第26話 捕われるモノ(ジェレミー視点)

「元……?婚約破棄したんですか!?」



 男は身体をのけ反らせて驚く、「婚約破棄したなんて……!これはスクープになるぞ!!」と知らなかった情報を得て興奮しているようだ。



 そんな男の反応が気に入らない僕は、再び地面に押さえつける。



「クッ」


「おい。シャーロットの事を記事に書くと、お前の身体がどうなると思う?」



 手に魔力を込めると、男は恐怖で顔を青ざめさせる。



「ま、ほぅ、つかい……」


「そうだ。お前がこの場で跡形もなく姿を消したとして、誰が気付く?」



 脅し半分で魔力を強めると、効果があったのか男は身体を震わせる。



「自分の身体と記事、どちらが大事か考えてみるんだ」


「ひぃ……じ、ぶんが大事です」



 怯える男の返答に口角を上げる。


 そうだ、記事は生きていてこそ書けるもの、男の選択は正しい。


 自分を守るように身体を丸める男の背中から足を退ける。


 男は僕の足元から逃げると、自分のカバンを大事そうに胸に抱いた。


 男のカバンを見て、当初の予定を思い出す。



「カバンを渡せ」


「これには仕事道具が入っているんです。どうか、これだけは」



 男は頭を地面に擦り付けるように懇願する。


 男は取られると勘違いしているらしい。追い剥ぎでもないし、男のカバンではなく、カバンの中に用がある。



「カバンを奪いはしない。その中身に用があるだけだ」



 渡すように言うと、男は窺うようにこちらを見ると、震える手でカバンを差し出した。


 カバンを受け取った僕は、カバンの中を開ける。


 何の変哲もないカバンを探ると、お目当ての物を見つけて、手に取る。



「それは……!」


 

 男は僕の手の中にある物を見て、慌て出した。


 男の反応に僕は目を細める。



「これで僕達を撮っていただろう?違法改造された魔法道具を使うなんて、覚悟は出来ているんだろうな」



 ハッハハハッ


 狂ったように笑い出した男を見る。


 男が笑い終えるのを待って口を開く。



「これを何処で手に入れた?」


「首都の記者は、違法改造された魔法道具を使わないと、いい写真が撮れないんですよ」



 そう吐き出す男を冷たい目で見る。


 僕の目を見て、身体を震わせた男は続けて言った。



「エドワード・クラークの記事だって、それを使って撮られた写真を使っているんですよ」 


「魔力感知が出来ないように改造された物は、対象にバレないように撮る事が出来るから重宝されているんです」


「首都ではそれがないと、他の記者と戦えない。貴方だって俺の立場になったら同じ事をする筈だ」



 聞いてもいないのに、男は色々な情報を話す。


 

「それだけか?」



 話し終えた男に訊ねると、男は絶望した顔をする。


 調べていた違法魔法道具の情報を得た僕は、男にある提案をする。 



「お前に一つ、仕事をやろう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る