第15話 修正【完】

「大丈夫です」


「何が?」


「私、西園寺雪姫、西園寺家の名に掛けて貴女を助けます」


「西園寺⋯⋯西園寺財閥!」


「拓海君」


「ああ」


 俺はカバンから愛桜から貰った浮気現場の写真を見せる。

 中には中学生と思わしき人物も居る救えない感じの写真共。

 これを机に広げる。


 やべぇ。

 コンビニで印刷している時に思ったけど、多すぎて机に収まらん。


「弁護士は私が紹介します。日記とかがあると良いのですが、流石に難しいと判断します。ですが、暴力の方は痣があると思います。それも写真に収めましょう。子供が中学2年生と言う事は長い間婚姻しているのでしょう。慰謝料、養育費を沢山取れる事でしょう。この写真に写っている人達で結婚している事を知っている人を探します。そしたら、その女性に対しても慰謝料請求が可能です。あのゴミを地獄に落としたいのなら、浮気を知らない人にも慰謝料請求をさせます。ダブル不倫ならその家族にも話を通します。お仕事の方も夜は辞めて、子供達が学校に行っている間に出来る仕事を私が見繕います。その間は我が屋敷で暮らしてください。私の名に掛けて御守りします」


「⋯⋯どうして今日会ったばかりの私にそこまで?」


「元々は拓海君がやろうとしていたと思います。私はあのゴミが許せない。なので、確実に潰す方法を選ぶだけです。同じ女性として、見過ごせません。理由はそれだけで十分です」


「雪姫さん。ありがとう」


「まだですよ拓海君。こっからが重要です。スマホは持って行きましょう。荷物を纏めてください。迎えの者を呼びます」


 俺も手伝う。

 子供達は何が起こっているのか分からない状態だったが、母親に連れて洗面所に入る。

 痣を写真に収める為だ。


 西園寺は色々と電話を掛けている。

 西園寺雪姫が動くとどうなるのか、少し怖いが、俺も朧は許せん。

 最初は西園寺に手を出すから流石にやばいと思い、行動したが、思っていた以上にクズだった。


 もう徹底的にやってやろうと決めた。

 朧がどうなろうと自業自得だ。


 荷物は思いの外すぐに終わった。

 何故って? 怖い程に物が少なかった。

 子供達も学校指定の体操服と制服だけだった。

 しかも、一着しかない。


「お兄ちゃん、重くない?」


「お兄さん」


「俺も手伝うよ。何か良く分からないけど、母さんが助かるって言うなら」


「大丈夫だよ」


 中2とは思えない身長の低さと細い体。

 腕から見える青い肌。

 そんな子供に手伝うと言われても、やらせられないよ。

 それに、引越し業者のバイトをしていた俺にとってはこんなの軽い軽い。

 いや軽すぎる。


 荷物を纏め、麻美さんの車に乗り込み、屋敷に向かう。

 その間にGPSアプリは消しておく。


「後は家に居るハッカーに預けましょう」


「そんな人居たんですか?」


「えぇ。最近では動画と写真の編集を任せているわ。腕は確かだから。そしてお友達と家族の連絡先を復元させる」


 最近では、動画と写真の編集、ここに関して俺は何か物凄く恐怖を覚えた。

 何故か、俺にとても重要な物と関連している気がしてならん。


 屋敷に付いて、メイドさん達が食事の準備をしていた。

 子供達や奥さんは遠慮していたが、西園寺が食べるように行ったら素直に食べた。

 一口食べれば笑顔が零れ、涙を流しながらパクパクと食べ始める。


 西園寺は例のハッカーに奥さんのスマホを渡しているようだ。

 今日は火曜日、土砂降りの中残り3日を乗切る。


 そんな考えもありました。

 土砂降りにより、土砂崩れ警報が出て来て休校になった。

 これは学園長の意向で少しでも警報が出たら休校なのだ。

 解除されても休校である。


 これは生徒の事を思ってやっているのか、学園長自身が合法的に休む為か、未だに議論されている。

 ま、教師達はこの中でも仕事するんだけどな。


 連絡先を本当に復元して奥さんが電話している。

 子供達も参加だ。

 奥さんの願いで俺と西園寺も付き添う。


 愛海と海華が気になっていそうだったが、愛海が海華と遊んで制している。

 愛海にも何も言っていない。

 しかし、何かを察したかのように何も聞いてこない。

 ほんと、よく出来た妹だ。後で褒めておこう。


「⋯⋯」


 西園寺がこっちをつぶらな瞳で見ている。

 間違いなく、今回のヒーロー及び功労者は西園寺である。

 西園寺にはいずれ絶対にお礼をする。

 何が良いだろうか?


「頭を撫でてください」


「え?」


「愛海さんや海華ちゃんは少しだけで褒められて、頭を撫でて貰ってズルいと思います。なので、私も⋯⋯」


 その前に、奥さんの電話が繋がった。


『もしもし』


「あ、お母さん! わ、私だよ」


「「「おばあちゃん!」」」


『なんだい今更電話されても言う事はないよ!』


「ま、待ってお母さん! お願い、私の話を聞いて! ラインの事、あれは私じゃないの! あれは私の旦那が勝手にした事なの!」


『その証拠が何処にあるって言うんだい。どうせ金の要求だろ? 二度と関わって来るんじゃないよ』


「お願い、お願いお母さん。待って」


 涙を流す奥さん。

 子供達も必死にそうだと言っている。

 だけど、顔も見た事のない孫の言葉も信用出来ないようだ。


 西園寺が前に出て言葉を出す。


「西園寺財閥、三女の西園寺雪姫です。おばあさん。この人達の言っている事は本当です。物的証拠がある訳ではありません。今から現状何が起こっているのかを記した物を送ります」


 西園寺がそう言うと電話の向こう側が沈黙に包まれる。


「雪姫さん。どんなの送ったんですか?」


 コソコソと話す。


「ちょっとした犯罪行為になってしまうけど、あのゴミのデータをハックして不倫相手のメッセージログを記した物やこれまで奥さんが受けてきたDV等などを記した物よ」


 成程。

 それから20分程経ち、向こう側から言葉が出て来る。


『これは、本当かい?』


「多分。本当」


 奥さん、何を送ったのか把握してないよで、戸惑っている。

 奥さんにも見せるべきだったと思う。

 ま、アイツのメッセージログなんて奥さんに見せるような物じゃないか。


『そう。1度帰って来なさい。面と向かって、話すわよ』


「⋯⋯ありがとうお母さん。でも、アイツと決着を付ける為に少しだけ時間が掛かるわ。沢山の金をもぎ取って帰って行くわ」


 確かに、相手は数千万は軽く超えそうな金を請求されるだろう。


「アイツ、払えんのかな?」


「無理でしょうね。一教師程度で払える額には収まらないでしょう」


 ま、そうだよな。

 これで少しは懲りたらいいんだが、まぁもう知ったこっちゃねぇや。

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