あいつは俺のヒーロー
暗黒騎士ハイダークネス
第1話
俺はあの時、お前の言葉で救われたんだ。
「一緒に遊ぼう!」
なんて、無邪気に俺を本の世界から飛び出させてくれた。
お前は俺のヒーローだ。
まぁ・・・こんなこと、あいつに言うと調子に乗るから絶対に言わないけどな。
いつもの学校の放課後、授業からの解放のためか、テンションが上がった俺の親友が話しかけてくる。
「お~い、シュン!ゲーセン行こうぜ!今日こそあのでっかい菓子とるんだ~」
そいつはいつも通りに俺の席に前に来て、無邪気に話しかけてくる。
「お前・・・1週間前に有り金、全部溶かしてなかったか?」
無計画で楽しいことに全振りするためか、いつも小遣いをもらった日には翌週にはすっからかんになるそんなやつだ。
「臨時収入があってだな!1000円ある!」
「臨時収入って、それにお前先週は3000円でとれなかったじゃん、3分の1じゃ無理だろ」
「今日はいける気がする!!シュンがとったの見てたし!俺も自分の手で取りたい!!」
人が取れたからって、お前には何の経験もないだろ・・・まぁ、そんなことは言わずに、持ってきたお菓子で話を逸らすか。
「先週の菓子まだあるけど、いる?」
「いる~」
ぽい~っと投げたクッキーを器用に口でキャッチする。
「・・・ん、、、そうだな、まぁ今日は予定もないし、また全敗するリクを見るのも面白そうか」
スマホで今週の予定を確認しながら、そう話しかける。
「今日はぜってー勝つ!動画でクレーンの必勝法を見たし、先週の俺とは一味違う!」
自信あふれる様子でそう宣言する。
「全敗する前の彼はそう口にしていたのであった」
「そんな不吉そうなこと言うなよ~信じろよ!勝っても、菓子あげないからな!」
「先週のお菓子いくつ、あげたっけかな~?」
「一つぐらいは進呈してやろう」
「まぁ、勝てたら、もらうわ・・・勝てたらな」
「むむむー!よし、ゲーセン行こうぜ」
「ん・・・ちょっと待って、、、、よし、行くか」
スマホの画面を閉じて、あいつの後をついていく。
「やめてください!!」
ゲーセンへの行こうとする道中、そんな女性の悲鳴が路地裏から聞こえてきた。
「シュン!」
「おう」
あいつはその悲鳴の方向へと駆け出して行った・・・残った俺はスマホで警察に連絡をした。
すると、数分もしないうちに、見るからに遊んでそうな3人の男たちがこちらに走ってくる。
「あ~ここから先は通行止めだ・・・まぁ、なんだ大人しくしとけよ、負け犬」
「この!!」
先頭の男が走った勢いのままこぶしを振りかぶってくる。
「いやさ・・・あいつと比べりゃ、体格もひよっこで、覇気もなさそうなメガネだけど、お前らごときには負けないよ」
パンチをよけ、その伸びきった腕に手をのせ、その体を投げる。
「っと」
下はコンクリートでまともに投げれば、最悪死ぬ。
そんなことはどんなクソ野郎でも望まれないし、そんな奴のために前科なんて背負いたくない俺は手加減をし、背中からおとす。
「ぐぎゃ」
肺の空気を無理やり吐き出された体はうまく身動きが取れないようになっていた。
「な?警察来るまで大人しくしとけよ」
そういうと勝ち目がなさそうなのを見て、残った2人が、諦めるように地面に膝をついた。
「ありがとうございました」
襲われていたとは思えなかったくらいの笑顔であいつに向けて言う・・・これはいわゆる白馬の王子様?いや、運命の人?吊り橋効果というやつか?
恋とは無縁そうな顔でうん、とか、てきとーに相槌を打っている。。。きっとあいつの頭の中にはゲーセン行きたかったな~という願望と、長時間の事情聴取の鬱憤しか残ってなさそうな顔だ。
疲れた顔で行く帰り道、カバンから菓子でも取り出し、あいつに差し出す。
「ん・・・チョコ食うか?」
「もらう~ゲーセンはまた今度にっすか」
「そうだな~」
そうして、今日という一日を終えた。
窓一つもない地下の一室でパソコンで何かを操作しながら、今日のことを思い出していた。
今日もあいつはカッコよかった。正しかった。
だが、もし
膝をついたら、立ち上がるまでそばにいてやるよ。
『決シテ立チ止マラセナイ』
お前が信じた正義を俺もまた信じる。
『ダッテ、オ前ハ俺ノヒーローサ、間違エルワケナイ』
お前に助けが必要な時はいつだって助けてやる。
『オ前ガ、諦メルナンテ許サナイ』
だからさ・・・このままカッコイイままでいてくれよ、俺だけのヒーロー。
『イツデモ、事件ナンテ用意シテヤルカラサ』
あいつは俺のヒーロー 暗黒騎士ハイダークネス @46_yuu_96
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