とある公園にて

水景。

春休みより

私を許さない

 一時の感情だった。

 それは本心だった。偽りだった。嘘だった。現実だった。幻想だった。本物、だった。


 メッセージアプリで悩みを相談して、あったことを聞いてもらって、意味もない会話をして、それが救いだった。真っ暗で、何も見えない日々に差し込んだ光だった。

 同じクラスだった男の子。人気者だった。優しかった。足が速くて、後輩に慕われていた。同級生から頼られていた。人の輪の真ん中にいた。和の真ん中。


 申し訳なかった。光のひとに、闇を注ぐのは悪だと感じた。見捨てて良いと言った。私が言った。


 付き合わせてごめん。こんな面倒な奴、もう見捨ててもらって構わないよ。もうきみも面倒でしょ。


 私が、言った。送信した。


 自ら拒んでおいて望んでいるとはとんだ矛盾で、それが私を許さなかった。


 心というものがあるのならば、それを滅多刺しにして八つ裂きにして、十字架にかけて火炙りにした。自分でやった。自分の言動が招いた結果だった。


 前に送ったメッセージの既読が着く前に次の言葉を打ち込む。返信が来る前に送信する。既読が着く。身を滅ぼす。


 聖人だった。神様だった。私が、ただ一人だけ、どんなことでも相談できた人だった。唯一、私に手を差し伸べてくれた、神々しい、人間だった。クラスメイトだった。人気者だった。優しい人だった。格好いい人だった。神様だった。

 かみさま、だった。


 今は神様だった人の言葉でさえ重くのしかかって、何でもかんでも良くない方に取る私だ。面倒で大変極まりない。悲観的になり、貰った優しい言葉をナイフにして返す。帰した。還している。


 言葉を、ナイフにして!

 周りの、善意をくれた人達に振りかざすのだ!!


 それが本当の本当に本心ではなくとも、感情に振り回され、支配されて、それが感じる事実だと認識して、刺す。斬る。掻き乱す。

 そして、その後に気づく。

 持ち手側も、刃だ。

 私の手も、ぼろぼろだ。こころが、ぼろぼろだ。


 ああ、嫌だ。嫌いだ。嫌われたくない。私が嫌いだ。嫌だ。いやだ。

 消えてしまいたい。もともと、存在ごとなかったことにして、私ごといなかったことにしてしまいたい。私が消えて、私の記憶もなくなって、きえて、何もかも消えて、何もなかったことにして、けして、消えて、なかったことにしたい。無かったことに。亡かった、ことにしたい。


 自分の指先が冷たくて、それを冷たいと思わなくて、もう自分が何を思い何を感じ何を考え何をしたいのかもわからなくなって、自分がわからなくなる。自分すら、なにもかも。


 私は何を言いたい?

 こんなにだらだらと文章を綴って何がしたい?

 何を伝えたい?

 まさか、意味なぞないとは言わぬだろう!




 …一人芝居にも飽きて、きました。馬鹿は死ななきゃ治らないらしいようなので、一度死んでみるのもありかな、なんて思いつくだけまだ馬鹿でしょう。

 それに意義はありますか?私の意思は必要でしょう?

 もし、その選択肢を出されたとして、生を選ばなかったとして、次があるかは存じ上げませんが。







 以下、とあるメッセージのやり取りより一部抜粋


『こんな面倒な奴もう見捨ててもらって構わないよ』


『見捨てたら』

『ほんとに真っ黒になっちゃいそうだよ?笑』



 そうやって、私に声をかけてくれるから、縋るしかなくなってしまう。依存してしまう。

 かみさまの言葉は、禁断の果実だった。

 私には、甘すぎた。

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