第14話 挫折と未来

「はぁ…」


 完敗だー…惨敗だー…


 綺麗で、落ち着いていて、見かけるとつい振り返って見てしまう、魅力ある人だった。

 非の打ち所がない。

 あぁ…やっぱりタイミングが悪い。

 私は結局、で終わる。

 仕方がないね…。


「うぅ…」


 大きな声を出したい気分だが、我慢する。

 私は、敦音あつと清瀬きよせさんとの食事を終えてから別れた。

 今はゲームセンターにいる。

 クレーンゲームや音ゲーム、太鼓のゲームを中心に遊ぶ。

 ストレス発散の為に来ている。

 あとは落ち込んだ時やご褒美の時もある。

 どんな心境でも、スッキリ出来るから止められない。

 ゲームをやらずとも、眺めるだけでも満足する。

 でも今は、ついさっき、2人の仲を目の当たりにして、ショックを一方的に受けて、それを忘れたくて来た。


「2度も、強制的に、フラれるなんて…」


 中学の時からだ。

 片想いが、全く実らない。

 私が好きになる前に、相手は他の子を好きになっているか付き合っているかのどちらか。

 本当に、ついていない。

 一生、独身、なのかな?

 なんて、自分の人生を疑ってしまう。

 自信喪失。

 色違いのくまのぬいぐるみが景品のクレーンゲームの前で、項垂れた。

 こんなに、上手くいかないなんて…。


「恋って…難しい…」



 爽やかな、心地よい風が、そよそよと吹く。

 その風に委ねているかのように、清瀬さんの艶やかな髪がふわっと靡く。

 その風に乗って、シャンプーの優しい香りが鼻孔を擽る。

 隣にいる、年上の、女性。

 どういうわけか、年齢は2つ違う。

 でも学年は1つ違う。

 それでも、年月の差も歳の差も関係ない。

 フラれて落ち込んでいたあの日に出逢った事から始まった。

 大学の先輩で、同じアパートの隣の隣のご近所さん。

 素敵な女性に、出逢えたな。

 またとない機会、もう2度とないだろう。


「どうしたの?」

「えっ?」


 間抜けな声が出た。

 清瀬さんはポカンとしている。


「さっきからずっと私のこと…」

「あっ」


 ずっと俺は清瀬さんのことを見ていたようだ。

 気持ち悪いな、俺。ごめんなさい。

 一方の清瀬さんは照れていた。


「すみませんでした」

「良いわよ、別に…」


 謝ったのに伝わっていないのか、そっぽを向く清瀬さん。


「さっさと帰ろう!」


 耐えられなかったのか、清瀬さんは早歩きで、どんどん先に行ってしまった。


「あぁ、清瀬さん待って!」


 慌てて俺は清瀬さんを追った。


 あの人を、大事にしたい。

 ずっと一緒にー…。


 俺の心は、決まっていた。

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