第1000世界 『R』
六五区 凡三
創始装生
第1話 再々
ただ黒い空間には小島が浮かんでいる。広さは・・・東京ドームくらいだろうか。
「ドームシティはあるんじゃない?」
島の中央にあるビルより大きい大樹の下で眠っていた少女が目を覚ました。いや最初から起きていたかもしれない
肩に軽くかかる程度の濃い紫の髪には左前頭部の辺りに白く、6つの氷柱が外を向いて、円上に並んでいるような模様のようになっている部分があった。そして同じ色の目をもった14歳くらいに見える少女だ。
しかし…それにしても…。いま考えていることを端的に言うと…とてもかわいらしい。いい意味で、人とは思えない見栄えだ
肌は適度に白く、だが存在そのものが透き通っているように見えた。また、背は平均よりやや低くいように見えるが、不思議と身体の各パーツのバランスが、あり得ない程完璧に整然としているように感じられる…
「一旦止まって、後はこっちで説明するから。ところで暗いかな…ちょっと待ってて」
彼女の指をならすと、それまで黒かった空間が白く、また明るくなっていく。壁全体が照明のようになっているのであろうか…少々目がチカチカする
そしてようやく、ここの全貌が明らかになった。とはいっても白い空間に草原が広がっているだけの島があるだけで、中央の大樹の他には何もないが…。また、この白い空間はどうやら円柱型のようで、天井らしきものは見当たらず、上にもただ白が存在している
「私が説明するって言ったよね」
声も幾分幼くこの少女の印象とマッチ・・・
「聞いてる?私は君達に言ってるんだけど。…まあいいや、まずは自己紹介、私は第6始祖神ナギサ・メトロン。ここ神界における6柱の最高神のうちの一柱だよ」
………………………………それで……?
「なに?終わったけど」
あまりにも短すぎる。これではそれ以上が読み取れない。そもそも説明するとは言っていたが、一体何を説明するのだろうか
「もっと情報はないのかってこと?贅沢だなぁ、うーん…じゃあもう『自己』については教えたから、神界の仕組みでも教えてあげるよ」
本当にあれで終わったのか…全く関係のない話題に移ってしまった
「まず神とは、私達始祖神を最高神としてその下に上位、中位、下位がいる。特に守らなきゃいけない掟とか義務とかはなくて、あの子達はそれぞれ好きなことをやってるよ、術の研究に神体の強化、あとは世界の管理とかも多いね」
そうなのか。ところで、世界の管理は趣味と言っても良いのだろうか…。まあ何気に知らなかったことだ、教えてくれると言うのなら有り難く頂戴するが
ところで、何故神々のことを〈あの子達〉と呼ぶのだ?
「え?そうは言っても、私の年となると…たしか一回75524091年だったかな」
『一回』というのは単位だろうか?聞いたことがない単位だ
「9999那由多を一度超えたって意味。それ以上増やすのが面倒になったから、わざわざ」
「それに神を創ったのも私達始祖神なんだよ?みんな子か孫みたいなもんだよ」
良く考えてみれば、当たり前か。全ての始まりを意味する《始祖神》の名を冠しているのだから。文字通り、神々の親とも言える存在なのだろう
「実際、私は8柱の神を生み出したよ」
…おや?思ったより数が少ない…
「私はそれよりも、自身の強化とか研究に集中したかったからね。その補佐としても活躍してもらったよ。まあとはいえずっと前に独立して、いまはそれぞれの好きなことをやってるかな」
そうか。何をやっているのか、少し気になるところではあるが、一先ずいまはいいだろう
他に情報はあるか?
「えー?もうないよ。逆に何か聞きたいことでもある?」
うーむ…例えばその樹ついてなどは…
「ああこれ?これは…なんだっけな」
…冗談であるよな?
「流石の私でも、今まで起きた事全てをすぐに思い出せる訳じゃないよ。でも覚えてはいるはず…。えーと…あ、そうそう5761兆年前ぐらいだっけ。割と最近」
とんでもない時間間隔だ。我々では全く見当もつかない過去だというのに
「全世界の中継地点として創ったんだよね、勝手に。だからここから直接どこにでも行けるよ」
勝手にというと…怒られたりしないのか?他の神にだとか…
「いや?『ええ…』って顔はされたけど、特に何も言われなかったな」
それはもうアウトなのでは…。むしろ始祖神の権威に逆らえなかっただけな気がしなくもない。実際の権力なんかは分からないが
「そんなに組織ばったものでもないよ、この神界は。まあこの木、直近は使ってなかった。ただの景観の一部」
そりゃあ、最高神が人間の世界だとかに赴くはずもないであろう…普通であれば。
…そしてそうであれば、この木は存在しなかっただろう
この無機質な空間で、特に新しい話題はなさそうだ。気になる事なども、現時点では残り1つのみ
最も根本的なもの。何故我々を生み出し…いや、集めて、何をさせようと言うのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます