僕の前世は猫だった

星色輝吏っ💤

プロローグ

 ガンガンッ、コツコツ。


 ――ガシャンッ!


 金槌かなづちが鉄製の机に強打されて……粉砕ふんさいする音が鳴り響く。


 彼は激怒していた。


「なんでっ――なんで今度は人間なんだ!? 醜い下等生物めっ!!」


 人間の手足がある。


 でも彼は人間が嫌いだ。


 そのため、彼はすぐに自殺をはかった。


 人間の真似で武器を作って、それを使えないかと試作したが、うまくいかなかった。


 仕方がないので、彼は腹部にその破片を刺してみる。


 ……出血した。突起物を刺したから、当然だ。


 しかし、人間はそんなに簡単に死なない。激痛を味わうだけだ。


「くそう!! 人間の癖に! 死ねえ! 死んでやるぅ!」


 ガタンッ! ドタバタ……ガシャン。


 彼の声を聴いて、奥から、騒音を立てながら見覚えのあるおばさんが現れた。


「うるさいんだよ、あんた。


 道で倒れてたから無償で泊めてやってんのに。


 私はあんたの命の恩人、分かる?


 身の程を弁えなさい」


「うるさ〰〰いっ! この僕が人間の施しを受ける義理はない!」


「ならさっさと出てけっ!」


 ……追い出された。


 大声で怒鳴られ、突き飛ばされた。腹の傷がずきずきと痛む。


「くっ…………ここどこだ?」


 未知の場所だった。


 彼が外出したのは、これが初めてだ。


 ――否、人間になってから外出するのは初めてだ。


 というのも、彼は先程までスズメだった。それもかなり巨大な。


 雀から人間に転生したのだ。


 でも雀が最初ではない。


 初めて転生したのは、彼が元の世界で死んだとき。


 そうだ。彼は元の世界では……前世では……――




 ――――――猫だった。

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