第8話

翌朝、マリーナは観光馬車に乗っていた。この観光馬車はおよそ半日でこの街の名所をぐるっとツアーのように観光できるもので、人気の乗り物である。


マリーナは朝から身を乗り出し、白い建物や時計台、賑やかな街並みを眺めていた。

静かにひたすら風景を眺めたあと馬車降りると、向かいの飲食店で、何か大声が聞こえた。


少し気になったので周りに聞いてみると、店の女将さんがお金が払えなかった幼い少年の客を、無銭飲食犯としてお役所に突き出そうとしているらしい。

この世界ではお金がない犯罪者は簡単に奴隷に落ちてしまう。


マリーナは風景を見て気分がスッキリしていたので、気まぐれに少年を助けることにした。


「女将さん、私がお代を払うよ。いくらかな?」


「銀貨4枚だよ。こんな小汚いガキのために本当にいいのかい?うちはお金さえもらえれば文句は無いけれど」


「今日は機嫌がいいからいいのよ。はいこれね。」


マリーナが去ろうとすると、助けられた少年が立ち塞がった。


「施しは要らない!何か別のもので返したい。俺に何か仕事をくれないか?」


また面倒なものを拾ってしまったのであった。


◆◆◆◆◆


その頃、第二皇子が雇った絵師によって、黒目黒髪の美少女の絵が出来上がり、マリーナは姿絵つきで指名手配されているのであった。


“Wanted! 第二皇子ナイトハルト様の恩人。この姿絵の黒目黒髪の美少女を見たら騎士団に連絡されよ!褒章は金貨50枚也!”

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