招かれざる獣

あーく

招かれざる獣

「目を開けていいよ」


目を開けると、カゴに入れられた小さな魔物が私の目に飛び込んできた。


今日は私の誕生日。


前から飼いたいと言っていた魔物をパパが買ってきてくれたの。


小さくてふわふわしていて、それでいておとなしいからペットに飼う人が多いんだって。


確か「あるみらーじ」っていう種族なんだって。


名前を付けないと。


え〜と……丸々としてるからマルがいいな。


それからは私とマルはいつも一緒。


ご飯を食べるときも、一緒に遊ぶときも、ずーっと一緒。


あなたはもう私の家族よ。




数日が経ったある日、なにやら村が騒がしい。


パパと村の人達が何か話してるみたい。


「ちょっと聞いてよあんた!私の畑が荒らされてるんだよ!どうにかしておくれ!」


「わかりました。私が犯人を突き止めて差し上げましょう」


みんなの畑が荒らされてるんだって。


怖いね。


でも大丈夫。


パパは魔物を退治する仕事をしているもん。


パパに任せて。


マルは私たちが守ってあげるから。




最近、マルの姿が見つからない。


マル、どこ行っちゃったんだろう……。


まさか、パパが言ってた「きめら」っていう魔物に食べられたんじゃ……。


でも、パパは仲間のもとに帰っちゃったって言ってたから、きっと生きて帰って来るよね……。


マル、会いたいよ、マル……。







――これはとんでもないものを目撃してしまった。


畑を探す犯人を見つけると言って畑を見張っては見たが、あんな魔物がこの村に侵入してきたとは――


四足歩行とはいえ、頭が俺の胸の高さまであるぞ――


あれは「キメラ」だな。


複数の獣がつぎはぎのようになっているから一目でわかる。


あの鋭い爪とキバ――あそこまで大きくなったということは、さぞ多くの魔物を狩ってきたことだろう。


――まてよ?


爪とキバ――あれは肉食か?


とすると、あいつが畑を荒らすとは考えにくい。


さしずめ草食獣の匂いを追ってきた、といったところだろう。


畑を荒らしたのはその草食獣で、それを狙っているキメラは無実――


――いや、まさかな。


確かにアルミラージも草食だ。


しかし、アルミラージを持ち込んだのも最近の事だ。


畑が荒らされた時期を考えると辻褄が合ってしまう――


……畜生……娘になんて説明すれば……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

招かれざる獣 あーく @arcsin1203

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説