第3話 三年前

 親衛隊? と名乗っていた三人衆は立ち尽くしていた。

 まるで脳の処理が追い付いていないようだ。


 そんな彼らを無視して夏帆は「行こ!」と言い腕を引っ張ってくる。


「あんなに堂々と妹って事、暴露してよかったのかよ」


「はい、別に私たちが義兄妹ということを暴露しても何の問題もありません」


 と夏帆は勢いよく答える。


 そう、夏帆は妹ではあるが実の妹でではない。

 約六年前に親同士が再婚し相手の子が夏帆だったわけだ。


 俺は突然できた妹に対し驚く以外何も思わなかったが、夏帆はどうやら兄が欲しかったらしく当時からずっと俺にべったりしていた。

 そこがまた少し苦手だったりする。


 夏帆と軽い雑談をしていたところで家に着いた。

 家は一軒家で俺と夏帆しか住んでいない。二人で暮らしているのには少し理由があるからだ。

 

 それは、さておき玄関のドアの前に見知った顔の男性が立っていた。


「お嬢、ご当主から話があるようです。颯詩様もいっしょにとの事です」


 そう言った彼は夏帆のSPのようなものだ。

 実は結婚した俺たちの親同士はたまたまどちらも王手企業グループの時期社長候補だったようで簡単に言えば金持ちだ。

 なのでSPぐらい雇うのにどうってことないだろう。


「おじいさまから? お話? 内容は?」


「それは、私もわかりません。ただ夏目家と風谷家の今後にかかわってくることだそうです」


「そう、わかったわ」


 というわけで俺たちはSPが運転する車に乗り実家に帰ることになった。


 道中何も話したりすることはなく約三十分程で実家に着いた。

 普通なら実家は両親の家になるのだがその家が夏目家の敷地内にある。


 車から降り、門をくぐり広い庭を通り抜け茶室の前まで案内された。


「お嬢は中にお入りください。颯詩様は呼ばれるまでここでお待ちを」


 そう言われ夏帆は先に部屋の中へ入る。


「まだ、お嬢の事が好きにならないのですか?」

 とSPが話しかけてくる

 実は彼とは少し仲が良い。昔からの俺を知っていたり、相談事を彼に何度もしたことがある。


「うん、やっぱり少しかな」


「まあ確かにまだ少しぎこちない表情でしたもんね。下校の時ずっと」

 見ていたのか


「やはり、三年前の事が原因ですか?」


「そうだね。やっぱりそれが大きいかな」


 記憶がだんだんフラッシュバックしてくる。

 三年前の春


「本当に使えない。夏帆はできるのにどうしてあなたにはできないの? あんたなんか生きる価値あるの?」

 母親の声


「なれなれしく夏帆に話しかけるなそれで夏帆までお前みたいなゴミになったらどうする。お前は邪魔なんだよ」

 義父の声


「兄さん、しっかりして、ダメよ置いていかないで」

 車のブレーキの音


「私は出ていくわ。おじいさまに言わない代わりに兄さんと二人で暮らさせて」

 怒っている夏帆の声


「脳の損傷による後遺症が残っていると思われます」

 医者の声


 すべて鮮明に覚えている。


 









 

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