第14話 修正【完】
「西園寺君、きちんと来てくれたね」
「⋯⋯」
「呼んだ理由だが、最近君の噂を耳にしてね。ここは学ぶ為の場所だ。そのような不純異性交友は認める事が出来ない」
「校則違反はしていませんのでなんの問題もないです。先生が口出す理由はないです。担任でもない貴方が」
「⋯⋯君も生意気だね。ここは学校だよ? その絶対的なボスである教師に対してどうしてそんな目を向けるのか? きちんと敬意を祓わないといけないだろう? 西園寺君。僕はね。君の事を分かっている理解者なんだよ? 君が誰とも関わりを持たない理由もきちんと理解している。だからこそ、あのような男とそう言う関係に成るのは許容出来ない」
「貴方の許可にはゴミ程の価値もないです。それに、一教師程度の貴方程度の存在で拓海君の事を語らないでください」
「気に食わない。なんの取り柄もないあのようなど平凡のどこが良いと言うんだ? 西園寺君。君が遊び盛りなのは分かる。普段誰とも関わらない君だから、あのような平凡の男を最初に選んだだろう? でも、それじゃ満足出来ない筈だ。僕に任せてくれないか? 絶対に君を満足させる事が出来るよ? あのような目上の人に対して不遜な態度をとるクズとは違ってね」
「⋯⋯」
「大丈夫。僕に全部任せてよ。僕って色々と噂があるようだけど、殆どがデタラメだ。とある女子高生に告白され、断ったらこうなっただけなんだ」
西園寺に近づく朧。
「⋯⋯クズはお前だ」
「ん? 今なんて⋯⋯」
「クズはお前だゴミ。お前程度のゴミが拓海君を語るな! お前が拓海君の何を知っている? お前が私の何を知っている? なんだ今のは口説き文句か? アホくさく反吐が出んだよカス! 今のがカッコイイとか思ってんのか? 何でそこまで自分に酔えんだよ気持ち悪い! 良いか。全ての物事を自分の自己中心的な考えで完結させるな。勝手なキャラ設定を押し付けるな。拓海君が平凡? だったらお前はそこら辺のミノムシよりも邪魔な存在だ。底辺中の底辺野郎だ! お前の物差しで物事を判断し押し付けるような自己中は嫌われて当然だ!」
「⋯⋯はぁ! 教師に向かってその態度とは、いただけないな!」
俺はスライドドアを強く開けて朧の回し蹴りの足を掴む。
「どうして伊集院君が居るのかな?」
「生徒に暴行とは、良くないですよ朧先生」
「チッ」
足から手を離すと足を引っ込める朧。
ドアの方に歩いて行くと、途中で俺に向かって回し蹴りを放つ。
それを左の手の甲で受け止める。
居るんだよな。
警備員のバイトをして、酔っ払った相手が不利になると逃げたフリをして不意打ちして来る事。
先輩から色々と学んでこの手の対処法はしっかりしているつもりだ。
俺は先生の顔が少し見える程度に顔を動かす。
相手から見たら睨んでるように見えるだろう。
実際睨んでるし。
「⋯⋯」
朧はそのまま出て行った。
俺は西園寺に手を伸ばす。
「大丈夫ですか?」
「⋯⋯ええ。ありがとうございます」
その後、俺達は何も会話をせずに教室に戻って行った。
俺と西園寺の顔が赤いのは、きっと誰にも見られてないだろう。
そうであってくれ。マジで。特に神威には今の姿を見られたくない。
昼休み、俺達は体育館裏で弁当を嗜んでいると、視界にマイクが入って来る。
「話を聞かせてください」
「愛桜さん。朧先生について知っている事はありませんか?」
「あの人は有名ですからね。噂通りの人ですよ?」
「では、住んでいる場所は?」
「流石にそこまでは知りませんよ〜」
「俺達のプライベート情報を1つ」
「⋯⋯如月マッション205号室。それではその情報とやらを」
「昨日傘屋に行った」
「⋯⋯え」
「プライベート情報だ。何も問題ないだろ?」
「⋯⋯た、確かに。ですが、なんかズルいです!」
「情報どうも。これ以上は何も話さない。さっさと散ってくれ」
「扱い酷!」
弁当を食べながら今後の事を考える。
「で、では。朧の野郎の浮気現場写真なんてどうですか」
「⋯⋯同じ条件で全て貰うぞ」
「強欲ですね。その分、質のいいのお願いしますね」
「一緒に登校してる」
「知ってますよ! 全然目新しいモノじゃないし! 他には何かあらへんか!」
「同じ条件、1つ言ったから言わない。ほらぶつ寄越せ」
「なんて野郎だ」
浮気現場写真、本当に沢山あった。
全部スマホの方に送って貰った。
放課後、今日はバイト無いので家に直行出来るが、俺は寄り道する事にした。
「雪姫さんは帰っても良いんですよ」
「ううん。私も寄り道」
俺達が来た場所は如月マッション205号室である。
チャイムを押すと、中から「はーい」と子供の声が聞こえる。
トテトテと走って来て、ドアを開ける。
顔を出して来るのは小さな女の子であった。
奥には2人の男の子が居る。
「お家の人って居る?」
「⋯⋯お母さーん。不審者ー!」
「え、嘘でしょ! け、警察!」
待ってお母さーん!
