ヒーローはすぐそばに

瀬川

ヒーローはすぐそばに





 テレビの向こうで、君は戦っている。



 この世界は怪人に襲われていた。


 世界征服を目的として、手を替え品を替え、地球を自分のものにしようとする。

 何もしなかったら、たぶんすぐに地球は怪人に降伏していただろう。


 でもヒーローのおかげで、私達は平和に過ごせていた。

 ヒーローは五人。怪人が現れたことで力に目覚め、そして正義のために戦っている。

 その様子をテレビ中継するようになったのは、一体いつ頃だろうか。もう覚えていない。

 それぐらいヒーローと怪人の戦いが始まってから、長い時間が経っていた。



 怪人に押されつつも何とか倒す。

 しかし、怪人は奥の手として巨大化をした。

 こうなると周囲に被害を及ぼすため、早く倒さなければいけない。

 ヒーローだけど、世間の声も大事にしている。

 それはいいことでもあるが、逆に危ないこともあるから心配だ。



「……頑張れ」



 生中継の緊迫感は、いつまで経ってもなれない。

 絶対に勝つと信じていても、それでも心配になる。



「……勝て」



 その想いがテレビを通して伝わればいい。

 手を組んで祈っていると、ヒーローの必殺技であるビームが怪人に炸裂した。

 断末魔と共に、怪人の姿が消えていく。



『正義は必ず勝つ!』



 ヒーローの決めゼリフを聞きながら、安心して、ようやく体の力が抜けた。



「……良かった」



 ふうっ、と大きく息を吐く。

 いや、ゆっくりしている場合じゃない。



「よし」



 勢いよく立ち上がり、気合を入れるために頬を叩いた。



「美味しいもの、作ろう」



 今日は大好物のハンバーグにするか。

 これから帰ってくるだろうヒーローのために、地球のヒーローから私だけのヒーローに戻る君のために、今出来るのは腕によりをかけて料理を作る。


 いつもありがとうの気持ちを込めて。



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ヒーローはすぐそばに 瀬川 @segawa08

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