若者のすべて

@tetunoisi

第1話 少年

口を開いてはため息ばかり出るようになったのはいつからだろうか。

受験生という肩書きで括られるこの1年は18歳の子供にはあまりに残酷なものに思えた。

大人からの重圧をひしひしと感じながらもどこか勉強に身が入らない僕はふとテレビをつけた。

そこに映る清楚な女性はクーラーの効いたスタジオから真夏のピークは去ったと伝えた。そのままテレビを垂れ流していると家の呼び鈴がなった。

「はーい」

気だるげに立ち上がり扉を開ける。

扉の前には見慣れた顔をしたやつが立っていた。

「智樹かよ」

「なんだよ、そのクジに外れたみたいな顔は」

「なんだよクジに外れた顔って(笑)

てか、何の用だよ。勉強忙しいんですけど」

「家にいても暇だろ?図書館に勉強しにいこーかなって思ってさ、それで誘ったんだよ。」

「あー、おけ」

特に迷うことなく了承する。

玄関に智樹を待たせたまま身支度をすませ、外に出ると驚いた。真夏のピークは去ったなんて言われていたが、まだ蝉の鳴き声はするし、どこからか力なく聞こえる風鈴の音で街は騒がしく、暑かった。

そんな雑音をかき消すように智樹が言った。

「そーいえば、お前は夏祭り行くの?」

「いやーどーだろ?勉強次第かな?」

「じゃあ、今日勉強して行こーぜ夏祭り。

高校最後の夏の思い出がクーラーの効いた図書館だけってのは勿体ない」

確かにその通りだ。夏休みに入ってからというものずっと家の中に篭って勉強するか、スマホをいじるかしかしてない。特に青春っぽいことは何一つせずに過ごしていた。

目標が決まると勉強にも身が入り、夏祭りに行くために俺も智樹もこの日は図書館が閉まるまで勉強した。

迎えた夏祭り当日。

祭り自体は昼からやっていたのだが、日が出ている間は暑いだろうということで集合は5時になった。

どこからか聞こえるおうちへ帰りましょうのチャイムをよそに俺は家を出た。

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