吸血鬼を治療する研究者ハジャ

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 ハジャは研究者だ。


 しかし、変わり者の研究者だった。


 普通の人間ならしないだろうと言う事もする。


 そのため、変人のレッテルを貼られた研究者だった。


 しかしハジャにはとある目的があった、それは吸血鬼の完全なる根絶だ。







 この世界には、吸血鬼がいる。


 ある日突然あらわれた、それらは段々と数を増やしつつあった。


 吸血鬼は、人間の血をすって眷属にしてしまうやばい連中だ。


 専門的に説明すると長くなるから、分かりやすくはしょると、やばい。


 理性がおさえられて、本能が高ぶってしまうために、やつらが増えてしまうと社会秩序が乱れてしまうだろう。


 だから、ハジャは吸血鬼を根絶する事に決めたのだ。


 話しは変わるが、この世界にはかつて鬼という種族がいた。


 鬼は温厚で、人のよきパートナーだったらしい。


 しかし、優しすぎたため、絶滅してしまったとか。


 大昔に、とてもやばい病がはやった時、ひ弱な人間をなおすために、鬼は自分の血をわけあたえた。


 人間はそれで病を克服したが、そのかわりに鬼が弱ってしまった。それで、数を少なくしていったのだ。


 鬼族は、血の総量に応じてとても強い力をもっていた。


 だから、体格の大きなものが多かったという(生存するために、体が大きなものが生まれる遺伝子が残っていったのだろう)。


 しかし、献血などによって血を失った鬼たちはばたばたと倒れていったとか。


 ハジャは、まったくもったいない事をする!


 と思っていた。


 なんで、自分の血を倒れるまで人に分け与えるんだと。


 その血が後の世に残っていれば、さまざまな研究がはかどっていたにちがいないのに。








 ある日、ハジャは捕らえられた吸血鬼の血を採取して調べた。


 その吸血鬼は、鬼の血が色濃くでていた。


 人間の中にも鬼の血は混ざっているが、吸血鬼の何万分の一かしかない。


 原因は分からないが、体質の変化によって眠っていた血の力が呼び覚まされたのだろう。


 そして、鬼にならず、吸血鬼になる人間がでてきた。


 ハジャは、その事実を違う視点で考えた。


 人間の血を吸血鬼に輸血して、覚醒している鬼の血を薄める事にしたらどうなるか。


 試しにやってみる事にした。


 そしたら。


 吸血鬼は人間に戻っていった。


 被検体になったダッシュという人間は、さぞ大喜びしている事だろう。


 ハジャは、実験の成功を確信してうきうきだった。


 しかし人々からなげつけられたのは罵詈雑言だった。


「罪を犯した者をいまさら元に戻して何になる!


「嫌われている私達に、戻るべき場所などもうないのに!」


「そのまま殺してくれた方がよほどよかった!」


 その言葉を聞いたハジャは、好奇心のまま実験を進めたことを後悔した


 被検体であり、被害者であるはずのダッシュも引くほど泣き散らしていた。








 事態が落ち着いた後、ハジャは決意した。


 いたずらに混乱を起こさないために、特別な例をのぞいて、吸血鬼を治療しないと。


 多くの人命にかかわる事態が起きた場合にのみ、吸血鬼を治療すると決めた。


 ダッシュとは最後に仲直りして、別れた。


 ハジャはダッシュに「困った時は、力を貸す」といって、自分の研究に戻った。


 その研究は、長い間、日の目を見ないまま、続けられていった。


 しかし、数十年後。


 吸血鬼の罪に対する法律が定まった事で、再びハジャの研究が活用されるようになった。


 人々の理解と、吸血鬼に対する考えと接し方がまとまった時代だった。


 その研究のおかげで、吸血鬼たちは徐々に数を減らしていくようになった。



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吸血鬼を治療する研究者ハジャ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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