第7話 1977年
前年スマッシュヒットを飛ばした「マシンハヤブサ」の影響で、この年はレースアニメが4本出てきた。機を見るに敏なのは悪いことではないのだが、視聴者側からすると一気に食傷気味となってしまう。とは言え「マッハGoGoGo」(1967年)のヒットの後には見られなかった現象であるから、それだけアニメ産業の裾野が広がり、ノウハウが蓄積された証左でもあると言えよう。
この中で「超スーパーカー ガッタイガー」はまったく知らない。いま調べてみるまで名前すら知らなかった。虫けらの中でガッタイガーといえば、UFOロボグレンダイザーの原型である劇場用映画「宇宙円盤大戦争」(1975年)である。ネーミングは問題にならなかったのだろうか。まあ、いまより緩い時代だからな。
マッハGoGoGoを制作した、いわばレース物の老舗のタツノコプロが「とびだせ!マシーン飛竜」を出したものの、いわゆるタツノコ的なコメディタッチが虫けらには合わなかった。第1話で挫折したのを覚えている。
一方「アローエンブレム グランプリの鷹」と「激走!ルーベンカイザー」は、比較的リアルな描写とシリアスな物語がそれなりに人気だったように思う。そういう意味では「宇宙戦艦ヤマト」(1974年)の系譜とも言える。でも虫けらはマシンハヤブサくらいの加減が一番好きだった。当時の年齢もあると思うのだが、やはりヒーローが悪者を倒すシンプルさは魅力なのだ。
巨大ロボット物もすっかり定番ジャンルとなり、この年6本が新番組として放送された。「合身戦隊メカンダーロボ」はヤマト的なリアルさをロボットアニメに導入しようとした意欲作だが、成功したとは言い難い。そのヤマトの松本零士氏を原作者とする「惑星ロボ ダンガードA」もリアルな方向性を探ったが、おかげでロボットがなかなか出て来ず、評判はイマイチだった。
対してリアル系から距離を置いた作品として、「超人戦隊バラタック」と「超合体魔術ロボ ギンガイザー」がある。上の方でシンプルさが魅力だとは書いたが、幼稚であればいいというものではない。
その点、もはや王道と言っていいパターンを踏襲した「超電磁マシーン ボルテスV」は安心して観られた。まさに「こういうのでいいんだよ」である。だがこの年、そのド定番を外したもう一本のロボットアニメに虫けらは激しく興味を引かれた。そう、「無敵超人ザンボット3」だ。
アシンメトリーなデザインのキングビアル三世、地球人に敵意を向けられる主人公たち、そして人間爆弾などなど、後々いろんな要素が話題となったザンボット3であるが、一番凄かったのは他のロボットアニメに比べて、リアルさやシリアスさなどのバランス、塩梅が非常に上手かったことだ。
無論、基本は暗く悲しい物語である。なのにタツノコプロの「みなしごハッチ」や「けろっこデメタン」のような陰々滅々さはまるでない。極めてドライなシリアスさなのだ。監督の富野氏は後の「機動戦士ガンダム」(1979年)において、ヤマトを超えることを目標としたとされるが、物語のバランスに関して言えば、この時点ですでにヤマトレベルにはあったのではなかろうか。
1977年には他に、長期シリーズとなる「ルパン三世」の第2期、名作劇場の第3弾であり後々の世に悪い意味で影響を与えまくった「あらいぐまラスカル」、鉄腕アトムの焼き直しと手塚治虫氏自ら豪語した「ジェッターマルス」、主題歌だけはやたら格好良い「氷河戦士ガイスラッガー」、当時のロリコン御用達の「女王陛下のプティアンジェ」、そしてタイムボカンシリーズ第2弾の「ヤッターマン」など、総数30本のアニメが放送されている。
特撮界の話題としては「秘密戦隊ゴレンジャー」が3月で終了し、4月から「ジャッカー電撃隊」が始まった。しかしゴレンジャー級のヒットは難しく、年内に終了している。前半はシリアス路線だったが、後半は宮内洋氏演ずる「ビッグワン」が加入し、注目をかっさらって行った。宮内氏といえばこの年、「快傑ズバット」も始まっている。仮面ライダーV3、アオレンジャー、ビッグワンにズバット、宮内氏は「ライダー俳優」と呼ばれることもあるが、この活躍を見る限り「特撮スター」ではないだろうか。
ちょっとした面白ネタ。1977年には「怪人二十面相」が放送されているのだが、このとき同時間帯に裏で再放送の「少年探偵団」(1975年)が放送されていた。いうまでもなく、少年探偵団にも怪人二十面相は出て来る。まあ、だからといって当時の視聴者が混乱した訳ではないのだが。
