第22話 修正【完】
現在は土曜日の午前9時となっております。
妹2人はテーブルマナーを教わっており、桜井(姉)は両親が通わせている道徳講座に行っている。
桜井(妹)は彼氏とデートらしい。
そんで俺と西園寺は服屋に来ている。
理由としては俺の私服を買うかららしい。
「別に要らんでしょ」
「ダメですよ。色んな格好の拓海君をこの目で見たいですから」
そうやって笑顔を向けて来る。
西園寺の笑顔は普段の顔とのギャップが凄い程の反則的な笑顔だ。
前までの俺ならなんとも思わないだろうが、西園寺の事を知って行く程にその笑顔が眩しく見える。それに、心にゆとりが持てるようになったしね。
流石は梅雨と言うべきか、今日もかなりの雨が降っている。
「どれが拓海君に似合うかなぁ〜」
「うん。まずは動物系パジャマから離れよう」
「えぇ。可愛いと思うんですけど。ダメ、ですか?」
「上目遣いでもダメ。そう言うのは愛海や海華が似合うの」
そう言うと、西園寺が体を寄せて来る。
体と体が密着そうな距離まで近づいて来て、顔を近くまで寄せて来る。
それに、硬直する俺だが、気づく。
西園寺がちょっと拗ねてる事に。
「拓海君はシスコンだと思います」
「安心してくれ、自覚はある」
「安心出来ません! それって私には似合わないって事ですよね?」
西園寺にうさぎのフードがあるパジャマが似合うと聞かれた?
考えて見よう。
白銀碧眼のクール系美少女がカワイイ系のうさぎのパジャマを着ている姿を。
ダメだあんまり想像出来ん。
でも、やっぱなんか違う気がする。
「そこは嘘では『似合うよ、雪姫』的な事を言って欲しいです!」
「似合うよ雪姫さんならなんでも」
「棒読み! 心込めてください! じゃないです! 今日は拓海君の私服を選びに来たんです!」
あはは。
別にどうでも良いでしょ。
◇
はぁ。
私に道徳精神がないと言われて通っているこの道徳講座。
道徳が私にない? どこがよって話。
なんかあのビッチが伊集院君の私服を選ぶと言っていた。
急いで行かなくてわ。あのビッチ好みの姿になってしまう。
阻止してやる! そしてあわよくば私好みの格好に!
「それでは桜井さん。目の前に好きな男の子が居ます。それを虐めている人を発見しました。どうしますか?」
「はい。私では相手に成らないので証拠の映像を取って、世間にバラ⋯⋯先生や保護者に相談します。そして、止められなかった。助けてあげれなかった好きな男子に近づき謝ります。そして、慰めます。そして、一緒に頑張ろうと、共に歩む道を示します」
「⋯⋯ッ! 何時もなら『そのいじめてる男子の事を家族から徹底的に調べ上げてその務めてる会社から信用を失墜させて、適当なデマを近所にばらまいて孤立させ、適当な濡れ衣を着せさせて借金地獄に落とし、永遠と思える絶望を与え、権力を使って新たな就職先も次々に無くす』と言う所ではないですか」
「そんな恐ろしい事言いませんよ」
「他にも『その男共をその場でリンチさせ裸にした上で校内を走らせる』とか」
「そんな滅相も無い」
「そうですか。電話、ありますか?」
「はい。どうぞ」
「ありがとう。⋯⋯あ、もしもし桜井さんのお父様で御座いましょうか? あ、使用人さんですか。えっとですね。桜井さんが、壊れました。いや、何時も通りでは無く、カクカクシカジカでして。あ、はい。はい。では」
「帰って、良いですか?」
「精神科に行きますよ」
「なんで!」
◇
「ん〜もうちょっと暗い方が良いかもですね」
夏と言う事で半袖半ズボンを選んでいる。
今は深い青色をベースにしているのだが、暗い方が良いと言う。
もういっそ黒で良くね?
