追放ですか?こんな可愛い私を?
plutoniumプルトニウム
第1話
「話があるんだ。リニャーサ。」
かしこまった顔をした公爵令息のムローラは、私に対してそう言った。
私は、すぐに嫌な予感を感じたが、口には出さず、ムローラについていった。
「話とは何ですの?」
すると、ムローラは咳払いをした。どうやら、近くに執事がいるのが気にくわなかったようだ。
「すまない。そこの女、僕らはこれから大事な話をする。例え執事であろうと、聞かせたくは無い。申し訳ないが、この部屋から出ていってくれないか?今日はここは掃除しなくていい。」
そういうと、あわただしく執事の女の人は出ていった。
「すまない。さぁ、腰をすえてゆっくり話そう。と、言いたいところだが、愉快な話でもないから、手っ取り早く終わらせたい。」
「それで……話とは……」
ムローラは、一瞬ためらったが、ふぅっとため息をして、話し出した。
「今後のことだ。今、婚約をして、来月には式を挙げる予定であるな。」
私は、口に出すまでもなく、うん、と、頷いた。
「しかし、僕は反対したい。式を挙げることというか、これから、二人で共に生活していくことに…反対したい。」
私は、少し心が揺らいだが、すぐに正気を取り戻した。まぁ、そんなところであろう。嫌な予感は当たっていたのだな。
「すぐにとは言わないが、この家から出ていってほしい。」
「というか、まず、何故ですか?式を挙げることや、これから二人で一緒に生活していくことに反対する理由を、言ってもらえますか?」
ムローラは、また一瞬ためらったが、またため息をして話し出した。
「正直に言う。もう、僕は君に愛を感じなくなった。そんな言葉は使いたくないけど、その言葉が、一番近い言葉なんだ。今の僕の心を表すのに。はぐらかして言うこともできるが、それは納得いかないと思って、はっきりと言わせてもらう。」
ムローラは、さらに話を止めることなく話始めた。
「だが、聞いてくれ。別に、端からこうやって君を陥れるために告白したのではない。付き合ったのではない。遊ぶために告白したのではない。付き合ったのではない。それだけは、頭に入れておいてほしい。何なら今も、別に嫌いではない。だけど、もう愛を感じないのだ。」
「まだ会って間もない頃、僕は君が好きでいとおしくてたまらなかった。だが、付き合い始めて、年月が経っていくにつれ、愛が薄れていったのだ。つまり、#分からなかったのだ。__・__#許してくれ。」
聞くと、頑張って言い訳を並べ、どうにか許しをこいて、すこやかに婚約破棄をしようとしているように見える。実際、そうなのだろうが。
「ならば、最後に、もうひとつ質問をして良いですか?」
「何だ?」
「何故、そんなに焦った様子なのですか?何故、そんなに早く私を追放したいのですか?」
その言葉を放った瞬間、ムローラは完全に息を飲み込んで、話が止まった。さっきまでの勢いが、衰えたのだ。
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