第12話

(なんであんな態度とっちゃったんだよ)


 晴翔と別れた後、俺はエレベーターの中で一人悶々とする。晴翔が今も槙野達と会っていると思ったら、腹の底から怒りがわいてきて、凄くムカついた。自分は優樹が好きで、晴翔の気持ちには応えられないくせに…


(勝手すぎるだろ俺。なんでだよ?中学の時はこんなこと全然なかったのに)

『マジで俺槙野達と会ってないから!俺が好きなの朱音だけだから!』


 しかも、マンションに入っていく俺を呼び止め晴翔が言った言葉に、俺は明らかに安心している。嬉しいと感じてしまっている。


「ただいま」

「おかえり朱音」

「にー!!」


 混乱する気持ちを振り払い家に入ると、玄関で母が、もう片言で話し、ちょこまか歩くようになった美緒に靴を履かせていた。


「お昼は食べてきたのよね」

「ああ、マックで食ってきた。どっか行くの?」

「これから美緒と児童館行ってくるんだけど、朱音は今日出かける?」

「いや、特に予定はない」

「にーもいく!!」

「美緒、児童館に来てる高校生なんていないから」

「やー!!」


 途端に美緒が、大声で泣き叫びながら暴れ出し、俺と母は必死になだめにかかる。


「みーお、ママと二人で行こう?ね?」

「ヤー!!ヤーダ!!にーも!!にーも!」

「じゃあ美緒、にいにと児童館じゃなくて公園行くか?」

「いくー!!」


 俺がそう言うと、美緒の泣きべそがあっという間に笑顔に変わった。


「いいの?朱音」

「ああいいよ、テスト終わってどうせ暇だし」

「ありがとう!!」

「着替えてくるからちょっと待ってて」


 家に一人でいると、また晴翔のことをグルグル考えてしまいそうだから丁度いい。俺は自分の部屋で制服を脱ぎ身支度をすると、美緒と母が待つ玄関に再び向かった。




 結局、晴翔への自分の想いが一体何なのか答えを出せないまま、普段通り日々は過ぎ去り、あっという間に夏休みに入った。優樹は当然バイトで忙しく付き合いが悪くなり、俺は自然と、晴翔と二人で過ごす日が多くなる。


 俺自身、前より晴翔を意識していることは自覚せざるおえなくなっていたけど、たまに優樹の笑顔が見れた時の、心も身体も甘く疼いてしまうような感覚はやっぱり特別で、だからこそ余計に自分で自分がわからなかった。そんな感情を晴翔に気づかれたくなくて、何食わぬ顔で一緒に過ごしているうちに、再び教室で毎日優樹に会える二学期が始まり、俺は一つの結論に至る。


 俺が恋しているのはやっぱり優樹だ。晴翔といると、自分を全部さらけ出すことができてすごく安心するけれど、恋愛感情とは違う。晴翔の好意に応えられないくせに、このまま自分を好きでいてほしい、側にいてほしいと願う自分に矛盾を感じながらも、一番長い二学期も終わり、再び優樹に毎日会えない冬休みが始まる。だけど、3人で変わらずにいられる、俺にとってだけ都合のいい日々は、突如として幕を閉じた。


「ちょっと遅いけど、3人で初詣行かね?」


 3学期開始を目前に控えた冬休み。バイトで忙しいと言っていた優樹から突然ラインがきて、俺達は久々に駅で待ち合わせし、有名な神社に出かけた。

 中学までは真冬でも、そんな薄着で大丈夫かよと思うような格好だったのに、久々に私服で会った優樹は、ブラックのスキニーパンツにパーカーとチェスターコートを合わせ、今までよりさらに垢抜けていた。そして、帰りに寄ったファミレスで、俺は、ずっと恐れていたことがついに現実になってしまったことを知ったのだ。


「実は俺さ、彼女できたんだよね」


 ドリンクバーのコーラを、やけに忙しなくごくごく飲んでいた優樹が、突然意を決するように俺らに告げた。その瞬間、俺は時が止まったように呆然として、なんの言葉も発することができなくなる。


「なんだよ優樹!会った時からずっとそわそわしてんなと思ったら、そういうことだったのかよ!」

「いや、二人に早く報告したくて誘ったのはいいんだけど、なんか言うタイミング上手く掴めなくてさあ」

「よかったじゃん!相手誰?前にいいなって言ってた子?」

「うん!」

「マジかよ!すげえじゃん!」


 晴翔と優樹の会話が全く頭の中に入ってこず、俺だけが、遠く離れた場所に座っているような感覚に陥る。俺は今、ちゃんと笑えているんだろうか?こういう時、友達ならなんて声をかけるのが正解?晴翔みたいに、気の利いたことを言って喜んであげなきゃいけないのに、もうこれ以上ここにいたくない。早くこの現実から逃れたい。


「よかったな…」


 話の流れは全く覚えていないけど、照れた表情で彼女のことを話す優樹に、俺が言えたのはその一言だけで、それは俺にとって、精一杯の虚勢だった。




「じゃあな!」

「おう」


 ただの地獄でしかなかった時間がようやく終わり、いつものように、優樹は自転車、俺と晴翔は駅から歩きで別れていく。


「嬉しそうにしやがって…」


 優樹の背中が小さくなっていくのを見送りながら、俺は吐き捨てるように呟いていた。


「いや、でもあいつずっと彼女欲しがってたじゃん?だからやっぱ祝ってやんねえと…」

「そんなの俺だってわかってんだよ!」

 思わず声を荒げると、晴翔が驚愕したように、目を見開いて俺を見ている。

「んだよその顔!」


 八つ当たりだとわかっていても乱暴な口調を止められない。だけど次の瞬間、自分の瞼から抑えられない雫が零れ落ちてきて、俺は晴翔の表情の意味を理解した。


「悪かったなみっともなくて!もういいからおまえ先帰ってて!」


 なんで晴翔には、こんな情け無い姿ばかり見せてしまうのか。居た堪れなくなって、晴翔を目の前から追い払おうとしたけど、晴翔は、俺の前から立ち去ってくれなかった。


「…好きな子泣いてるのに、一人になんてできない」

「なんだよそれ?じゃあおまえが俺のこと慰めてくれるの?今俺失恋したばかりだからチャンスだぜ。同情するフリして、本当は優樹に彼女できたこと喜んでるんだろ?」


 タガが外れたように、最低な言葉がとめどなく溢れ出す。すると突然、晴翔が俺の腕を掴み、強引にひっぱり歩き始めた。


「おい、どこ行くんだよ!」

「うち、今日母親いないから」


 振り返りもせずそう言う晴翔に、こいつマジかよと思ったけど、その手を振り払う気力もなかった。


(もう、全部どうでもいい)


 歩かされるまま、誰もいない晴翔の家にノコノコと付いていき、そのまま当然のように、晴翔の部屋のベッドに押し倒される。


「俺は、朱音のこと好きだから」


 晴翔は俺を見下ろし、真剣な表情で言った。


「知ってる、何回も聞いた」

「俺は、朱音と付き合いたい」


 これも何回も聞いた言葉。その度に断って、それでも晴翔は俺の側にいたいと言った。俺はどうあがいても男しか好きになれない。でも、彼女ができた優樹が俺を好きになることはない。だったらもう俺は、晴翔の好きにされていいじゃないか?たとえ晴翔が、いつかやっぱり女がいいと気づいて離れてしまう時がくるとしても、今この空虚感を埋めてもらえるなら…


「いいよ、付き合おう」

「本当に?」


 こんな強引に部屋に連れ込んどいて、縋るような目で聞いてくるから、俺はつい笑ってしまいながら頷いた。途端に、晴翔の唇が俺の唇に覆い被さってきて、今までの中で一番長いキスをされる。晴翔とキスするのはこれで3回目だ。そのたびに殴ったり怒鳴ったりしてきたからか、晴翔は時折唇を離し、確認するように俺を見てくる。


