第2話 修正【完】

 ドンドンとドアを叩く音が聞こえて来た。

 それに怯える海華。

 カッチーン。俺キレちゃいました。


「あの! いい加減にいいい!」


 ドアを開けると、抱えられて車に無理矢理乗せられた。

 ちなみに妹2人ものうのうとついて来た。


「おい、これは誘拐だぞ。てか、なんで二人共警察呼ばかなかったの?」


「お兄ちゃん、家に固定電話及び携帯があると思う?」


 すまん。お兄ちゃんが間違ってた。


「黒服のおじさんがついて来るとお兄ちゃまが喜ぶって言って」


 純粋! だけどそこが良い! いや今は良くない!


 それから車で揺らされる事数分、大きな御屋敷の前で降ろされた。


「⋯⋯どこ?」


「お兄ちゃん⋯⋯」


「お兄ちゃま」


 黒服の人が「こちらです」と言って来たので拒否して帰ろうと思ったけど、流石に負けるのでついて行く。

 大きな御屋敷に似合う大きな扉を黒服の2人が開ける。

 中にからトントンと足音が聞こえ、近づいて来る。


「拓海君!」


 飛び付いて来たので受け止める。

 胸の辺りに当たる柔らか感触、鼻で息を吸わなくても匂ってくる柔らかな匂い。

 サラサラでフワフワな銀髪。

 ま、何となく分かっていたけど。


「西園寺さん。なんですか?」


「だーかーらー雪姫と呼んでください! 何って、今日から一緒に住むんですよね?」


「お兄ちゃん!」


「お兄ちゃま!」


「あら、可愛らしい。お2人が私の義妹になる2人ね」


「お兄ちゃん何言ってるのこの子?」


「ねえ、愛海さん」


「何故名前を!」


「貴女のお兄さんと私の交際を認めて、一緒にここで住むって覚悟を決めたら、借金も何もかもを精算してあげる」


「え、⋯⋯それでも認めません! で、ですが、その話が本当なら、少しは考えても良いですが、絶対に結婚までは行かせません!」


「ふふ。海華ちゃん。お兄さんの事、好き?」


「うん!」


「私の言う通りにすると、お兄さんとても助かって、たっくさん笑顔が増えるよ。それに、沢山遊べるようになるよ。バイト辞めさせるから」


「ほんと!」


「ほんと。だから、お兄さんの説得手伝ってくれない?」


「うん!」


 やばい。

 何かがやばい!

「お兄ちゃま」「お兄ちゃん、ごめん」と言って、俺の弱点である妹2人のオネダリ的な目で見詰めて来る。

 ぐぬぬ。俺別に西園寺の事好きな訳じゃないんだけど。あれ? 何かがまた、引っかかったような。

 つか、どうしてこうなったんだ!


「無言、つまり肯定、今日から私達は家族ですね」


「え!」


「あ、荷物とか全部運ばせてますので今から住んで良いですよ。お部屋に案内しますね」


「いや、ちょっと」


「お2人は同じ部屋で良いですか?」


「海華、私と同じ部屋で良い?」


「うん! こんな広い所に1人部屋とか寧ろ怖いよ」


「お願いします」


 え、待って。

 ついて行けてないの俺だけ? ねぇ、俺だけ?

 助けて、この疎外感。ねぇってば!


 つんつんと肩をつつかれたので振り向くと、そこには神威が居た。


「よ! なんか、よく分かんないけど、結婚おめでとう。パチパチパチ」


「ねぇ! この状況何! つか、なんでいるのさ!」


「俺ここの使用人として働いてんだよ。清掃人だけどな。さて、経緯を教えてやろう。まず、西園寺雪姫様はお前に何故か好意を持っていた。相談されたので、面白そうだったし手伝った。果たし状を選択したのも俺な。そして、お前がクフ⋯⋯雪姫さ、グフ、に告白して、こうなった」


 まず、殴っていいか?


「お兄ちゃん凄いよここ! とっても大きなキッチンだった!」


「うんうん!」


 ⋯⋯2人の笑顔には勝てんな。

 神威が去って行き、隣に西園寺が立つ。


「お試しでも構いません。貴方の現状を聞いて、いち早くこうしたかったので、こうしました。強引だった事、深くお詫びします。試しで構いません。12年間のお試しでも構いません。一緒に、ひとつ屋根の下で過ごしては、頂けませんか? きっと、思い出してくれると思います。」


 12年間ってのに疑問と驚愕を隠せんが、まぁ良いかな。⋯⋯思い出す?

 あの二人も乗り気だし。


「まぁそもそも、もう拓海君の帰る場所、ここしか無いんですが」


「さっきの謝罪を返してあげよう」


 それから西園寺に案内されて俺も自分の部屋に行った。

 結論から言おう。広い。

 それに机に椅子にベットにと、必要な物は全て揃っている。

 俺の右隣の部屋が妹2人の部屋で、左隣の部屋が西園寺らしい。


「それでは次に行きましょう。色々と部屋の位置を確認しませんと」


「うん」


 ごめん。部屋を見て感動して頭真っ白に成ってる。

 しかも、母親の仏壇まである。

 これは、本当に嬉しかった。部屋に仏壇ってのは流石にアレだと思うが、西園寺曰く後々移動するらしい。


「さて、皆さんには私の父様と母様にお会いして貰います」


 うん。スウウウフウウウ⋯⋯なぜ!


 現在客間? だと思われる広い空間に案内された。

 その場所には厳しい顔立ちをしているおじさんと、キリッとした凛々しいお姉さんが居た。

 対面に海華、俺、西園寺、愛海、の順で座る。


「そうか、君が雪姫が認めた男か」


 お前が父親か。こっっわ。


「そう。貴方が。あ、私は雪姫の母です」


 お姉さんじゃないんだ。見た目わっっか。

 さて、一体何言われるんだろう。

 てか、これってこの2人とこれからここに一緒に住むって事?

 肩身狭い気がするんだけど。


「拓海君と言ってたね」


「は、はい」


 父親からのオーラの圧が凄い。

 冷や汗がながらてしまう程に凄い。

 その父親が立ち上がり、俺を見詰めて来る。

 そして、頭を下げた。体を90度に曲げている。


「うちの娘をよろしくお願いします!」


「えええ!」


「こちらからも、よろしくお願いしますね」


「ええ、それだけですか?」


「いやね」


 ソファーに座り、出された紅茶を1口飲んで父親が喋り出す。


「雪姫は盲信するタイプでな。1度決めた事は突き通すんだよ。だからちょっと、かなり、物凄く強引な所があると、思うが許して欲しい。わしは自分の人を見る目を信じている。だから君なら問題ないと判断した。ま、そもそも雪姫はわしよりも人を見る目はいいんだがな。ガハハハ」


「雪姫は体も見た目も良いですし、ある程度の家事なども出来ます。きっと尽くすタイプですよ。いやー楽しみですね、これから雪姫をよろしくお願いしますね。それでは私達はこれで。あ、子供は計画的に」


「何言ってるんですか! え、何処かに行かれるんですか?」


「もう、お母様ったら」


「え、家に帰るんですよ」


「ここは?」


「ここは雪姫に渡した別荘の1つで雪姫の家だぞ? 聞いてなかったのか?」


 聞いてねえええよ!

 なんだよその金持ち!

 どこの金持ちだよ!


「お兄ちゃん、私、薄々思ってたけど、西園寺さんって、あの有名な財閥、西園寺グループの創設者、じゃないんですか?」


「⋯⋯」


「ガハハ。若いのに良く知っているな」


 まじかー。

 俺、これからどうなるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る