呪いの一族

ゆき

プロローグ

 どうしてこうなったのだろう。僕が悪い子だから?

 さっきから同じ疑問しかうかばない。

 僕はついさっきまで僕たち、いや、彼ら一族の一員であったのに。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 家族が儀式の準備をしている音で目が覚めた。

 今日は変身の儀の当日。

 

 僕たち一族は5歳になると猫に変身することが許可される。

 変身の儀では城内の皆の前で変身をする。らしい。

 母さんと姉さんは服選びに夢中だ。なにせ儀式の場での服装はとっても大切だそうだ。かと言って早く服を選んでくれなければ朝食の時間に間に合わない。


 今日は大事な儀式の日ということで国王様も朝食の場に出席なさるのだ。

「母様、本日の服はお決まりになりましたか。」

 時間が時間なので催促したつもりなのだが、

「どれがいいかしら。シオン、これはどうかしら。」

 といった具合で僕の声が聞こえていない様子だ。

 仕方がないので別の支度を済ませておくとしよう。


 そんなこんなで朝食の時間が迫ってきたため、皆でダイニングへ向かう。

「ガンちゃん、緊張なんてしなくて大丈夫だからね。」

「母様、見ての通り僕は緊張などしておりません。緊張する必要のないことに対して緊張する意味がないので。」

「もう!意気っちゃって――」

「意気ってまってません。」母様の子供っぽいところが好きな自分もいるが今日のところはしっかりしてほしい。


 母様と話している間にダイニングへ到着したため、気を引き締める。さすがの母様も気が変化した。

 目の前の大きな扉を開けるとダイニングだ。そこには国王様もそのご子息も、また父様が待っているだろう。


 今日は僕が主役ということでいつもよりも遅くダイニングへ向かったのだ。

 いつもは自分で開けている扉も国王様の側近の方が開けてくださる。ギーという音とともに広いダイニングが目の前に広がる。側近の方に誘導され席に着く。


「本日は私の変身の儀のため猫の棟へとご参列ありがとうございます。」

 猫の棟とは僕たち一族が暮らす屋敷だ。僕たちは基本的にこの屋敷で暮らし、国王様に仕える際のみ城へ行くという形をとっている。僕はまだこの屋敷から出たことはない。城へ行くには猫の姿になる必要があるからだ。儀式の後には城の中を案内していただける予定だ。正直僕は変身の儀よりも城を見て周ることのほうが楽しみである。


「ガルスよ、本日の変身の儀をもってそなたも我ら王族の正式な側近となる。自らの役目を十分に果たすように。」

「はいっ」


 今日の朝食はいつもより少しばかり豪華だった気がする。皆が期待する中で儀式を失敗することは許されないが変身の儀では難しい作法もないため失敗のしようがない。一族の血が通っていれば変身ができないなんてことも絶対に起こらないのだから。儀式を受けるまえの僕はこんなのんきなことを考えていた。まさか自分が猫に変身できないとは夢にも思っていなかった。


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