第14話 挫折と未来
「はぁ…」
完敗だー…惨敗だー…
綺麗で、落ち着いていて、見かけるとつい振り返って見てしまう、魅力ある人だった。
非の打ち所がない。
あぁ…やっぱりタイミングが悪い。
私は結局、良い友達で終わる。
仕方がないね…。
「うぅ…」
大きな声を出したい気分だが、我慢する。
私は、
今はゲームセンターにいる。
クレーンゲームや音ゲーム、太鼓のゲームを中心に遊ぶ。
ストレス発散の為に来ている。
あとは落ち込んだ時やご褒美の時もある。
どんな心境でも、スッキリ出来るから止められない。
ゲームをやらずとも、眺めるだけでも満足する。
でも今は、ついさっき、2人の仲を目の当たりにして、ショックを一方的に受けて、それを忘れたくて来た。
「2度も、強制的に、フラれるなんて…」
中学の時からだ。
片想いが、全く実らない。
私が好きになる前に、相手は他の子を好きになっているか付き合っているかのどちらか。
本当に、ついていない。
一生、独身、なのかな?
なんて、自分の人生を疑ってしまう。
自信喪失。
色違いのくまのぬいぐるみが景品のクレーンゲームの前で、項垂れた。
こんなに、上手くいかないなんて…。
「恋って…難しい…」
※
爽やかな、心地よい風が、そよそよと吹く。
その風に委ねているかのように、清瀬さんの艶やかな髪がふわっと靡く。
その風に乗って、シャンプーの優しい香りが鼻孔を擽る。
隣にいる、年上の、女性。
どういうわけか、年齢は2つ違う。
でも学年は1つ違う。
それでも、年月の差も歳の差も関係ない。
フラれて落ち込んでいたあの日に出逢った事から始まった。
大学の先輩で、同じアパートの隣の隣のご近所さん。
素敵な女性に、出逢えたな。
またとない機会、もう2度とないだろう。
「どうしたの?」
「えっ?」
間抜けな声が出た。
清瀬さんはポカンとしている。
「さっきからずっと私のこと…」
「あっ」
ずっと俺は清瀬さんのことを見ていたようだ。
気持ち悪いな、俺。ごめんなさい。
一方の清瀬さんは照れていた。
「すみませんでした」
「良いわよ、別に…」
謝ったのに伝わっていないのか、そっぽを向く清瀬さん。
「さっさと帰ろう!」
耐えられなかったのか、清瀬さんは早歩きで、どんどん先に行ってしまった。
「あぁ、清瀬さん待って!」
慌てて俺は清瀬さんを追った。
あの人を、大事にしたい。
ずっと一緒にー…。
俺の心は、決まっていた。
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