 何の抵抗もせず、流されるままキスに応える俺に安心したのか、晴翔は俺の唇をさらに深く啄ばみ始め、自然と開いてしまう唇の間から、晴翔の舌が入ってきた。本当に慣れてるなこいつと、余計な考えが頭を掠めたけど、絡み合う舌に刺激され疼きだす性的な快感は、感情や思考なんて簡単に奪いさっていく。

 初めての感覚に翻弄され、夢中で互いの唇を貪り息も切れ切れになっていると、突然晴翔が、辛そうに顔を歪め無理やり俺から離れて言った。


「ちょっと俺、トイレ行ってくるわ」

「…は?」

「今日は俺やんねーから!!俺、やれりゃいいだけの男じゃねーから!!」


 それだけ言うと、晴翔は逃げるように部屋から立ち去っていく。狭いうちだし、同じ男だし、晴翔がトイレで何をしてるのかなんてバレバレだ。


「ふざけんなよ、反応してるのおまえだけじゃねえっつうの」


 中途半端に放置され、この体の熱どうしてくれるんだよと思ったけど、なんだかしまいにはこの状況に笑えてきた。


『好きじゃなくてもいいって、結局俺がお前好きじゃなくてもやれりゃいいってことだろうが!』


 晴翔はきっと、俺が谷口と別れた日に言った言葉を気にしている。


「無理してんじゃねーよ」


 中々トイレから帰ってこない晴翔に文句を言いながらも、俺は、晴翔が側にいてくれたおかげで自分が救われているのを自覚していた。あの手の早い晴翔が、本能のまま突き進まず途中で止めたのは、それだけ俺の気持ちを大事にしようとしてくれているということ…


『朱音!』


 晴翔がいなくなった部屋で、不意に思い出の中の優樹の声が聞こえてくる。

 陸上部の練習中、俺を見つけると笑顔で手を振ってくれた優樹。優樹への恋心を自覚してからは、短パンとランニングから見える健康的に日に焼けた肌や、時折ランニングの裾で汗を拭い見える腹や臍にドキドキしていた。同じクラスになってからは、毎日教室で会えるのが嬉しくて、優樹と同じ高校へ行くために必死に勉強を頑張った。優樹の存在は、やっぱり俺の中ですごく大きくて、俺の初恋で…。


「朱音?」


 ようやくトイレから帰ってきた晴翔が、ベッドで仰向けに寝転んだまま目元を腕で隠し、どうしても溢れてしまう涙を拭っている俺に近づいてきた。


「わるい晴翔、俺、またお前利用しようとしてた…」


 謝る俺の髪を、晴翔は信じられないくらい優しく撫でてくる。


「いいよ、利用していい。俺は、朱音と付き合えるだけで幸せだたら…」

「でもそれじゃあ…」

「いいの!一回付き合うって言ったんだから取り消しとか無理だから!」


 途端に晴翔は俺の腕を額からどかし、必死な形相で真っ直ぐ俺を見つめる。


「俺も利用してんだよ、朱音が失恋した痛みにつけこんでるの。だから、谷口の時みたいに、俺に罪悪感なんて抱かなくていい。俺はもう、朱音離す気ないから」


 強引で、嘘偽りのない俺を求める晴翔の言葉は、フラれたばかりの今の俺を陥落させるのに十分すぎるほど甘く響いた。俺は、晴翔の背中に腕を回し、その耳元に唇を近づけ返事をする。


「わかったよ…」


 晴翔の唾を飲み込む音と昂りが、再び体を密着させたことで痛いほど伝わってきたけど、晴翔はその日、俺に手を出すことはなかった。狭いベッドに二人で横たわり、中々涙を止めることができない俺の背中を、ずっと撫で続けてくれた。





「朱音喉かわかない?なんか飲む?」


 週末金曜日の学校帰り、美緒のおかげで騒々しい我が家と違い、基本母親が仕事でいない、まるで一人暮らしのように静かな晴翔の部屋で漫画を読んで過ごしていたら、晴翔がおもむろに聞いてきた。


「いや、別にいい」


 優樹に彼女ができたと告げられた日から、晴翔と俺の新たな関係が始まり、付き合って一ヵ月が経とうとしていたけど、二人ですることは今までとそんなに変わらない。普段通り一緒に帰って、たまにお互いの家に行って、土日二人で映画見に行ったり、カラオケ行ったり、友達だった時とほとんど同じ。

 違うのは…


「じゃあキスしていい?」

「なんのじゃあだよ」


 思わず笑いながら応えると、晴翔がゆっくり顔を近づけてきて唇が触れ合う。すっかり晴翔とのキスに慣れてしまった俺は、その唇から下半身にまで伝わる、むず痒いジリジリとした快楽を甘んじて受け入れる。


 晴翔はあれからキス以上はしてこない。今もまた、舌は入れてないけれど、決して淡白ではないキスの途中で立ち上がり、一人トイレで抜きに行こうとする。

 もう二月に入ったというのに、今日は朝から雪が降るかもしれないと天気予報で言っていて、そのせいか、晴翔の身体が俺から離れていった途端、体感温度が一気に下がったように感じて寂しくなった。


「なあ」


 部屋から出て行こうとするのを呼び止め、何?と振り向く晴翔に、言いたい言葉が見つからない。自分でも戸惑いながら、ふと窓に目を向けると、空からチラチラと雪が降ってきていた。


「見て、雪だ」

「あー、本当だ」


 晴翔は窓際にあるベッドの上に戻ってきて、二人並んで空を眺める。


「子供の頃って雪降るとワクワクしたよな」

「したした」

「お前のお母さん、トラック大丈夫かな?」

「昨日から予報で言ってたし、ちゃんと雪の用意してると思うぜ」


 二人で雪を見ながらとりとめのないことを話してたら、晴翔がまた、俺の唇に軽くキスをしてくる。


「ちょっとごめん、俺行ってくるわ」


 だけどすぐに俺から離れ、再び立ち上がろうとしたから、俺は、晴翔の腕を掴み、明らかに盛り上がっているスエットパンツの下を見ながら言った。


「それ、俺が抜いてあげようか?」

「え?!」


 晴翔はつんざくような大声をあげて、一瞬にして空気が変わる。


「いらないなら別にいい!」


 言った後強烈に恥ずかしくなった俺は、すぐさま自分の言葉を取り消したけど、晴翔は俺の肩を掴み、目の前で屈み込んだ。


「いらなくない!!本当にいいの?」


 俺が頷くと、マジで嬉しい!と言いながら抱きしめてくる。

 晴翔は、キスまでで止めて一人で抜きにいくのを、俺のためだと思ってるみたいだけど、俺だって晴翔と同じ男だ。何度も晴翔とキスを重ねていくうちに、もっと先までしたい、辛そうな晴翔のそれを、俺が楽にしてやりたいという焦れったさを感じるようになっていた。

 正直その感情が恋なのか、ただ生理的に欲情してしまっているだけなのかはわからないけれど、とにかく今晴翔に、俺から離れていってほしくなかった。


「直接触って抜いたほうが気持ちいいよな」


 どう見てもきつそうな晴翔の下半身に手を伸ばしたら、晴翔が異様に狼狽する。


「ちょっ!どうしたの朱音?大胆すぎるだろ!ていうか朱音も自分でやったこととかあるの」

「当たり前だろうが!おまえ俺にどんなイメージ持ってんだよ!」


 俺がそう言うと、晴翔は伺うように俺を見つめ聞いてきた。


「あのさ、朱音はどんなこと想像して一人でするの?」

「はあ?なんでそんなことまで話さなきゃいけねんだよ!」

「俺は朱音と付き合う前から、中学生の頃からずっとずっと、朱音とすること想像してやってた。朱音は?少しでも、俺のこと思いうかべた時ある?」

「…!」


 晴翔のストレートな言葉に顔が熱くなる。なんでこいつは、本人に向かってこんなことを言えてしまうのか?