ごく最近まで知らなかったのだが、「小さなスーパーマン ガンバロン」はレッドバロン、マッハバロンに続く「バロンシリーズ3作目」だったらしい。いや、そりゃまあバロンはつくけど、前2作の雰囲気も面影もないぞ。ていうか、スーパーマンってタイトルにつけて問題なかったのか。たぶん、この時代はまだ大丈夫だったのだろうなあ。
1977年、やはりこの年を締めくくる作品と言えば「大鉄人
もちろん変形と言っても、いまのロボットと比較すれば極めて素朴な変形である。しかし当時の子供たちはビックリしたのだ。アニメじゃないのにこんなことができるなんて! と。それまでの特撮巨大ロボといえば「ジャイアントロボ」(1967年)を筆頭に、レッドバロン、マッハバロンと、あとはジャンボーグAくらいしかなかった。しかも合体に関しては「ウルトラセブン」(1967年)に登場したキングジョーが一応実現していたとは言え、アニメのような変形はさすがに無理だろう、という空気があった。それを大鉄人17は、特撮で変形をやって見せたのだ。
変形は飛行形態→要塞形態→戦闘形態(人型)へと変わるのだが、正直なところ当時から「え? この形で飛ぶのは無理じゃないか?」という思いはあった。あったのだが、そこは子供ながらに目をつぶった。いきなり完璧は無理だということくらい、子供にだって理解はできるしな。
第1話でいきなり主人公の三郎少年の両親と姉が殺されるというシリアスなストーリーは、前作のキョーダインがやたら明るかったことへの反動もあり興味を引いた。巨大コンピューター「ブレイン」が人類に反乱を起こすというアイデアは、手塚治虫氏の漫画「火の鳥 未来編」(1967年)などに源流を見ることができるが、当時の子供たちにとってありきたりなものではない。始まったときの期待値はかなり高かったように思う。
グラビトン(重力子)という言葉を覚えたのは大鉄人17のグラビトン砲である。もちろん、グラビトンが何なのかは理解できなかったが、まあ波動砲みたいなもんだろう的な解釈をしていたように思う。
敵のブレインロボも当初は巨大ローラーを持ったローラーロボット、風車の羽根のような姿で人型をしていないハリケーンロボットなど、いわゆる怪獣をロボットに置き換えただけではない、巨大ロボットとして一捻りある造形をした物が出てきた。それは強く虫けらの好奇心を刺激したのだが、視聴率は振るわなかったのだろう、だんだんとそういった特色は薄れて行く。
そして後半になるとあからさまなテコ入れとして、岩鬼が出て来るのだ。ドカベンの。何のことか意味がわからない、という方もおられるだろうが、水島新司氏の漫画「ドカベン」が1977年に実写映画化されている。そこに出てきた岩鬼正美役の俳優が、学ラン姿に葉っぱを咥えた岩鬼正美そのままの姿で、大鉄人17に新レギュラーとして登場するのだ。コメディ路線への切り替えである。しかし現代の映像作品を見慣れた方々ならわかるだろう、作品途中の中途半端な路線変更が良い結果を生むはずがない。虫けらは腹を立てて大鉄人17から離れて行った。
とりあえず「弟」の
現代から特撮の歴史を見ると、この大鉄人17は欠くべからざる偉大な1ピースなのだが、リアルタイムで観ていた子供としては、もうちょっと何とかならんかったものかと残念に思えてならない。まあ作詞:石森章太郎、作曲:渡辺宙明、歌唱:水木一郎の主題歌「オー!!大鉄人ワンセブン」は大好きな名曲なのだけれど。
この年の特撮は他に「ロボット110番」「冒険ファミリー ここは惑星0番地」「恐竜大戦争 アイゼンボーグ」があったのだそうな。この3本は観た記憶がまるでない。
この頃から思春期に近付いたのか、虫けらはだんだん特撮から離れて行く。だったらアニメからも離れて行くのが普通なのかも知れないが、そこはそれ、根っこが捻くれているのだ、アニメからはまだ当分離れない。ただ最近思うのは、いま放送されているような仮面ライダーシリーズがこの当時にあったら、たぶん特撮からも離れなかったのではないか。まあ、それは所詮ない物ねだりなのだろうけれどな。では次回。
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