1.鉄騎兵と競合他社 編
第7話 組織の人々
(んひ~、さび~)
こんな冬にバイク、しかも、妥協した安い装備で乗ってるのだから当然だ。でも、好きなんだからしょうがない。
(やっぱ日が落ちるのはえーや、全然日が長くなってる気がしねぇ)
「小休止っと」
ウィンカーのカッカッカッっという音を自分でも
(おやおや、ずいぶんと混んでらっしゃる。トイレ空いてっかな。)
ヘルメットを脱ぐ、バイザーを通さず直接目に光が入った瞬間―――
「…ヌガッ!?」
顔に布のような何かが押し付けられ、視界が暗転。
手足を動かし抵抗するも数秒で押さえつけられる。
助けを求めようにも、声を出すどころか呼吸すらままならない。
このあと、何をされ何が起きたかは知らない。そもそもこれを思い出したのですら、たった今なのだから。
『ジェイ、こちらオレク、対象に逃げられた 、県道47号を南下している!』
『逃げられた!?不定のノロマだって話だろ!?』
『目の前で足が生えた。しかも速い、圧力鍋くらい速い。』
『どういうことだ!?』
『思ったよりはやいってことさ。それと、奴の足止めを頼む。』
『そんでもなんも分かんねぇよ!!
了解、だが今の俺達だと有効打に欠けるぞ。』
『なに、2人が手隙だそうだ。向かわせる。』
俺はTS魔法少女、立町 晴明。
合コンの帰り道で倒れている少女に声をかけると、突然体が崩れ、謎の光に包まれる。
謎の声を聞き、目が覚めたら…
TSしていた!
世界は俺に合わせてはくれない。証明写真や記録は男のまま。周りの人間の記憶や認識も男のままだ。
謎の声の主、変な鳥のクタに指示に従い、電波塔にたどり着くと、クタ達は電波塔を使って世界に魔法をかけた。
魔法は俺がTSしても何の疑いをもたないという訳の分からない効果だった。そして、俺は魔法の対価に組織に協力している。
組織はなんなのか、怪物はなんなのか、
いつか魔法が解けてしまうのではないか、疑問と恐怖から逃げるように俺は今日も深夜の
と、上司が馬鹿を言いだした。
「ジェイの兄さん本気で言ってる!?」
「ここでウソ言ってどうすんだよ。俺らが止める、お前が撃ち抜く。完璧だろ?何が心配なんだ?」
「止め方ぁ!!」
ジェイの手には堅牢そうな、大柄のジェイでも身を隠せそうな長方形の盾が握られている。
そして、彼の後ろにいる部下と、真っ黒なマネキン、影兵も同様であった。
影兵とは 魔法と機械の両方の技術によって作られた人形。特に戦闘用に作られたものを言う。この部隊には優れた個体が選抜され配備されている。byクタ
要はゲームとかのロボットだ。喋らないこと、無貌であることを除けば他の兵士となんら遜色がなく、機械と聞いた時は実に驚いた。
「車と相撲して勝てるとでも?!」
「ヘッ、4勝してるぜ。」
「うそでしょ」
『もしもーし、羽鳥です。カエルさん、そっち行きましたよ~。』
「並べ野郎ども!今日はこいつで
「「「
「あぁ、もう知りませんから!」
「おう、ちゃんと当てろよ!立町!」
「大丈夫かなぁ?」
『うえっぷ、大丈夫クタ。』
「いや、クタじゃなくて。」
『なんでわざわざあんなゲームみたいな登り方するんだクタ。』
「来た」
見た目はなんというか、黒豆に脚が生えたようだ。どことなく滑稽にみえるが、血走った眼球のせいで気持ち悪さを感じる。
しかも、図体は小型トラックほどあり、速度も出ている。
「よっと」
『 』
どうせこの距離では当たらない。飛び降り、ジェイ達に知らせた後、近くにあった歩道橋の上で構える。
照準の所にある横線と数字が刻まれた長方形の枠を立てて、覗き込む。
「ハッ」
はずれ、上を通過
「トッ」
はずれ、地面に当たる
「チッ」
アタリ、右後ろ脚
『3割3分3厘』
「好打者っぽい」
脚に当たったものの
「頼んますよ…」
そのままジェイ達へ突っ込んで来る。
「「「来いやァァァァァァ!!!!」」」
ジェイ達が雄叫びを上げ、激突する。
鉄の響き、軋み、が耳を
潰れる音、割れる音の和音が鳴る。
魔獣が押し込み、戦列が歪む。
が、今だ。
背中、核コアが見えた瞬間、それは砕けた。
反射的に引き金を引いていたようで、魔力の光線が一瞬見えた。
【組織のビル】
「ただいまーシアさーん、今日の分ですー。」
「お疲れ様、遥記ちゃん」
そう言って羽鳥ちゃんがシアさんに突撃し、いつものようにシアさんが労っている。
どう見てもオフィスビルにある普通の会社にしか見えないここが組織の本拠地である。
「あ、今週分の注文表、エレベーターの所に置いてあるわよ」
「もう日曜日か~」
雑談を始める羽鳥ちゃんを横目に俺はオレクさんが作った報告書を抱えて反対側へ
「おや、おかえりなさい。立町さん。」
「ただいま、スティーブンさん。本日分です。あとシアさんから。」
「ありがとう。……うーん、やはり数が合いませんねぇ。クタは何か言っていましたか?」
「あぁ、そういえば『狩られたか、食われたか、どちらだとしても面倒クタ』って」
「ハハハ、分かりました、ありがとう。」
スーツを纏った機械は眼を細め、手を振る。
<地下駐車場>
「当たりません!」
「そうかド下手くそ!!」
銃を掲げて叫べば間髪入れずにレスポンスが返ってくる。既にいつものやり取りとかしている。
とまぁ、組織はこんな感じだ。地下の駐車場に銃だったりの整備科があって、それ以外はやっぱり普通の会社みたいになっている。
そして、帰り道、羽鳥ちゃんといつものように話し、別れる。
「じゃあ、何日か来れないんだ。」
「そうだね。」
「ふーん、さびしいなー」
「それじゃ」
ぎゅっ
「またね~」
羽鳥ちゃんは手を振りながら行ってしまう。これは、いつもじゃない。
「最近の若い子というのは…。」
頭がフリーズしてしまった。
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