第368話 駅前の大型本屋 その1

 ……


 ランチを摂った『CLOVER♣』から、俺たちは最寄り駅に向かい、その駅から地下鉄に乗って名美崎なみさき駅へ戻る。

 地下鉄の名美崎駅改札を抜け、地下鉄駅構内から地上に出て、しばらく駅前を歩き、とある駅ビルに入って行く。


 その駅ビルのとある階に、大きな本屋さんが入っているフロアが有る。

 話しに依れば、県内最大の広さを誇る本屋さんで有る。


 俺たちは、その本屋さんに到着する。

 伊藤さんが指定した、本屋さんは其処で有った。


 県内最大の本屋さんで有るから、きっと為になる参考書がたくさん置いて有るのだろう?

 駅ビルフロアの一角に有る本屋なので、出入り口は複数有る。

 俺たちは、その出入り口の一カ所から本屋さん内に入り、参考書が置いて有る場所コーナーに向かい到着するわけだが、桃香ちゃんが伊藤さんに穏やかな表情で話し掛ける。


「ねぇ、お姉ちゃん!」

「私……コミックの方を見て来ても良い?」

「私にまだ、参考書は早いから!!」


 桃香ちゃんは今年。中等部三年生で有るが、葉月学園中等部から高等部へには、ほぼエスカレーターで進学出来る。

 素行が著しく悪い生徒には、高等部入学試験が存在するが、そうで無ければ進級するように高等部へ進学出来る。


 桃香ちゃんは素行の悪い生徒では無いので、高等部進学に関して心配する必要は無い。

 伊藤さんは桃香ちゃんに、穏やかな表情で言い始める。


「うん…。良いわよ!!」

「桃香には……まだ、大学受験には少し早いからね…!」

「私たちは、参考書コーナーに居るから、行って来て!!」


「じゃあ、お姉ちゃん!」

「私は、そっちの方に行くね~~♪」


 伊藤さんの言葉の後。桃香ちゃんは笑顔で伊藤さんに言って、コミックコーナーの方に向かって行く。


「……」


(……俺も、陽葵先輩たちに付き合ってもな…)

(俺の場合は先ず私立(大学)になるし、それも推薦を狙うから、共通テストを意識する必要はない……)


 俺はこのまま、陽葵先輩たちと参考書選びを付き合っても、余り意味が無い気がする。

 俺は進路志望を、提携大学と陽葵先輩に言ったが、葉月学園の場合はかなりの数の提携大学を持っている。


 今の内(二年生)からの受験対策も大事では有るが、その前に俺の場合は志望校を決めないと行けない。

 そうしないと、此処で適当に参考書を買っても、大学受験に使えなければ意味が無い。


 桃香ちゃんの様に、俺も陽葵先輩たちから一旦離れることを決め、陽葵先輩に澄ました表情で話し掛ける。


「陽葵先輩!」

「俺も……少し、他所のコーナー見て来ても良いですか?」


「えっ……!?」

「あぁ。三國君には……無理して、付き合って貰う必要は無いか!///」


 陽葵先輩は俺の言葉で、驚きの表情を見せる。

 俺も来年は受験生で有るのに『何言っているの。三國君…!』と、陽葵先輩は捉えられてしまったが、俺はさっきに陽葵先輩に大学志望校を言っているので、陽葵先輩は理解した表情で俺に言い始める。


「私は、別に構わないわよ!」

「三國君!」


 陽葵先輩の言葉の後。

 俺は少し申し訳なさそうな表情で、陽葵先輩と伊藤さんに言い始める。


「では、陽葵先輩、伊藤さん。すいません…///」

「俺も、他のコーナーを少し見て来ます!!」


「分かった。三國君!」

「私たちは、此処に居るから!!」


「……」


 陽葵先輩は和やかな表情で言うが、伊藤さんは澄ました表情で顔だけをうなずかせる。

 だが、伊藤さんの顔には『三國君も……来年は受験生なのに!///』と、言いたそうな表情で有った!?


 俺は陽葵先輩と伊藤さんの側から離れて、少しだが一人の時間が始まる。

 さて、何処のコーナーで時間を潰そうか。

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