第2話 闘争と逃走
与えられた部屋のテラスから外を確認したロバートの表情は、芳しいものではなかった。
「外にも見張りがいますね。月が明るいので、今の間に見つからずに外に出ることも困難です」
アレキサンダーとロバートは、すでに動きやすい服に着替えていた。
「仕方ありませんから、少し休みましょう」
昼間と同じロバートの言葉に、アレキサンダーは馬車が到着したときの罰の悪さを思い出した。
「お前が寝たらな」
「アレキサンダー様。無理をおっしゃらないでください。あと眠れるとしても少しです。お食事には何かはいっていました。おそらく薬で眠っているという前提で彼らは来るでしょう。時間がありません」
そこまで言ってロバートは苦笑した。
「すみません。私も矛盾していますね。少し座って休みましょう。眠る時間などなさそうです」
ロバートが椅子に腰を降ろしたことを確認して、アレキサンダーは長椅子に腰かけた。
軽く目を閉じたのがいけなかった。
「アレキサンダー様」
鋭い声に目を覚ました時、アレキサンダーの目の前でロバートは男と切り結んでいた。アレキサンダーも、もう一人の剣を受けた。
「何!」
驚いた男の胸に短剣を突き立てた。伊達に、稽古は積んでいない。育った屋敷にいた男達は、指や手や足が少々なかろうが、隻眼だろうが、何だろうが、とにかく強かった。ティタイトとの戦の経験がある彼らの剣は洗練とは無縁だった。
相手を
「多すぎます」
背を合わせるように立ったロバートが、囁いた。軽くテラスの側へと押された。逃げ道は他になさそうだった。降りるための綱など用意していたかと思ったが、ロバートに確認する余裕などなかった。
追い込まれたようにみせかけてテラスにたどり着いたとき、アレキサンダーの腰にロバートの手が回された。
「おい、ロバート」
「黙って」
アレキサンダーの体は、ロバートに抱えられテラスから宙に飛んだ。
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