第8話_おじさんもやっぱりちょっと臭い

やっぱり地球の貴族とは挨拶の作法が違ったのかしら?

小首をかしげると、焦ったようにお祖父様は咳払いをして、姿勢を正した。


「少し子供扱いしすぎたようだね、申し訳ない。初めまして、私はセルジオ・スチュアート。ずっと君に会いたかった。」

そっと腕を広げて、ハグを求めてきているようだが、やはりちょっと臭い。

アリスはそっと手を差し出して握手をし、ハグを回避した。

これぞ大人の対応だよね。それにしても何のにおいかしら?


考え込んでいると、勢いよく扉が開く音に意識を戻された。

「アリスの意識が戻ったと聞いて駆けつけたぞ!」

母によく似ている、赤髪黒目で整った容姿の20代くらいの男性が勢いよく入ってきた。

この人が私を助けてくれた叔父さんかしら?


「リノルド様!女性のお部屋をお尋ねのときは、ノックしてから入ってくださいといつも申し上げているではございませんか!親子揃って同じことをしないでください!」

エリーナの叱責にリノルドは「すまない、気が急いていてな。」とお祖父様と全く同じ返答をしたのだった。

きっと似たもの親子なのね。


「お初にお目にかかります。リノルド様。ナタリアの娘、アリスでございます。」

お祖父様らへの挨拶と同じカーテシーをすると、リノルドは騎士の姿勢で挨拶を返した。


「初めまして、アリス。僕はリノルド・スチュアート。君のお母さんの弟だ。」

リノルドはアリスに手を差し出して、握手を求めた。


アリスが握手に応じると、リノルドは強い力でアリスを引き寄せ、抱き締めると耳元で囁くように話し始めた。

「今回は怖い思いをしたね。お母さんを助けてあげられなくてすまない。あれから調査をしていたのだが、あまり全容を掴めていない。辛いかと思うが、君の口から何があったかを説明してもらえないだろうか?私は最愛の姉を死に追いやった奴らを絶対に捕まえたい。」


私が復讐するって決めたもの。情報は惜しみなく提供するわ。でもまずは父を助けて欲しい。そして、おじさんもちょっとくさい。

「私も絶対に捕まえたいですし、地獄を見てもらわないと母に合わせる顔がありません。ただ、その前に囚われている父を解放していただけるように貴族警察隊にかけあっていただけないでしょうか?」


「「囚われている?どういうことだ?」」


アリスは自分達家族の身に起こったことを整理して話すとともに、メイドに手配してもらった紙に情報を記していった。

作成された事件プロファイルは非常に分かりやすく、スチュアート家の面々の状況理解を促した。

一方、簡潔かつわかりやすい図解付きで事件プロファイルを作成するアリス(有栖)の手腕に、一同は驚愕するのだった。

うちの孫(姪)(お嬢様)、天才(です)か!?


アリスはそんな声に全く気付かず、ひたすら書類を作成を続けながら、頭の片隅で祖父と叔父の消臭方法を思案しているのだった。

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