2.一が起こるとつい十を考えてしまう

 家に帰っても、私は落ち着かなかったの。夕食は半分以上残してしまった。お母さんが「紫音、どっか具合悪いの?」って聞いたけど、私は「ううん。何でもない」と言って、2階の自分の部屋に戻ったの。こんなときは誰にも会いたくないよね・・


 私は、実は亜美が心配して私に電話してきてくれるんじゃないかと思ってたの。だって、私が部活を休んだのは高校に入って初めてだったから。


 きっと、亜美のことだ。私を心配して電話をしてくれるはずだ。


 私はスマホを机の前に置いて、亜美からの電話を待ってたのよ。だけど、10時になっても、11時になっても亜美は何も言ってこなかった。


 電話が無いということは、亜美はお昼のことをきっとまだ怒っているんだ。


 そう考えると、私の空想がどんどん膨らんでいったの。


 亜美はもう私を許してくれないんじゃないだろうか? そして、私たちの友情は今日で終わりをつげるの。亜美を失った私は、ダンス部の中で孤立していって・・


 私は頭を振ったわ。やめよう。悪い想像ばかりをしていてはだめよ。


 そう思うんだけど、私の空想は止まらないの。亜美は、私のクラスの香織や優希ゆうきに、紫音ってこんなにひどいのよって、きっと話をするわ。それで、香織や優希が私と付き合わなくなっていって・・・


 私はまた頭を振った。こんなの、いやよ。私はいつも何かが一つ起こったら、それに関して十ぐらいを考えてしまうの。それで、いつも十の考えに疲れ果ててしまうのよ。


 どうして、いつもこうなのかなあ。もっと、気楽に生きることはできないの?



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