だないつどなドナ…

3本6個目

始まり、裏〈人との生〉

第1話 再々

 ただ黒い空間には小島が浮かんでいる。広さは・・・東京ドームくらいだろうか。


「ドームシティはあるんじゃない?」


 島の中央にあるビルより大きい大樹の下で眠っていた少女が目を覚ました。

 肩に軽くかかる程度の濃い紫の髪には左前頭部の辺りに白く、6つの氷柱が外を向いて、円上に並んでいるような模様のようになっている部分があった。そして同じ色の目をもった14歳くらいに見える少女だ。

 しかし、それにしても…いま考えていることを端的に言うと…とてもかわいらしい。いい意味で、人とは思えない見栄えだ。

 肌は適度に白く、だが存在そのものが透き通っているように見えた。また、背は平均よりやや低くいように見えるが、不思議と身体の各パーツのバランスが、あり得ない程完璧に整然としているように感じられる…


「一旦止まって、後はこっちで説明するから。ところで暗いかな…?ちょっと待ってて、明るくするから」


 彼女のスナップに合わせて、それまで黒かった空間が白く、また明るくなっていく。壁全体が照明のようになっているのであろうか…

 そしてようやく、ここの全貌が明らかになった。とはいっても白い空間に草原が広がっているだけの島があるだけで、中央の大樹の他には何もないが…。また、この白い空間はどうやら円柱型のようで、天井らしきものは見当たらず、上には普通の空が存在している


「だから、私が説明するって言ったよね」


 声も幾分幼くこの少女の印象とマッチ・・・


「ねぇ聞いてる?私はに言ってるんだけど。まあいいや、まずは自己紹介・・・私は第6始祖神ナギサ・メトロン。ここ神界における6柱の最高神のうちの一柱だよ」


 なるほど…神であったか。それも最高神………………………………それで……?途中で止まってしまったが…


「なに?終わったけど」


 いや、あまりにも短すぎるだろう。これではそれ以上が読み取れない


「もっと情報はないのかってこと?うーん…じゃあもう『自己』については教えたから、神界の仕組みでも教えてあげるよ」


 本当にあれで終わったのか…


「まず神とは、私達始祖神を最高神としてその下に上位、中位、下位がいる。特に守らなきゃいけない掟とか義務とかはなくて、あの子達はそれぞれ好きなことをやってるよ、術の研究に神体の強化、あとは世界の管理とかも多いね」


 そうなのか。ところで、世界の管理は趣味と言っても良いのだろうか…。まあ何気に知らなかったことだ。ところでだが、何故神々のことを〈あの子達〉と呼ぶのだ?


「え?そうは言っても、私の年となると無量大数に片足突っ込んでるから・・・それに神を創ったのも私達始祖神なんだからね?」


 …良く考えてみれば、当たり前か。全ての始まりを意味する《始祖神》の名を冠しているのだから。神々の親とも言える存在なのだろう


「実際、私は8柱の神を生み出したよ」


 ほう…おや?思ったより数が少ない…


「私はそれよりも、自身の強化とか研究に集中したかったからね。その補佐としても活躍してもらったよ。ずっと前に独立して、いまはそれぞれの好きなことをやってるよ」


 そうであったか。何をやっているのか、少し気になるところではあるが、一先ずいまはいいだろう


 ところで他に情報はあるか?


「えー?もうないよ」


 もうないのか?例えばその木ついてなどは…


「ああこれ?これは…なんだっけな」


 …冗談であるよな?


「流石の私でも、今まで起きた事全てをすぐに思い出せる訳じゃないよ。でも覚えてはいるはず…。えーと…あ、そうそう5761兆年前ぐらいだっけ。割と最近」


 とんでもない時間間隔だ…。我々では全く見当もつかない過去だというのに…


「全世界の中継地点として創ったんだよね、勝手に。だからここから直接どこにでも行けるよ」


 それは…怒られたりしないのか?他の神にだとか…


「いや?『ええ…』って顔はされたけど、特に何も言われなかったよ」


 それはもうアウトなのでは…。むしろ始祖神に逆らえなかっただけな気がしなくもない。権力の濫用だ…


「まあ、直近は使ってないかな。ただの景観の一部になってる」


 そりゃあ、最高神が人間の世界だとかに赴くはずもないであろう…普通であれば。そしてそうであれば、この木は存在しなかっただろう…。我々の時は偶然気が向いたとかであろうな…


 あとは、特に新しい話題はなさそうだ。気になる事なども、現時点では残り1つのみ。

 そんなところで、初めから最も訊きたかったことを訊くが…我々を生み出した、もしくは集めた理由とは?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る