第4章 青春のしがらみ
第22話 接近・心・フクザツな
『
「
大量の救急車、パトカー、そして
校内が落ち着きを取り戻すまでには二、三日を要した。
しかし、逆に言えばたった二、三日。
灰田愛に影響力を持つ各界の大物達の手により、事態はあっという間に
今やこの
「むーくんっ!」
風紀委員室。
風紀委員長、右こめかみにばんそうこうを
「ふ、二日ぶり。
「おお……
口元にあざを作っている、風紀メンバーの
教師の
「立てない、とかではないんだね。よかった、本当に」
「ご心配おかけしました」
「顔も腕もガーゼだらけじゃねえか。見えてんのかその右目」
「あはは……なんとか」
「どのぐらいかかんの? この右手は」
「いてっ、触っちゃだめですって
「折れてたん?」
「主に付け根らへんに、何か所かヒビが」
「いーねぇ、俺ァ見直したぜ
「はい。ここが一番傷深くて、
「四針も……!」
「男の
「
「い、いいからいいから
「あ……うん。くっつきそう?」
「
「お礼を言うのはこっちだよ。……でも、」
風がまじまじと
「な、何?」
「顔色。青白くって全然元気ないように見えるけど。本当に登校して大丈夫だったの?」
「あー、そうかな? うん、大丈夫……だと思うけど。ケガしすぎてるせいかな」
「男ならそれでよしッ!」
「
「はい」
「ま、出てこないわけにはいかないよな。――明日でいよいよ、生徒会との戦いが
「……はい。ちゃんと話し合いには参加しようと、こうしてなんとかお昼には登校してきました」
「――よし。始めるか、委員長」
「うん。むーくんもいるし、
「え?」
「手。かして」
「いや、席につくのくらい一人――でっ!?」
「無理しない」
風が夢生の左腕を取り、テーブルの席へと案内する。
「ふ、風ちゃん恥ずかしいってば――」
「君は私のために戦って、そんなケガをした」
「!」
「だから君が治るまで、私がしっかりと面倒を見る。見させてほしい。大切な風紀委員会の仲間なんだから」
「あ……」
「へっ、
「俺らももっとひどいケガしとけばよかったすね」
「田井中」
「ッス」
「レピアも早く席について。どうしてそんな所でじっとしてるの?」
「……いや。なんかお取込み中だったみたいなんで」
「え?」
風が声を投げた方向、風紀委員室の出入り口を夢生が見る。
部屋の窓に外側からよりかかっていたらしいレピアが体を起こし、出入り口に立って夢生を見た。
「……レピア?」
「おはよ。やっと来たか」
「お。おはよう」
二日ぶりのレピア。
なんだかいつもと違って大人しいギャルに、夢生は少し緊張しながら言葉を返した。
「ったく。病院言う前に救急車で連れてかれちゃうし。見舞いにも行けなかったじゃん」
「ご、ごめん。連絡もできなくて」
「つかもう出てきて平気なワケ? その体」
「うん。もう大丈夫だよ。心配かけたね」
「別に? 心配しまくってたのはむしろ
「そ、そっか」
どこかそっけないまま、それ以上絡むでもく、レピアが夢生を通り過ぎて席に着く。
斑鳩と
「まず、先日生徒会派に伝えた『
「そうか。まあ、そうなるか」
「よって私達風紀委員会は――最後の作戦を実行します」
「しゃあッ!」
「いよいよかー」
意気込む生徒会メンバー。
最後の作戦――文字通り、灰田愛を
「すでに、学校の99%の施設は
「通称『
「あの、風ちゃん。保管生
「昔、灰田愛の生徒は皆『
「ご。
「まともな学校らしい場所だとは、思わない方がいいわ。地下のほとんどの部屋は
(都市伝説でも聞いてるみたいだ……)
「そのあまりの
「さ、
「ええ。保管生特区には灰田愛全体にある、保管生を
「アタシん
「あなたの家じゃないけどね?――まあそんなわけで、抜け道や回り道も無い。正面から、まっすぐに
「全面戦争になる、ってわけか……向こうも必死だろうしな、厄介だぜ。こっちは集められる数にも限りが――」
「大丈夫ですよ」
「風ちゃんとレピアがいるんです。きっと大丈夫」
「!……」
「……そうね。むーくんが言うなら、そう信じてもいいかな」
「……風ちゃん」
(……なんかいい
(まあ、俺らは過去が過去だし、雛神は頑張ったからな。しょうがねーよ)
(ケッ。ナンならさっさと付き合っちまえ)
色々な視線を受けながらも、夢生は風と一緒に笑い合えるのが嬉しかった。
「当日のメンバーと人員配置は、前回話した内容から変更はありません。体調を整えて、
『応!』
『はいっ!』
「じゃあ、これで最終ミーティングを終わります。お疲れさまでした」
解散となり、パラパラと風紀委員室を出ていく
「――?」
何も言わず、一人で出ていこうとしているレピア。
夢生は思わず話しかけた。
「あれ――ね、ねえ。レピア?」
「……何?」
レピアは肩口から少し夢生を見るだけで、完全には振り返らない。
まるで夢生が知るレピア・ソプラノカラーではないようで――彼女の様子は間違いなく、二日前とは違っていた。
「あの……なんかあったの?」
「……別に? ホラ後ろ」
「え?」
「
「風ちゃ――ちょっと待ってて、って――」
夢生がレピアに向き合うより先に、彼女は一人で部屋を出て行ってしまった。
夢生の背後にいた風も、あっけにとられる。
(……お腹が痛い……わけじゃなさそうね。なら原因は――……まったく)
「ねえ、風ちゃん。この二日で、レピア何かあったの?」
「……さあ? どうしたのかな」
「そうか。雛神君にも分からないのか」
レピアが去っていった出入り口を見ながら
「伏里先生」
「彼女、
「いえ、何も……どうしたんだろ」
「はぁ。むーくんっ」
「! あ、ああ、ごめん風ちゃんッ! えっと、何か用事?」
「今日、お昼はまだ?」
「お昼? うん、買ってきてはいるけど、まだ」
「そう。それじゃあ、」
風は少しだけ、首をかたむけてみせた。
「私とお昼、一緒に食べない?」
「…………ゑ???」
◆ ◆
(ッ……クソ、)
〝レピア・ソプラノカラーは――雛神夢生が好きなんじゃないの?〟
(何を意識してんだ、アタシはッ……!!!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます