怖い話

春夕は雨

話す①


トラウマなんです、不登校のことが。

昔、特に理由もなく不登校になった時期がありました。学校には行かず、家で本を読んだり、学校に行ったとしても誰にも会わない授業時間にこっそり保健室に通ってたり。そんな時期があったんです。教室にはほとんど行けませんでした。

でも、教室にちゃんと行かなくちゃって気持ちはちゃんとありました。だってみんな「教室においで」って言うから。うちのクラスは、クラスメイトのお誕生日にみんなでメッセージカードを書く習慣があったんです。そこに「心配だよ、教室で待ってるね」「いつでもいいから戻ってきてね」って書いてありました。善意なのは分かってます。でも、既に教室に行くことが普通じゃなくなった私は「教室に行くことが正しい」という事実に絶望しました。そして、あの教室には、教室に行くことが正義だと思っている人しかいなんだってことにも絶望しました。教師もなんとか教室に行かせようとするんです。もちろん無理やりじゃないです。教師ですから。優しく、学校に来た私に「よく来たね」って言うんです。ありがたいです。でも、次に発せられた言葉は「今日は教室行けそう?」でした。絶望しました。私には結局その選択肢しかないのだと。



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