ダメダメな兄貴に死に別れた妹と恋する資格はありますか?
星色輝吏っ💤
序章 復讐してやんよ
復讐してやんよ①不慮の事故に巻き込まれて
〝
そんな不確かな存在なんて、信じていなかった。
――あいつと再会するまでは。
……今でも信じられない。こんなことがあっていいのか?
ああ、俺の人生はいつも不幸だった。もう死んでもいい、と思っていた。まぁ死ぬ勇気があるのなら、とっくに死んでいるんだけどな。
しかし今は幸せだ。
「おにぃちゃ~ん!」
俺にだけ聞こえるその元気な声が、俺に幸福をもたらしてくれる。
俺の妹、
兄でも一目で惚れてしまう程可愛いというのに、雫は俺に胸を押し付けて魅惑してくる。その感触は全くないし、なんだか冷ややかな空気さえ感じる。正直ぞっとするけれど、雫の顔を見た途端、俺の顔は、照れて真っ赤になってしまうのだ。
それから可愛い幽霊は、にっこり
「もぉー。お兄ちゃんたらー。か・わ・い・い」
プフッ。
自然と笑いが漏れる。…………ん? なぜ笑っているのかって?
そんなの――妹が笑っているからに決まってるだろ!
俺の名前は、
それに対して、妹の雫の方は、美麗で繊細な黒い髪と、雪のように白い肌。兄の俺でも見惚れてしまうような、儚げで透き通った目。そして、なんといっても可愛すぎる。存在すら幻想的で、なにやら神秘的で……もぉとにかく可愛い!
………………だから、こいつが『死んだ』なんて信じられるわけがない。
――3年前、俺はあの最悪の悲劇を、今でも鮮明に覚えている。
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ピーポーピーポー……。――救急車のサイレンが騒々しく鳴り響いていた。
警察の方たちが、跳ね飛ばされた車とビルの小さな隙間を、必死になって
何時間も、何日も――。
――俺は、『手術中』と書かれた標示灯を見つめていた。赤い光が少し眩しい。
激しい貧乏ゆすりをしながら待っていた。というより、『待っている』というのを意識して、他のことを考えないようにしていたと言う方が正確かもしれない。
それは、無理だったけれど。
プツンッ。――赤いランプが消えた。
ガラガラガラ……。
すると中から、俺の母親が運び出された。その後、そのまま真っ直ぐ病室へと運ばれていくようだ。
その光景を眺めていると、手術をした主治医の先生がこちらに向かってきた。そして、比較的明るめの声で言った。
「手術、成功しましたよ」
「よかった……」
心の底から嬉しかったはずなのに、その声はなぜか小さく、覇気のない声だった。俺は俯いたまま、涙を必死にこらえて唇を嚙んだ。
ああ、なんでこんなことになったんだ? あいつは何か悪いことをしたのか……?
そんなことばかり考えて、刻一刻と時が流れていった。
「クソが――っ!!!」
何度も何度も、何の罪もないこの世界を睨んだ。
ただただイライラして。
もうすべて受け入れたはずだったのに、まだ怒りが抑えられない自分に腹が立って。
俺は毎日のように家の壁を殴りつけて。瞳の裏に涙を滲ませて。
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交通事故――それは世界、いや日本だけに限っても、必然のように起こってしまうものだ。
交通事故で、『死に至る』というケースも少なくない。
その〝よくある死〟に、俺の妹は巻き込まれた。
――戻ってきてほしい。
そう、毎日願い続けている。そんなの無駄だとわかっていても、なぜだか淡い希望を感じてしまう。この現実を受け入れられていない。
もう、何も失いたくない……。
だからもう、俺から何も奪わないでくれ……。
妹が、俺の生きる全てだった。俺のことを励まして、優しく支えてくれた。辛いときも悲しいときもいつだって、俺に勇気をくれた。
そんな妹が――大好きだった。
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