第35話
現在俺、雪、神威は情報処理室のドアの前に居た。中を覗いている。
理由は神威である。
情報処理室は『ゲームオアパソコン部』が使っており、五人というギリギリの部活だ。
その中の四人は幽霊部員となっており、たった一人で情報処理室を使い、eスポーツでの好成績や情報関係の試験を突破している人が居る。
同じ一年であり、とても影が薄く、紫髪の小柄な女の子、
本題はその顆粒さんに神威が恋をした事である。
「で、俺にお前の恋愛を手伝えと?」
「ああ! 俺も手伝ったんだし、手伝って貰うぞ!」
俺は雪を見る。
雪は少し笑みを浮かべて、頭を前に倒して肯定を示した。少し楽しそうだ。
「で、俺は何をしたらいいの?」
「趣味などを聞いてくれ!」
いや、趣味なんてゲームだろ。
現在有名メーカーのゲーミングヘッドホンを付けてバリバリにシューティングゲームしてるだろ。
カチカチしている。キーボードがこの学園既存の物じゃない事に関してとても気になる。
この学園は色々と自由だからな。
「よし。昔の恩もあるし、雪との事……お前笑ってたよな?」
「はは!」
「昔の事あるし、行ってくるよ」
俺が行くと、雪が神威に話しかけていた。
「たっくんは貴方の事をとても信頼してますねムカムカして来ます」
「美しき姫に嫉妬されるとは嬉しい限りだね。まぁ、色々あったんだよ、色々」
俺が顆粒さんに接近して、気づいていないのでパソコンの画面を覗き込む。
そこでは銃で人を倒していた。
終わるのを待ち、終わったら何とか気づいてくれた。
パソコンに俺の姿が反射していた。
「誰?」
「俺は伊集院拓海。色々と聞きたくて」
「伊集院? ワイは……誰?」
「え〜」
「はっ! 思い出した。顆粒奏生ちゃんだ!」
自らちゃん付けで呼ぶ人初めて見たな。
「聞きたい? 何を? 部活入部希望者? ゲーム経験は?」
凄いコミュ力だ。神威、すまん無理そうだ。俺にはこの人に勝てない。
神威を見ると、頑張れを込めた目を向けて来る。
ぐぬぬ。
「えっと、趣味とか聞きたくて?」
「疑問形? いいのか。伊集院って有名だぞ」
パソコンをカタカタし始める。
「二股野郎として」
「ちょっと待って! 何それ初耳!」
「で、ワイで三股目が」
「違うは! 友達に聞いて来いって言われたんだよ! それに俺は雪一筋だ!」
大切って面なら家族は皆入るがな。
「そうかい。趣味か〜趣味は料理だな」
「意外だな」
「良く言われる〜てーか、こんな事を聞きたいって人はワイの事が好きなのかや? こんなワイの何処に惚れるのやら。奇特な野郎も居たもんやな」
「で、次は好きな食べ物と嫌いな食べ物」
「好きな食べ物は基本全部、嫌いな食べ物はインスタント系かな? 栄養が少ない物は嫌い」
本当に意外だな。
さて、他にも……そう思っていたら、顆粒さんがビシッと指を指してくる。
「こっからの情報はワイに勝ってからだ!」
「FPS経験ゼロだぞ」
「安心しーや。ワイは初心者をボコボコにするのも好きだ!」
「安心出来る要素?」
それから数時間、外は既に夕日に染まっていた。
「凄い成長やな。ワイがここまで追い詰められるとは」
「ギリギリ勝てなかったな。もう時間だし、帰るか」
「そうだな」
それからドアを出ると、そこには雪がおり、俺に抱き付いて来る。俺はそれを受け止める。
「ご馳走様」
そう言って来る顆粒さんはしっかりと中指を立てていた。
帰宅中に俺は雪に神威はどうしたのかと聞いたら『家族の晩御飯を作りに帰った』と言われた。
神威は沢山の兄弟達の為に頑張っている。
「あの、たっくん」
「なに?」
「たっくんは神凪さんの事を信頼してますよね」
「まぁね。俺がまた人を信じる事が出来るように成ったのは神威のお陰なんだよ」
「そうなんですね」
家に帰り、凛桜が話しかけて来る。
「伊集院君、おかえりなさい!」
「貴方なんでそんな我がモノ顔で言えるんですか。このは私の家ですよ」
「良いじゃない! 貴方は一番に慣れたんだから!」
「貴方は貴方できちんと分かっているようね」
ドヤ顔の雪にムキになる凛桜を見ながら俺はキッチンに向かおうとする。
その前に俺は強い力で引っ張られる。
「お兄ちゃんおかえり!」
「お兄ちゃまおかえり!」
「ああ、ただいま」
膝を曲げて少し屈んで、愛海達に目線を合わせて頭を撫でる。
「西園寺雪姫は三番目のようね」
「あの二人は同率一番ですので二番です。ギッリギリ一番に成れないけどあと少しで成れる二番ですよ。貴方は論外でしょ」
「そ、そんな事ないわい! 火事に巻き込まれたら助けてくれるくらいの位置付けだし!」
「この家はそんな脆くないです! それにそれは私が止めます!」
「何よー!」
「当たり前でしょ!」
「ほらほら二人とも皆さん晩御飯作りに行きましたよ。うちらも行きましょ」
愛桜は二人を沈めてからキッチンに来て、俺達はみんなで晩御飯の制作を始めた。
ハンバークを作ってみた。
「······」
「海華、どうした?」
「うん。ちょっと、いいなって」
「ん?」
「こうやって皆で何時までも笑いながら料理出来たら、良いなって思って」
「海華ちゃん。雪お姉ちゃんは何時でも一緒に料理するよ」
「うん!」
雪が海華の頭を撫でる。二人は立派な姉妹をしているような気がする。
和むな。
「いいっすね。純粋な義姉妹ですよ」
「そうだな」
愛桜に賛同しつつ、凛桜の「あそこに私が居たら······はぁ、勝てないなぁ」と言っていた。
晩御飯が終わり、風呂にも入り、俺の部屋には伊集院姉妹と雪、凛桜が居た。
現在愛桜は風呂に入っている。
「なんかこの光景にも慣れたなぁ」
「お兄ちゃん、ハーレム志願者ですか?」
「そんな訳あるか。ただ、こうやって賑やかな空間に慣れたってだけ」
「そうだね」
「なんやかんやでこの生活を楽しんでみいる自分が居るよ。いずれ愛海達も嫁ぐんかな」
「······」
と、中学生相手にする話じゃないな。
それに入試も近い訳なんだし、今度の休みに母の墓に行こうかな。
久しぶりに故郷に帰るか。
雪と凛桜の口喧嘩を見ながら、俺の膝の上で小説を読んでいる海華の頭を撫でて、俺は呟く。
「今度の休み、墓参りに行くか」
「良いの?」
「ああ。余裕もあるからな」
「やった!」
「お兄ちゃん⋯⋯私も良い?」
「当たり前だろ? 入試の事を忘れて、母さんに会いに行こう」
俺達は家族だ。家族の下に行くのにそんな事気にしなくて良い。
雪と凛桜が黙って、猫のような目でこっちを見て来る。
風呂から上がった愛桜も同じような目で見て来る。
「ま、ルームメイトだしね」
雪に関してはルームメイト以上の関係だけど。
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