、どういうこと……?」


 このに及んで真実を感じ取ろうともしない姿に……

 俺の中の獣性じゅうせいは、ついに理性という名の鎖を噛みちぎった。


「シズ姉ぇ……いいや、月影静流ッ! お前はいったい、どのツラ下げてそんなことをほざくつもりだ!? お前に……お前なんかにっ、そんな偉そうなことを言う資格があるのかッ!?」


「なっ!? ちょ、ちょっと夏也ッ! あんたねぇ、いくらなんでもそんな言い方って……」


「黙れッ!!」


「ひぃ……っ!?」


 もしも視線で人を殺せるのなら、今この瞬間がそうであるに違いない。

 豹変した俺の様相に、目の前の女はガタガタと震え上がって見せた。


「何も知らないくせに高説ぶりやがって……。俺が父さんと同じ? MASKの産業スパイだと? 笑わせるなッ! 未だに何も知らないようだから、教えてやるよ。俺の父さんと母さんはなぁっ、お前達MASKに誘拐、監禁され……拷問された末に殺されたんだッ!!」


「え……っ」


「過労でくたばっただと!? そんなわけがあるか! 父さんは拷問に掛けられ、母さんは父の弱みとして飼い殺しにされた挙げ句、虫けらのように殺されたんだぞ!?」


「う、嘘……ッ! だってそんな……!」


「静流ッ! お前はさっき、争いは何も生まないと言ったな!? ならば聞こう!! お前の衣食住を保証しているのはいったい何だ!? お前はいったいだれの恩恵をあずかって、綺麗な服を着! 好き気ままに振る舞い! のん気に青春を送れていると思っている!?」


「そ……それは……」


「戦争だよ。MASKが人殺しの道具を作っているから! だれかがお前達の武器で殺されているから! 今、お前の豪華な暮らしは許されているんだ! 月影静流ッ!!」


「ぁ……ッ、あ、そっ、それは……」


「かつては俺もそうだった……。自分の暮らしが、年端としはも行かぬ少年兵達の犠牲の上に成り立っているなど、想像だにしなかった!! だからこそ父さんはッ、己の仕事に疑問を感じ! おそろしい兵器で罪なき人々が殺されぬよう、MASKを止めようとしていたんだ……!!」


 父さんは決して人の心を忘れた兵器開発者などではなかった!

 自分の関わる兵器産業に疑念を覚え、争いを無くすための武器を、たとえ〈悪魔〉の知恵を借りてでも作りたかったに違いない。

 しかしそれはあらゆる偉人に成り済まし、すり替わることで国家をも掌握できる悪魔の兵器を生み出してしまう結果へと繋がってしまったのだ……!


 アレが解き放たれては、世界から『信頼』という言葉は失われる……。

 きっと父さんは、そうした懸念を抱いていたに違いない。


「なのにその結果はどうだ!? お前達MASKはただ金儲けだけを考えッ、挙げ句! 両親を裏切り者として粛清し! この俺をも戦争の駒にしようと七年前に拉致したんだぞッ!?」


「そ、そんな……ま、まさか……。じゃあ、夏也がいた所って……っ」


「人間兵器養成所、〈ペルソナ〉と呼ばれる非人道的な機関だ! 俺はその施設に連行され、地獄のような日々を送らされたよ……。お前は泥を啜って生き延びたことがあるか? 条理もなく、ただ殺し合いを命ぜられたことは!? あそこは蠱毒こどくの壺……だれかを殺らねば自分が殺られる……決して覚めることのない悪夢が続く、人殺しに特化した化け物を作り出す工場だったんだよ!」


「そ、そんな……ッ、そんなのって……!!」


 シズ姉ぇは口を覆い、壁によろよろともたれかかった。

 違う……こんな程度でショックを受けてもらっては……困るのだ……!


「本当にあの日々は地獄だった。そんな中で、唯一の希望を見いだすとしたら……それは何だったと思う?」


「な、夏也……、あ、あの……許して……私そんなつもりじゃっ!」


「――お前たち、幼なじみとの約束だよ」


「ッッ! あ……、ぁぁぁ……っ」


「あの別れの日……『必ず会いに行く』『手紙を毎日くれる』って、そう二人が言ってくれたから……っ! 俺はッ、俺はあの日々を耐えれると思っていたんだ……!」


 シズ姉ぇ達と再会して以来、ずっと腹の奥に溜まっていた黒い感情……

 それがついに溢れ、決壊する。


「なのに現実はどうだ!? 来訪はおろか、手紙の一つも届かなかったじゃないか!!」


「てっ、手紙ッ、送ろうとしたよぉ! で、でも! 夏也の転居先が分からなくて……ッ 会いに行こうにも、場所が……」


「じゃあ! 何で便りがないことを不審がって、調べようとしてくれなかったんだよッ!?」


「そっ、それは……偉い人たちが、もう空木家のことは忘れなさいって……そう念を押してきたから……私、逆らうのが怖くて……!」


「結局、お前達の中じゃ俺の存在なんて……その程度だったって、そういうことか」


「違うよ夏也ぁっ! 私、今でも夏也のこと大切に思って……!」


「なら何で孝太郎と婚約なんかしてるんだよお前はぁぁああアアアーーッ!?」


「――……ッ!!」


 溜めに溜まった鬱憤。

 今まで最もブチ撒けたかった怒りの感情が、爆発的な激情となって牙をむく。


「シズ姉ぇは言ったはずだ! 俺のことを待っているって! お嫁さんとして迎えに来てくれるまでずっと待っているって……そう言っていたじゃないか!?」


 俺はガラスのテーブルを勢いよく殴りつけた。

 粉々になった欠片が音を立てて舞う中、シズ姉ぇはまるで小動物のようにブルブルと震え縮こまっている。


「何が許嫁だ……何がお嫁さんとして待っているだ……。俺のことなど、もはや何とも思っていないくせに誘惑して……ちくしょうッ、あれほど信じていたのに……シズ姉ぇのことを、心から好きだったのに……ッ! ……結局、お前は何一つ約束を果たしちゃあいない……!!」


「ゆ、許して夏也……っ わ、私、あんたのことも本当に……っ」


「黙れッ!! お前は俺を見捨てた……見捨てたんだよッ!! ……あァそうさ、俺は復讐のために舞い戻ってきた! なのに過去にこだわるのがむなしいだと!? ふざけるな! お前に俺の何がわかる!? 人から裏切られ続けられたこの俺の気持ちが、お前に……お前なんかにッ! 分かられてたまるものかよッ! このッ……裏切り者がァアアッ!!」


 絶望がもたらした積年せきねんの恨み。

 かつて希望であったモノの、なれの果て。

 俺はそのすべてを吐き出しながら、自分で涙をこぼしていることに気が付いていなかった。


 シズ姉ぇは泣き崩れながら「ごめんなさいごめんなさい」と繰り返し何度も謝っている。


 部屋に響く幼なじみの……かつて本当に好きだった女の子の嗚咽おえつを聞きながら……俺は例えようのない哀しみに包まれていた。


(クソッ……。いったい、俺の七年は何だったんだ……? かつての許嫁をこの場で泣かすことが、自分の復讐だったとでもいうのか!?)


 俺は、みじめだ。

 両親の仇も見つけ出せず、MASKの野望を止めることもできず、ただ身近にいた彼女に、すべての怒りをぶつけてしまっている……こんなはずではなかったのに……。


 ――直後。

 廊下側からけたたましい音と共にコンクリートの壁が砕け散り、何者かが壁を突き破って部屋に侵入してきたのは次の瞬間だった。


「な!? お、お前は……ッ!」


 もうもうと立ちこめる粉塵の中、ゆらりと乱入者が姿を現す。

 その漆黒のレインコートとフードから覗く無機質な兜は、見間違えようもない――


「シャドウッ!」


「ひっ……さ、殺人鬼の……!」


 さすがの衝撃にシズ姉ぇも我に返り、すくみ上がる。

 連続殺人鬼シャドウ。

 MASKの要人ばかりを狙う恐怖の騎士が、いま目の前に純然たる驚異として参上していた。


(監視員の反応が……ない)


 気が付けば、あれだけ周囲から感じられた気配がこつぜんと無くなっている。

 俺がシズ姉ぇに鬱憤をぶつけていた最中、周りが妙に静かだったのは、決して様子を見ていたからではなく……。


「きゃ、きゃああああーーッ!!」


 崩壊した壁の向こうから僅かに見える、血塗れの惨殺死体……。


(既に、みんな殺されていたということか)


 さらに壁を破壊して現れた以上、こいつは確実な用があってこの部屋に現れたはず。


「今度こそ俺を殺しに来たか? いいだろう、前回の借りを返しやる……っ!」


 超人めいた力を持つ謎の殺人鬼。

 俺の推察ではこの騎士こそが例の〈悪魔〉……“向こう側の住人”であると睨んでいる。


「さあ、来い!」


 気合いを込めて相手に叫ぶ。

 しかしシャドウは刀を抜くやいなや、その鋭い切っ先を俺の……へと向けた。


「――……え?」


「……、…………」


 刀の先にいるのは紛れもなく……

 震え上がっていた、シズ姉ぇだった。


 シャドウは俺のことなど眼中にないのか、まったくこちらを向こうとしない。

 無視をされたことに不満を持とうとした瞬間――


 ォッ! とほとばしった殺気の波に、俺は思わず息を呑んだ。


「うぅっ!?」


 かつてシャドウと対戦した時は、微塵みじんも感じなかった死の波動。

 全身より放たれ、生者せいじゃ萎縮いしゅくさせるその“合気”に腰が抜けそうになる。


(な!? 何なんだ……この力は!?)


 人を平伏させるかの如き、絶対的なる力の波ジャガーノート

 その冷たい気炎には大気すら振動し、砕けたガラス破片がパラパラと床を転がっている。


(じ、尋常じゃない……俺と戦った時のアレは何だったんだ!? まるで子供だましだ!)


 これがヤツの本気だというのなら、機動隊や傭兵部隊が皆殺しにされたのも頷ける。


 俺があの戦いで垣間見たシャドウの力は、半分にも満たないはずだ。


「た、助けてっ いやァッ……死にたくない……ッ!」


 シャドウの発する死の矛先は、確実にシズ姉ぇの喉元へと喰らいついている。


(ど、どうする……!?)


 俺の実力で、今のこのシャドウを倒すのはおそらく不可能だ。

 だが、このままでは確実にシズ姉ぇは殺されるだろう。


(良いのか? それで)


 自分はそれを、本当に見過ごせるのか!?


 かつて互いを想い合いながらも、この俺をあっさりと捨て、裏切り、別の男に寝取られたこの幼なじみを……。


 俺は見捨てることができるのか……!?


「………………」


 シャドウが一歩、前に出る。

 鉄兜の複眼からは人間らしい眼差しは何も感じない。


 そしてその殺意は、確実にシズ姉ぇをとらえ続けていた……。

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