マイ・ヒーロー
徳田雄一
僕だけのヒーロー
「イタイッッ!」
「ドラゴンめ、お前は人類を滅ぼす危険な野郎だ!」
「死んで償え〜!」
僕はドラゴンとして産まれ、ドラゴンとはなんたるかを叩き込まれ生きてきた。
ドラゴンは人に優しくあれ。
ドラゴンは魔物に優しくあれ。
ドラゴンは最強であれ。
この3つの大事なことをドラゴンの里の長であるエンシェントドラゴンのおじいちゃんに教わった。だから僕は必死に、必死にドラゴンとして人間を守ろうと、ドラゴンとしてずっと強くあろうとしたのに、今は人間に恐れられる、殺すべき対象とされていた。
僕は今までなんのために生きてきたの?
そう思うほどに僕の心は、人間に傷つけられた翼以上に深く深く治らない傷をつけられた。
そして飛べなくなって数日経った頃、再び僕を討伐するために人間たち連合軍が僕の元へ訪れた。
僕はもう生きることを辞めようと、抵抗もせずただ殺されようと黙っていた時だった。僕の目の前に1人の男が立ち塞がった。
「お前ら、ドラゴンを敵として認識するのはおかしいぞ」
「なんだお前は!」
「ドラゴンは人間を滅ぼす厄介な魔物だろうが!」
口々にヤジが飛ばされてもなお、その人間は挫けることなく、むしろ激を飛ばして言った。
「ドラゴンの歴史を知らぬガキがほざくな!」
人間は、僕をかばいながら連合軍を殺して行った。ただ僕を守るために。この日から彼は僕にとってのヒーローになった。わたしをたすけてくれたヒーロー。強く美しく、そしてかっこよかった。
僕は感謝を告げようと、彼の背中を潰さないようにトントンと叩いた。
「ん?」
「あ、ありがとう」
「おう!」
ニコッといい笑顔を見せた人間に、僕はただ惚れた。
「お前は生きていてくれ。君のおかげで人間たちは守られているんだ」
「僕は、生きてていいの……?」
「あぁ、君は生きていなきゃいけない。君の傷ついた心を治せる訳じゃないが、俺が君を守ろう。だから君も俺を守ってくれ」
僕はただその人間の言葉に嬉しさが溢れて、その人間にだけ僕の秘密を明かした。
「お、おぉ?!」
「僕の名前は【神龍ゴッド】」
「ご、ゴッド。俺が夢を見た憧れのドラゴン……!」
「君にだけ僕本来の姿を見せるね」
僕は一族秘伝の擬人化の術で、人間の姿へと変わる。
「お、お前女なのか?!」
「うん。僕は女。そして僕は君の事が好き」
「俺は……」
これは僕の出会ったヒーローのお話。
僕だけのヒーローのお話。
マイ・ヒーロー 徳田雄一 @kumosaki
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