「いや、ここら辺は明るい方が?」
夏の服装って冬と比べて難しいらしい。
冬ならコート等でさらにコーディネイト出来るけど、夏だとそうは行かない。
涼しさと利便性も必要だからだ。
女の服選びは長いと言う。
西園寺が収まるまで待っていたら、いつの間にか午後11時に成って居て俺は驚愕している。
「昼ご飯を食べに行きましょう」
「そうですね」
服を買って、それを西園寺の護衛か分からないが、後ろからストーカーじゃなくて見守っていた人達に預けて、俺達はフードコートに向かう。
「私達、護衛なんだけど」
「行ってら。私は見てる」
「え! ひど! でも、分かったわ。貴方の方が戦闘力高いし。こっから屋敷遠いよ〜」
「バスはすぐに来るぜ!」
俺達は適当なフードコートで好きな物を注文している。
西園寺が水を1口飲んで、言葉を出す。
「昼からはフリーです。何処か行きたい場所はありますか?」
「バイト代も入っているし、雪姫さんの私服を買いに」
「私は沢山持ってますよ」
「そうじゃないの。一方的に選ばれたなんて、嫌だからな。お返しだよ」
「⋯⋯そ、それは、その。拓海君が私の為に選んで、くださると言う事でしょうか?」
「逆にそれ以外に聞こえた?」
「い、いえ。その、ありがとうございまひゅ」
最後の方が聞き取れ無かったなぁ。
あ、来た俺のナポリタン。
何故か、この状況を周りからかなりの視線を当てられる。
その目がほんわかな暖かみを込めた目だったのは驚きだ。
スタッフの人も微笑ましいそうに俺達を見ていた。
「なんか、初々しいわね」
「そうだね。僕達も昔はあんな感じだったね」
「ん?(私の記憶ではずっと私がグイグイ腕を引っ張っていたのしかないけど。あんな対等っぽい感じじゃなかったような?⋯⋯最近帰りも遅いし⋯⋯探偵、雇うか)」
「(もうすぐ結婚記念日だな。夜の方も俺は毎回誘われてばかりだし、その日は俺が全面的なリードをしないと。後輩の女子にもプレゼント選びを手伝って貰っているし、そろそろ決めれそうだな〜2日後、きちんと決めないと)」
とある修羅場フラグなんて知る由もない俺達は来たご飯を食べ始める。
西園寺が口元を吹いて、「一口くれませんか」と言って来た。
特に断る理由もないので、ナポリタンの皿を押そうとしたら、温泉の思い出がフラッシュバックして思い出した。
俺は自分の使ったフォークでナポリタンを取り、落ちないようにスプーンで受け皿のようにして、西園寺の口元に持って行く。
西園寺は少し照れくさそうにしてから、髪をかき上げて食べた。
「お、返しです」
自分のハンバーグを一口サイズに切り分けて俺の口元に持って来てくれる。
何となく思ってたけど、もしかしたらこの状況は西園寺が好きな状況かもしれない。
俺もハンバーグを食べる。
なんか照れくさいような。焦げ臭いような。
焦げ臭い?
後ろを見ると、黒い煙が出ていた。
後の話で、火の調整を間違えて肉を炭に変えたらしい。
そんな和む? 思い出を作りながら再びさっきの服屋に来た。
今度は俺が西園寺の服を選ぶ。
そう。俺は思い出してしまったんだ。
服なんて2着あれば問題ないと言う昔を。
同じので問題ないと思う俺を。
そして、それに染まった2人の妹を。
ありがたそうな母親の顔を。
要するに、俺は女性の服なんて選んだ記憶がない!
え、軽口叩いたけど、これはやばいぞ!
そう焦っているけど、西園寺の向陽した顔を見たら、なんか問題ないと思う気持ちが湧いて来た。
西園寺に似合う服、頑張って選ぼう。
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