第2話「2匹の......トカゲ?」

 意識いしきが……もうろうとして…………。


「このひとだれー?」「さあ? かわいいおんなひとだねー」「なんだかおもそうな荷物にもつっているけど……おもすぎてたおれちゃったのかな」「それは大変たいへん! うちまではこばないと!」「でもわたしたちだけではこべるのー?」「わからないよ……あ、そうだ! わたし、おとうさんんでくるー!」「ち、ちょっとイーフェン! ってよ! はやいってばー!」


 さわがしい……でも、まえくらだ。(まぶたじてるのかな?)


「ん…………」


 眠気ねむけのようなものから解放かいほうされて、わたしけるとそこには――


「ひぃっ……⁉」



 ――トカゲにた、生物せいぶつがいた。



「おーい! イーフェン! きたよ! きちゃったよー!」


(イーフェンって、さっきもいたような……)



「――って、なんでわたしトカゲのはなし真面目まじめいちゃってんのっ!」



「おーい! イーフェン! この人間にんげんなんしゃべってるよ!」


大丈夫だいじょうぶだよね? ……わたしがトカゲになってるとかないよね? ちゃんと人間にんげんだよね?)


 とても不安ふあんだけど、しっぽがある感覚かんかくとかはないし、たぶん大丈夫だいじょうぶだろう。わたしはのそのそとがり、びくびくしながらまえのトカゲにたずねる。


「あのぅ~、トカゲさん――あなたは、名前なまえ、なんていうんですか?」


「え…………」


 戸惑とまどった表情ひょうじょうせるトカゲさま。そして……


人間にんげんいてきた! わたし質問しつもんしてきた! おーい、イーフェン。はやてー! はやないと、おかあさんに昨日きのうってたイーフェンのきな――」


 ダダダンッ!! ――一瞬いっしゅんで、すさまじいおとててあらわれた、色違いろちがいのトカゲ。2ひきともおおきさはおなじくらいで……


「ってこわい! ここトカゲしかいないのっ…………ってあれ? ここどこ? わたしって、なにをして……」


 その瞬間しゅんかんわたし記憶きおくよみがえった。


「うっ…………」


 すこがして、わたしはそのたおれこむ。


「あっ、あの人間にんげんたおれた!」「あっ、大丈夫だいじょうぶ? あの人間にんげんでもたおれるのかー」


 2ひき心配しんぱいそうなかおわたしせて、わたしれた。(ひゃっ⁉ ……つめた……くない! なんだかむしろ、あったかくて……)


「あ、ありがとう。2人ふたり……じゃなくて2ひき……でいいのかな。2ひきとも、わたし大丈夫だいじょうぶだよ。心配しんぱいしてくれてありがとう」


 2ひきのぬくもりのおかげからくになったわたしは、トカゲたちににっこりとした笑顔えがおせた。


人間にんげんさん、わたし名前なまえはオーフェン」「わたしほうはイーフェン」


「「よろしくねっ!」」


「あ、ああ……よろしく、ね」


「「よろしくよろしく!!」」


 ねながらよろこぶ2ひき。(可愛かわいいな……)


「もしかしてきみたちどもなの? おとうさんんでくるってってたけど」


「もちろんわたしたちは子供こどもー!」「もちろんー!」「てのとおりー!」


(いやてのとおりかな……。トカゲみたいだけどちょっとおおきさがおおきいような、ってくらいだし、わかるわけないよ)


「そ、そうだよねー。子供こどもだよねー」


 わたし棒読みぼうよみった。


「うんうん! それでそれで、わたしたちのおとうさんはね、もうすぐるはずだよ」「わたしたちとちがってとってもおおきいの!」


(へぇおおきいのか……って、あなたたちもトカゲにしては充分じゅうぶんおおきいですけどね)


「それで……ここはどこなの?」


 わたしたずねると、2ひきすこ不思議ふしぎそうなかおをした。


人間にんげんさん、ここがどこかもわからないでたおれてたの?」「それは大変たいへんだー!」「おおきい荷物にもつがあるようだけど、もしかしてたびしてるの?」


(え、たび? わたしおおきい荷物にもつなんて……)


 わたしがふとよこると――


「え⁉」


 ――わたしまえ準備じゅんびしていた旅行用りょこうよう荷物にもつがあった。


「どうしたの、人間にんげんさん?」「もしかして人間にんげんさんのじゃない?」「でも人間以外にんげんいがいにこんな荷物にもつ種族しゅぞくはいないよ……」


「あ、大丈夫大丈夫だいじょうぶだいじょうぶ! わたしのだから! ちょっとちゃってたからわすれてただけ。そうそう!今旅いまたび途中とちゅうなのよね。モンスターとたたかってたからつかれてて」


 私は無理矢理むりやり誤魔化ごまかした。(やばい……いきおいでモンスターとたたかってたとかっちゃったよ)


 この世界せかいにモンスターがいるという保証ほしょうなんてないんだ。


「も、モンスター⁉」「だ、大丈夫だいじょうぶだった⁉」「モモモモンスターなんてほんとにいるんだね」


 2ひきおどろいたあとふるえだした。モンスターとはかれらにとって、相当そうとうこわいものなのだろう。(というか、この世界せかいではモンスターはいるのかどうかもわからないくらいめずらしいってことなのかな……)


 都市伝説としでんせつとかだったら、本当ほんとう存在そんざいしていない可能性かのうせいもある。(もし、おとうさんとやらがて、つぎ子供こどもが「この人間にんげんさん、モンスターとたたかったらしいよ」とかって、最後さいごにおとうさんに「モンスターなんてただの都市伝説としでんせつじゃん」とかわれたらわたしがめちゃハズい……! でも今更いまさらウソですなんてえない……)


「そ、それでさ……モンスターは、すご~くよわーいモンスターだったから大丈夫だいじょうぶだったけど……わたしもよわいからどっとつかれてね。やすめるところをさがして彷徨さまよってたんだけど……途中とちゅうちゃったみたい」


「か、かわいそう」「うんうん!モンスターもよわものいじめなんてよくない!」「うちにめたげようよ」「それいいね!」


 無邪気むじゃき子供こども(トカゲ?)にウソをかさねるわたし。(めてくれるって本当ほんとう?それ本当ほんとうわたしここのことよくわかんないし……てか、わたしってなんでここにいるんだろう。んだはずなのに……異世界転生いせかいてんせいってやつかな。だったらべつに、ここがどこだったとしても、わたしがやりたいようにできるのかな……)


「ねえねえ人間にんげんさん!」「人間にんげんさん!」


「あ、って。人間にんげんさんってぶのやめようよ。わたしはイーちゃんとオーちゃんってぶから、わたしのことは、め――じゃなくて、アズサってんで」



かった!」「アズサ!」


「それでさ、さっききそびれちゃったんだけど、ここはどこなの?」


「ここ?」「ここはね」「ここはー」


 2ひきかお見合みあわせてから――



「――――トカゲ大草原だいそうげん‼」



(え……?)


「いえーい」「わたしたちにピッタリ!」


(あ、やっぱりトカゲだったんだー……ってそんなことはさておき、なにその気持きもわる名前なまえ! わたし虫類ちゅうるい苦手にがてなんだよ……)


 どうやらわたしはトカゲが普通ふつうしゃべ世界せかい転生てんせいしてしまったようだ。

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