第二話 勇者からは逃げられないッッ!!
ここはとある公園ッ!
普段は子供達の歓声が響き渡る賑やかな場所であるが、今は誰もおらず、圧倒的な静寂に包まれていたッッ!!
そんな公園の街頭の下には「おれんじ」と書かれた段ボールが不自然に置かれていたッ!
その段ボールに収まるは、人形のような顔立ちをした可愛らしい少女、勇者マリー・プライドであったッッ!!
そうッ! 彼女は没落したのであるッッ!!
ざまぁポイント1獲得であるッッ!!
そんな彼女を見つめる一人の男ッ!
彼の名はオサム・タナカッ! 社畜であるッ!
(うわぁ…… 女の子のホームレスが出没しとるよ…… 世も末だなぁ……)
彼女を見つめ、複雑そうな顔で悩む社畜、オサム・タナカッ!
彼は葛藤していたッッ!!
(ここは通報するべきか…… 無視するべきか…… 無視した結果、明日には変わり果てた姿で見つかったら目覚めが悪いしなぁ……)
そんなオサム・タナカに突然ドヤ顔で振り向く勇者マリー・プライドッ!
「あなた、わたくしに興味がおありですのッ?」
(話しかけられたわ~…… これで無視するのは難しくなっちゃったわ~……)
「あなた……中々良い目つきをしてますわねッ!」
「はぁ……」
「いいですわッ! あなたに私の下僕になる栄誉を与えますわッッ!!」
「え、嫌です……」
即答するオサム・タナカッッ!!
「この栄誉を迷いなく拒絶しますのね……ッ! 気に入りましたわッッ!! あなたは勇者であるわたくしの元に来なさいですわッッ!!」
(やべぇ娘に声かけられてしまった……)
「いや……だから結構ですってば……」
「ますます気に入りましたわッッ!! この勇者マリー・プライドに仕える名誉をあえて捨てるその姿勢ッッ!! ロックですわッッ!!」
(話が通じない……どうしよう……)
困惑するオサム・タナカッ!
勇者マリー・プライドのアタックにどんどん劣勢に追い込まれていくッッ!!
(かくなる上は……!!)
「逃げろーーーー!!」
「あッッ!!」
オサム・タナカは逃げ出したッッ!!
圧倒的戦略的逃走であるッッ!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ふぅ……今日はツイてないなぁ…… 上司には怒鳴られるし、残業させられるわ、飲み会に長時間付き合わせられるわ、極めつけは頭の変な女の子に絡まれるわ…… よく考えたら最後のやつ以外はいつもの事だったわ……)
今日の出来事を振り返るオサム・タナカッ!
圧倒的憂鬱であるッッ!!
「逃がしませんわッッ!!」
そして、オサム・タナカに迫りくる「おれんじ」と書かれた段ボールッッ!!
(やべぇ……!! 追ってきた!?)
土埃を撒き散らしながら走って来る段ボールから逃げるオサム・タナカッッ!!
その姿はまるで怪異であるッッ!!
「た……たすけてくれぇ!!」
段ボールの怪異から逃げ惑う社畜が辿り着いたのは、街を彩る並木の上であったッ!
その姿はまるで、猛犬に追われる少年のようであったッッ!!
「あなたはこのマリー・プライドに従える栄誉を得ましたのよッッ!!」
「そんな栄誉なんか要るか!!」
そんなオサム・タナカに救世主が現るッッ!!
「ちょっと、君達! こんな夜中に大声出したら近所迷惑だろ?」
お巡りさんであるッッ!!
「お巡りさん! 助けてください!! 変な少女に追われてるんです!!」
「変な少女ってその段ボールに入った女の子か?」
大の大人が、小さな少女に追われているッ!
良く分からないシチュエーションに困惑しながらも、警察官は説得を試みるッッ!!
「あ~君君、そこのおじさんが困ってるでしょ? お家の人は?」
「あらッ? 何ですのッ? 随分気安いですわねッッ!!」
「なんだ、この娘は…… まぁ、とりあえず補導しておこうか……」
「このわたくしを捕まえるですってッッ!? 笑止ですわッッ!」
警察官が、マリー・プライドを捕まえようとすると、マリー・プライドは華麗に警察官の手を躱し、警察官に飛び蹴りカウンターをお見舞いしたッ!
圧倒的、公務執行妨害であるッッ!!
「ぐぼはぁ!?」
「警察官さぁん!?」
警察官の悲鳴を聞いて、他の警察官が集まってきたッ!
援軍であるッッ!!
「どうした!?」
「人を追い回してる女の子を補導しようとしたら、このザマだ…… 一人じゃ手に負えん、応援を呼んでくれ!!」
「わかった! 仇は必ず取ってやるから、安心して眠ってくれ!!」
「勝手に殺さないでくれ……」
仲間の警察官は、トランシーバーを取り出し、応援を要請したッ!
