第13話 アドニス・マーティン⑵
声が聞こえてきた方を向くと、そこには男性が立っていた。
「久しぶりだな、ジェレミー」
男性はこちらに近づいてくる。
この方はもしかして…
マーティン様のお若い時の写真を見た事があるけど、目の前の男性は若い時のマーティン様の面影がある。
「…お久しぶりです。マーティン卿」
「卿ではなく、昔みたいにお兄様とは呼んではくれないのか?」
「誰がお兄様なんてっ!」
「はははっ、君は相変わらず可愛いな」
副所長の反応を見て笑うマーティンと、それを煩しそうにする副所長。
話す2人を前に私は密かに興奮していた。
本物のマーティン様が目の前にいるなんて!
副所長が揶揄われてる姿なんて始めてみる。
それに、副所長とこんなに親しげに話す人を見るのも始めてだわ。
親しげに話す2人を見ていると、マーティン様が私を見た。
「君とは始めましてだね。私はアドニス ・マーティン。シェルロン国の魔法研究所で名誉会長をしている」
「マーティン様の事は以前から存じ上げております。私はシャーロット・アマン。ラミア国の魔塔に所属しています」
「シャーロット・アマン…そうか、君が……」
差し出された手を握ると、マーティン様は目を細めて含みのある目で笑いながら私を見る。
私を知っている様な反応のマーティン様に驚く。
「私を知っているのですか?」
「勿論知っているよ。ジェレミーの初めての部下が君であり…優秀な魔法使いだと聞いている。君がシェルロン国の魔法研究所に来なかったのが残念だよ」
そう言ってマーティン様は笑っていた。
マーティン様に知ってもらっていた事と、優秀な魔法使いだと言ってもらった事に感動していた私は、副所長が咎める様な目でマーティン様を見ていた事を私は知らない。
「立ち話もなんだから中に入ろうか」
マーティン様に案内され、屋敷の応接間に来た私達は手土産を渡した。
メイドが手土産と共に部屋を出ていくのを見て、私は気になっていた事を聞く。
「マーティン様と副所長はお知り合いなのですか?」
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