第27話  捕われるモノ⑵(ジェレミー視点)

 地面に項垂れていた男は、顔を上げる。


 何を言ってるんだという顔をする男に言葉を続ける。



「違法改造された魔法道具はこれから規制される事になる。ある機関が捜査をしているからだ」    


「そんな事になったら、仕事が……」



 違法改造された魔法道具がなくなるだけで、魔法道具がなくなる事はないのに男にとっては重要な事らしい。



「エドワード・クラークの記事を書いた出版社も違法魔法道具を使っているなら、お前がその記事を書けばいい。情報提供者として書けば、競合の出版社を潰せる。こんなにやりがいがある仕事はないだろう?」



 僕の言葉に、口元を震わせながら男は言う。



「貴方は……何者ですか?」


「お前が知る必要がない事だ。出来るのか?出来ないのか?」       



 「出来ないのであれば…」と手を上げれば、男は慌てて「出来ます!やらせて下さい!!」と言った。

 


「そうか。早い方がいいんだが……」



 男から奪った違法魔法道具を触りながら男を見ると、男はハッとして慌てる。



「今すぐ書きます!今日書きます!記者は信用と早さが大切ですから!」   



 男の言葉に満足した僕は、カバンを男に返す。



「僕を騙したらどうなるか、分かっているな」


「っ勿論です…!」



 念を押して聞くと、男は脂汗を流して目と口を震わせて言った。



「期待しているぞ」



 路地裏から去る為に踵を返す。



「あの……」



 男の声に振り返ると。



「それは返して下さらないのですか?」 



 男の視線の先には、僕の手に握られら違法魔法道具があった。



「僕達を撮ったやつを返せる訳がないだろう?」



「そう、ですよね……」



 項垂れる男を残して、今度こそ路地裏から出る。



 シャーロットの婚約者の記事を書いた出版社も潰せるし、違法魔法道具の情報も手に入れた。



 今得た情報を魔塔に送ると、追加の人員を送るとの連絡がくる。


 その後の捜査は、後から来る者に任せたらいいだろう。



 これで、シャーロットと気兼ねなく過ごす事が出来る。


 奪った魔法道具を亜空間に入れると、カフェの前に着く。



カフェの外からは、男と笑顔で話すシャーロットが見える。



 後、少しで片付く。 



「後、もう少しだ……」



 呟くと、シャーロットが僕に気付いて、手を振ってくる。


 そんなシャーロットに笑い返して、カフェに入った。 

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