俺's ランド ~俺は明日から世界創造主~

星色輝吏っ💤

第1話 真っ白な世界

 今日学校で、


「死ね」


 とド直球に言われた。





 俺の好き『』はずの女の子に、学校の廊下で、他の人にも聞こえる声で言われた。





 俺が告白したとかじゃない。俺は別に何もしていないのに、彼女は「ちょっときて」と廊下に俺を誘い、言ったのだ。




 俺は、その理由の見当が全くつかない。




 俺は彼女のことを好きではなくなった。嫌いにはなっていないかもしれないが、少なくとも好きではない。


 というか俺は、人間という存在が嫌いになった。もちろんその中に俺も入る。その中でも特に女子が嫌いになった。でも、男子だって汗臭いし、気持ち悪いし。もう、人間不信みたいなものだ。





 かといって、人間と関わらないという選択肢は俺にはない。





 だってもうそれはただの引きこもりだから。いや引きこもるのが嫌と言うわけじゃない。圧倒的インドア派だし、できるならそうしたい。でも、引きこもったら誰かに怒られる。もし怒られなくても、絶対何か言われる。俺はそれが嫌なんだ。



「はあ……」


 同時に、人間の住むこの世界が嫌いになった。





 俺は虫が嫌いだ。だから虫だけ別の世界へ連れてゆかれたりしないかなあくらいに思っていたんだけれど、人間もそれくらい嫌いになった今、この世界ごとなくなってしまえばいいじゃないか、って思うようになった。まあ漫画の続きが読めないってのは悲しいが、俺という存在もなくなっちまえば関係ない。





 でもどうやってこの世界を失くす?





 ――自由を謳っていても、人と人とが関わる限り、必ず対立する。





 対立しないで妥協するというのも、不自由である。




 地位や権力を糧にして逆らえない状況を作ったり、経験の差だけで上下関係を作られたり。誰かを敬ったり、慕ったり、崇めたりしている時点で、この世界は安泰ではない。




 誰かが救いを求めている現状をスルーして、笑顔で楽しくやっている奴らは真っ赤な悪役だ。





 人間みんなが衝突しあって、どこかで不平等を生んでいる。みんながみんな妥協しあって、みんながみんな悪役になる。それがこの地球という世界だ。





 そんなどうでもいい世界を変える――否、失くすことができたら、どんなに喜ばしいことだろうか。







 ……と。


 俺はそんなことを考えながら、帰り道をとぼとぼと歩いていた。



「さっきの、何だったんだ……」




『さっきの』とは、学校での『死ね』のこと。




 俺は怒りに近い何かもやもやした感情をぶつけるべく、わざと大きな足音を立てて歩いていた。




「疲れた……」




 今日は普段と比べて格段と疲れていた。その理由のも、さっきの『死ね』という言葉にある。まあ体育で長距離走ったからってのもあるが、『死ね』と言われた後、それを聞いた生徒およそ二十人くらいに詰め寄られたのだ。


「なんで『死ね』とか言われてんの?」とか、


「元気出せよ」とか、


「どんまいどんまい」とか。



 ほぼ全員が、俺が告白して振られたんだと思ってる奴の発言だった。





 これにはめっちゃイラっとキたね。精神的疲労がかなりキた。殺意すら湧いた。殺す勇気なんてモンないけど。




「はあ…………」




 今までにないくらい盛大なため息をついて、俺はふらふらと歩いた。



 ……歩き慣れた道だ。精神的にキている俺の思考はほとんど働いていなかったが、それでも体は自然と俺の家へと向かっていた。



 そして……いつもよりも帰り道が短く感じたが、気づけば俺は家のドアをがちゃりと開けて中に入っていた。




「ただいま」





 ――反応がない。俺の母さんはいるはずなのに。








「お~い」







 ――呼びかけにも返答がない。








 俺は靴を汚く脱ぎ捨て、リビングへ入ろうとドアノブに手を伸ばす。すると中から音が聞こえた。



 ――がちゃん、っと。




「なんだ、普通にいるじゃん」




 最近、俺の母は耳が遠くなってきているから、聞こえなかったのかもしれない。



 がらっ。俺はドアを開け、中へ足を踏み入れ――




「ただい――――って…………は?」





 ――そこには何も見えなかった。



 ドアの向こうは、真っ白な世界だったのだ。





 俺はドアを開けると同時に、もうその中に





 ドアの向こうに真っ白な壁があったわけじゃない。があったのだ。だから俺は勢い余って、の方へ転倒する。





 ――バタン!



「え⁉」





 俺が白い世界に入っていくと、なぜかドアは閉まり、俺は白い世界へ閉じ込められ――



「――って、は⁉ 何……」







 ――――否、完全に白い世界に






 多分この表現が一番正しい。俺は瞬く間に奥へ奥へと体躯を持っていかれる。





 ドアとの距離がどんどん遠ざかる。







 不思議と自分の体が軽く感じて、どんどん小さくなっていくようにも感じて……ドアも認識できないくらい遠くまで離れて…………プツン。




 急に機械の電源が途切れたかのように、目の前の世界が切り変わった。




 ――いや、でも依然と真っ白な世界のままだ。目に見えているものも、耳に聞こえているものも、匂いも何もかもが同じなのに、第六感のようなものに働きかけられて、やっと此処が別の世界なのだとわかった。




「――来てしまいましたか、人間」





 突如、声が聞こえた。だが目は見えない。体もうまく動かせない。







「あなた、馬鹿ですか? あなたの家は300m先を曲がったところですよ。外観が似てるからって入ってきちゃダメですよ。まず表札確認しましょうよ」








 ……誰だろう。体も動かせないし、全くわからない。









「あ、あなた今、結構ヤバい状態なんですよ。一回粒子レベルまで分解されてますから。そっから戻すのに時間がかかるんです。なんとかあとちょっとで完全に戻りそうですけど……よっと。はい、できましたよ、っと」









 誰だか分からないが、奴がそういった直後、俺には視覚、聴覚などすべての感覚が舞い戻った。










「誰だよお前……?」









 俺の目の前にいた彼女(?)は――羽の生えた天使のようだった。








「私の名前はレミイです。神様です」



「神様だと…………?」

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