「全警察官へ、非常事態だ。 容疑者は女性、137cm。 髪は金。 ツルツルペタペタ、段ボールの変態だ」
応援に応えて、警察官の方々が大勢集まってきたッ!
その数、17人ッッ!!
「たかが小娘相手に、この人数は過剰じゃないか?」
「油断するな……!! あの娘は結構手強いぞ!!」
「ほう……この勇者マリー・プライドに対して、この程度の戦力で挑むとは……ッッ!! 舐められたものですわッッ!!」
そう言うと、勇者マリー・プライドは地面を思いっきり踏み込むッ!
「破ァッッ!!」
大きな衝撃波が警察官たちを襲うッッ!!
「ぐおぉ!? 何だ!?」
怯む警察官たちに、一瞬で間合いを詰めるマリー・プライドッ!
「遅いですわッッ!!」
「げはぁ!?」
「バカな!? 俺達の中で一番の防御力を誇るマモルが一撃でやられただと!?」
「怯むな! 相手は一人! このまま畳みかけろ!!」
一斉に飛び掛かる警察官の皆様ッッ!!
「わたくしと戦うなら、最低でも一個師団の軍隊を用意する事ですわねッッ!!」
目にも止まらぬ速度で、体術を繰り出すマリー・プライドッ!
哀れにも蹴散らされていく、警察官の皆様ッッ!!
「ギャーッ!」
「ママー!!」
「グワー!! イヤーン!!」
なんたるケオスかッ!
真面目に仕事をしている善良な警察官がここまでの仕打ちを受ける謂れは無いッ!
(やべぇ……17人もの警察官を一人で無双するとか、あの娘強すぎる…… 警察官の人達には悪いけど、今のうちに逃げよっと)
喧騒に紛れてひっそりと並木から降りて、逃走するオサム・タナカッ!
今度こそ、逃走に成功したのであったッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(警察官の人達には悪い事をしてしまった…… 明日謝りに行こう…… そして今日は帰って寝よう)
ようやく帰路に着くことが出来たオサム・タナカッ!
そして、そんな彼に再び「おれんじ」と書かれた段ボールが迫りくるッ!
「知りませんでしたのッ? 勇者からは逃げられませんのよッッ!!」
彼女を止めようとしがみつく警察官たちを引きずりながら、迫りくるマリー・プライドッ!
(夢なら覚めてくれ……)
「誰かこのイカれた娘を止めてくれ~~!!」
そんな警察官の願いに応じたのか、突如マリー・プライドの首元にダーツ状の針が刺さるッッ!!
「バカなッッ!! このマリープライドがッッ!? スヤァ」
突然意識を失うマリー・プライドッッ!!
「た……助かったぁ!!」
こうして、夜の街を騒がせた、傲慢な勇者マリー・プライドは無事に捕まったのであるッ!
ざまぁポイント2獲得であるッッ!!
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場所は変って、ここは交番ッ!
「とりあえず、何とか街中で暴れる猛獣を捕まえられたわけだが……」
すやすやと寝息を立てるマリー・プライドッ!
「この娘の身柄をどうするか……」
彼女の処遇に悩む警察官ッ!
勇者マリー・プライドは街の外からやってきたのであるッ!
彼女はこの街においては住民票を持たない身元不明の存在だったのだッッ!!
「なぁ、タカノメはどう思う?」
タカノメと呼ばれた少女はスナイパーライフルを無心で磨いていたッ!
そう、彼女こそマリー・プライド捕縛の最大の功労者であったッッ!!
警察官からの応答に顔を少し上げたが、再びスナイパーライフルを磨き始めたのであるッ!
圧倒的無関心ッッ!!
「相変わらず愛想のない娘だのぅ……」
「今日は本当にありがとうございました……」
そう感謝の言葉を述べるは、渦中の人物であったオサム・タナカッ!
「まぁ、これも仕事だからね……気にしないで」
「とりあえずこの猛獣娘の処遇だけど……」
警察官は視線をオサム・タナカに向けるッ!
オサム・タナカは嫌な予感を感じたッッ!!
「悪いけど、オサム・タナカさん。 あなたが預かってくれないだろうか?」
「……ほわっつ!?」
「また暴れられたら、色々厄介だし…… もし、民間人に被害が出たら大変だからね? それに彼女、オサム・タナカさんに懐いているようだったし」
「いやいやいやいや、困りますよ! タダでさえ自分を養うのに精一杯なのに、見ず知らずの娘を預かれませんよ! それにウチはペット禁止だし!!」
「そっかぁ…… まぁ、無理強いはできんよなぁ…… 仕方ない」
「助かった……」
「預かってくれたら国から報奨金が出るけど、嫌がる人間に無理強いはできんよなぁ…… 仕方ない」
「ウチで預からせて頂きます!」
こうして傲慢勇者マリー・プライドは社畜オサム・タナカの元に預かられる事になったのであるッ!
勇者という猛獣を抱え込んだ、オサム・タナカの運命や如何にッッ!!
圧倒的つづくッッ!!
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