私だけのヒーロー

サムライ・ビジョン

いま目の前に…

ああ…まさかこんな日が来るなんて…

大好きなあの人が…あのヒーローが!

いま目の前にいるだなんて!


(ブー…ブー…)


「携帯、鳴ってますよ。出なくていいんですか?」

「…」


この人はいつも優しい。

いつも笑顔を絶やさない。

だけど…2人きりの今だけは、何も言わずに鋭いオトナの目でこちらを見つめてくる。


「申し訳ないですよ…代わりに出ましょうか?」

返事を待つ必要はない。

今夜だけは、この人の所有権は…


「もしもしファイアーバードか? 東ギルバート2丁目のビルで火災が…って、聞いてるのかファイアーバード!」

「ファイアーバード? なんのことでしょう…」

「は!? 誰だお前! おい、ファイアーバードをどこへやった!」


(ブチッ…)


この人は水もしたたるイイ男…

ファイアー? とっくに消え失せたよ。

残っているのは「純白の羽」だけ…


「ファイアーバードさん。今日のところは、他のヒーローさんに任せましょうよ。それより…」

「…!」


ははは…いい反応じゃないの。

このフワフワの羽で、まずはピチピチのヒーロースーツの上から…


(ドンッドンッ!)


もう嗅ぎつかれたか…早いなぁ。


「このファイアーソード、ちょっとお借りしますね」


(ドンッ…バキッ!)


「そ〜れっ!」


こりゃすごい! さすがはヒーローウェポン…切れ味は抜群だね!

み〜んな細切れになっちゃった…


「んん! ぷはっ…おい! てめぇ俺の仲間に何しや…ぐは!」

「ダメですよファイアーバードさぁん…これから2人の夜が始まるっていうのに」


いけないいけない…つい殴っちゃった。


「痛かったですよね。ごめんなさい…だけど仕方がないんです」

彼はなんだか泣きそうな顔になっているけど、見慣れないこの表情もすごくそそられる。


「あなたのことはニュースで一度しか見たことがない。…だけど、間違いなくあなたに一目惚れしたんです」

可哀想なのは好きじゃないから、ベッドに縛りつけた彼を優しく抱きしめた。


「一目惚れって…お前…」

「水もしたたる純白の羽…」


もう目の前のことしか見えていない。

笑顔も泣き顔も、目に映る彼のすべてが今、手中に収まろうとしている。




が教えてあげますよ。この一晩で、いろいろなことを…」

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