第39話

「経済振興部は、王宮の財政状況を把握し、市場を活性化させるための施策や企画・運営を行います。

例えば、財政が逼迫している時には税収が減っていると考えられるので、その原因を調べて必要な対策をしたり、

財政が豊かな時には、飢饉に備えた備蓄をすすめたりといった業務を担当しています。


現在は監査期間ですので、貴族から王家に上納される税金について調査する仕事を体験いただけるかと。」


この国のいろんな領の産業についてあまり知らなかったし、ちょうど良い機会かも。

経理の知識も活かせそうだし、ここにしようかな。」


「では、経済振興部で体験を希望します。」


「え、いいの?監査対応なんてすごく地味そうだし、マリーナならポーション作りが得意だし医術系とかの方がいいのではないか?」

不思議そうにナイトハルトが尋ねる。


「いえ、折角の機会ですので、宮廷でしか体験できないお仕事に携わってみたかったのです。」


「マリーナさんは、まだお若いのにしっかり考えられているのですね。では、経済振興部に案内します。

ナイトハルト殿下は監査期間中はお入りいただけませんので、こちらでお引き取り下さい。」


ナイトハルトは少し残念そうな顔をしたが、それが規則なので、と言われるとすぐに引き下がった。

そしてオリバーもマリーナを経済振興部まで案内すると、すぐに立ち去ったのであった。


*****


皆が忙しそうに書類の山を持って歩き回っている。

オリバーさんに案内されてきてみたものの、皆が忙しそうで私に気づいていない様子ね。


大量の書類を浮遊魔法で運んでいる人、書類を魔法で壁に貼り付けて仕分けしている人、立体地図を魔法で投影して何かを考えている人など、多くの人が魔法を使っているので、魔法師団らしいといえばその通りだが、業務はまさに事務作業のようだった。


皆が精魂尽きそうな疲れた顔をしていたので、雑貨店の製品として開発した紙コップに調合してあった初級ポーションを少しずつ入れて、みんなに配ってみることにした。


「お疲れ様です。これどうぞ。」とお茶入れの一般スタッフのように振る舞うマリーナからコップを渡された団員たちは、疑うこともなく、皆がそのままポーションを飲んだ。

すると、皆の顔色がみるみる改善されていく。


とりあえず、これで話をできる状態にはなったかしら。

どのように話しかけようかマリーナが考えていると、どこからどもなく声が上がった。


「なんだこの高い効果のポーションは?こんなもの初めて飲んだぞ!魔法薬作製部の新作か??」

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