 中学生の時、俺のオカズは常に優樹だった。最近晴翔とキスをするようになってからは、その続きを想像して抜くことの方が多くなっていたけど、晴翔を目の前にして、それを言うのは抵抗がある。


「ないの?」

「…ねえよ」

「優樹のことは?」

「…!」


 意地をはって否定したら、今度は突然優樹の名前を出されて、俺は動揺した。何も答えられず黙りこむ俺の反応を肯定と受け取ったのだろう。


「思い浮かべてるんだ」


 晴翔は苦しげな表情でそう呟き、ゆっくりと俺から離れていく。


「ごめん朱音、俺、ダメだったわ…」

「何が?やっぱ男は無理?」


 優樹の名前出したり、ダメだと言いだしたり、晴翔の言動全てにムカついて喧嘩腰で聞く俺に、晴翔は力なく首を振る。


「違う。俺は朱音だから好きなの。男とか女とか俺には全然関係ない。そうじゃなくて、俺、朱音が優樹好きでも、付き合えるだけで幸せだって、利用していいって言った…だけどダメだった、やっぱり俺辛い」


 息が、止まりそうになった。

 晴翔は、俺の気持ちを優先して、ずっとキス以上はしてこなかった。その状況がどれだけ辛いか、同じ男だからこそ十分すぎるほどわかっていたのに、俺は、晴翔なら俺が何しても、何を言っても許してくれると甘えきってしまっていたのだ。


(でも、今更なんて言えばいいんだよ、俺も最近はおまえ思いうかべて抜いてるなんて言えるわけ…)

「別れよう」

「え?」


 一瞬、自分の耳を疑った。別れようと、晴翔が俺に言ったんだろうか?


「俺、もう朱音と一緒にいれない」

「それって…」

「風呂でシャワー浴びて抜いてくるから、その間に朱音うちから出てって、俺、優樹のこと思い浮かべてる朱音とできるほど心広くねえから」


 刺々しい声で放たれる晴翔の言葉全部が痛い。俺は何度こんなふうに人を傷つければ気がすむんだろう。


「ごめん晴翔、俺…」

「謝らなくていいから!今すぐここから出てけよ!!」


 それは、幼稚園の頃からの幼馴染である晴翔に、初めて言われた拒絶の言葉だった。ショックで動けずにいる俺を涙目で睨みつけ、晴翔は再び俺を拒絶する。


「早く行けよ!俺これ以上朱音に嫌なこと言いたくないし、無理矢理酷いことも絶対したくない!だから早く出てけ!」


 大声で叫ぶように怒鳴ると、晴翔は自ら部屋を出て行き、風呂と洗面所がある脱衣所のドアを乱暴に閉め鍵をかけてしまった。俺はなすすべもなくベッドに座りこんだまま、間もなくシャワーの音が聴こえてきたドアを呆然と見つめる。

 こんなにも激しく、晴翔に怒りをぶつけられたことは今までに一度もない。どうしらいいのか本当にわからなくて、俺は脱衣所の前で晴翔の名前を呼ぶ。


「晴翔開けて!誤解だから!俺今優樹のこと思い浮かべてない!晴翔!」


 中からはシャワーの水音だけが響きわたり、晴翔は何も答えない。俺の言葉を聞こうともしてくれない。


(今はきっと、何を言ってもダメだ)

「また来るから」


 諦めるようにそう告げて、俺は言われた通り、晴翔の家から出て行く。でも、この時の俺は、ちゃんと話し合えばすぐに晴翔と仲直りできると思っていた。

 あんなにも自分に夢中だった晴翔が、俺から離れていくわけがないと、俺は傲慢にも高を括っていたのだ。














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