第330話 一人で晩ご飯 その2

『ズズッ…』


(何時もの味だな…)


 今晩の味噌汁は、油揚げとワカメで有った。

 三國家では定番と言って良いほど、この組み合わせの味噌汁が良く出る。


 俺は味噌汁を一口飲んだ後。メインと成る“焼きそば”に箸をつける。

 豚肉やキャベツなどの野菜類が入った、ソース焼きそばで有る。


『ズズッ、―――』


(完全には温めきれなかったか…。まぁ、仕方ない!)

(味の方も、食べ慣れたソース焼きそばだ!!)


 俺は“焼きそば”を食べながら思う。

 電子レンジで温め直した“焼きそば”では有るが、所々麺同士が“くっついて”しまっている。


(出来てから結構、時間が経っているからな!)

(だが、焼きそばだから温め直しても十分に美味しいな!!)


 俺は“焼きそば”を少し食べた後は、ご飯(白米)を口に入れる。

 賛否両論は有るが、俺は“焼きそば”に白米は合う派だと思う。


 口内の食べ物が無く成ってから、茹でブロッコリーにマヨネーズを付けて食べる。

 茹でブロッコリーに色々な食べ方は有るが、俺は茹でブロッコリーにマヨネーズつけて食べるが好きだ。


「もぐ、もぐ、―――」


(うん!)

(少し歯触りが残る、良いゆで加減だ!!)

(塩加減も丁度良い!!!)


 俺はそう思いながら、一人で晩ご飯を食べている。

 初めの内は感じ無かったが、有る程度食事が進んだ所で”ふと”気付く。


(そう言えば……一人で晩ご飯を食べるなんて、もしかして初めてか?)

(朝食や昼食は一人が当たり前だが、夕食を一人で食べること何て無いからな!!)


 晩ご飯を、俺一人で摂ることは殆ど無かった。

 この時間帯に虹心が出掛けることは先ず無いし、俺も夜遊びを面白いほどしない!?


 俺の付き合っている人間が陰キャラグループの影響も有るが、一人で晩ご飯を食べるほど、親友たちと遅くまで遊んだことは無い。

 この様な日は、本当に珍しい日で有った。


(昼食とかでは気付かなかったが、晩ご飯を一人で食べていると物寂しさを感じるな…!)


 家族全員が座れる台所のテーブルに、俺一人だけが食事を摂る。

 椅子は家族分有るのに、座っているのは俺一人だけ。

 外の景色が夜で暗いのも有るが、やや薄暗い蛍光灯照明が物寂しさを演出させる。


(母さんたちがリビングに居るのに、変な気持ちだ!)

(物寂しいでは無いけど……心が何か“むずむず”する!!)


 普段の晩ご飯なら、母親や虹心の小言や、愚痴を聞きながら摂る訳だが、今晩はそれが無い。

 気分は遙かに気楽の筈なのに、どうも“しっくり”と来ない……


(兄は就職しても自立することは無かったが、俺はどうするのだろうな?)

(この家から通える範囲内で就職すれば問題は無いが、上京などをしたら一人暮らしをしなければ成らない…)


 兄が其処まで考えて、家から通える地元での就職をしたかは分からないが、恐らく兄は結婚するまでこの家に居るだろう?

 兄は両親のことを嫌っていないし、両親は兄を好いている。


(けど、兄がこの家を出てったら、一気にこの家の雰囲気は変わるだろうな!)

(俺と兄の関係は淡白だが、母さんや虹心とは良好だからな!!)


『ズズッ、―――』


 俺は“焼きそば”をすすりながら思う。

 母親や虹心は兄を当てにしているが、俺の場合はそうで無いからだ。


(まぁ……兄も近日中に結婚するとかの話しは、まだ聞いてないから深くは考えないで置こう!!)


 今晩は一人で晩ご飯を摂ったため、余計なことを考えてしまう!

 俺は気を取り直して、一人での晩ご飯を続けた……


 ……


 晩ご飯を食べた後。

 俺は母親に言われた通り。食器類の後片付けと洗い物をする。


 一人前の量だし、調理器具とかも無いから面倒くささは無い。

 台所のテーブルは汚していないが、台拭きでテーブルを拭いておく。

 これも、後片付けの中に組み込まれているからだ。


 食事後の後片付けも問題無く終わり、シンク上部に付いている蛍光灯照明を消そうとした時、台所の扉が開いた。

 母親が、俺の様子でも見に来たか?

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