そんな茶番している場合じゃないわい!
中に通して貰った。
お母さんと呼ばれた人は若そうな人であった。
朧は34歳だった筈。
「貴方方は一体?」
「はい。お、僕は伊集院拓海と言います。貴方の旦那さん。朧先生に付いてです」
「あぁ。あのカスね。あ、生徒前でごめんなさいね」
「い、いえ。お心は察しております」
朧イコールカス、これは学園全体の共通認識なので問題ないです。
言い過ぎると名誉毀損になりそうですが。
「実はその先生の不倫に付いてですが」
「あのカスが不倫しているのは知っているわ。私が妊娠する度に女を取っかえ引っ変え。悪い事があると私や子供達に暴力を振るう。みんなカスの事が嫌いよ。最近はパパ活だっけ? それをやっているわ」
や、やばい。
思っていた以上にクズだった事に今更ながら驚愕しております。
心中お察しします。
「それでも、離婚はしないんですね」
西園寺が珍しく、自ら話す。
その事に驚くのは当然俺である。
同じ女性として見てられないのかもしれない。
そして、こっからが朧のやばい部分だった。
「無理なのよ。私は朝や昼の仕事をしてはいけないの。さらに、入っても悪い噂を流されてクビの流れ、夜の店で働いているわ。私って童顔だから結構稼げるのよ(ドヤァ)だけど、その金を子供達の為に使いたいのに奪わらて、通帳も管理され、渡されるのは最低限の金だけ。カスは女遊びにその金を使う。さらにパチンコに競馬、カジノ等のギャンブルに使い、負ければ子供達に手をあげる。頑張って私がそれを受けているけどさ。1度は離婚も考えた。実家に行こうとも考えた。だけど、スマホにはGPSアプリが入れられて、消えれば当然バレて暴力。カスが居ない間、仕事がない間に家から動いたら捕まって外で罵詈雑言暴力、人が居る所では良い旦那を演じる。実家には私のラインを使って母と父に誤爆ラインを称した罵詈雑言、そしてそれに怒った私の両親から絶縁宣言され、ラインから2人は消えた。頼れる友達もカスのせいで1人、また1人と消えて行く。逃げ場を失い、子供達を盾に私の行動も制限され逃げる事も出来ない。頑張ってやりくりして貯めた金を使って探偵を雇って証拠を集めても、毎日家の中を点検され、証拠が見つかって、本当に死にそうになるくらいに子供達に暴力を振るう。私が居ない間にね。弁護士を雇う金はない。慰謝料を貰っても、そもそも証拠がないから裁判に勝てない。スマホの内部データはパソコンに送られカスが常時管理する。それが今の私とカスとの関係」
俺と西園寺は黙って聞いていた。
途中から幼い子供達の顔が歪んでいる事に気づいた。
涙を流す子もいる。
「あの子達、小さいでしょ。栄養が足りないのよ。大きい子で中学2年生、1番小さくても小学五年生」
それは、やばいだろ。
完全に隔離され絶対絶命な状態なんだな。
「そもそも、働ける場所も無いし、カスの言いなりに成るしか、ないのよね。貴女も気をつけね。貴女のような可愛い子は、アイツに目をつけられる」
真剣に、警告する朧の奥さんを見て、西園寺が口を開く。
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