第329話 一人で晩ご飯 その1

(来月の何処かで、陽葵先輩と美術館デートか!)

(特別展の詳細を聞いて無いが……どんな物を見て回るのだろうな!!)


(そして、名美崎なみさき市まで行くのだから、市立美術館だけでは終わらないよな……その後は、どうするのだろう?)

(陽葵先輩は俺と、デートらしい事をしてくれるのかな?)


 俺はそんな事を思いながら自宅へ戻った。

 現時刻は多分。20時を大分過ぎていると思うが、遅くなる事は伝えて有るので、母親や虹心に小言を言われる事は無いだろう?


 ……


 俺は、自宅に到着して玄関ドアを開ける。

 言うまでも無く、玄関ドアの施錠はされてなかった。


『ガチャ!』


「ただいま~~」


 俺は帰宅挨拶をしながら靴を脱ぐが当然、誰も出迎えには来ない。

 もし、此処で来る場合は、俺を怒ったり怒鳴ったりする場合で有る!!


 俺は自室に向かう前に、台所の方へ視線を向けるが、台所の照明は常夜灯に成っており、母親たちはリビングで寛いでいるのだろう。

 俺はリビングのドアをひらけて、母親たちに帰宅挨拶をする。


『ガチャ!』 


「母さん。ただいま!!」


 リビング内には母親・兄・虹心の三人が居るが、俺は母親を代表にして帰宅挨拶をする。

 すると、テレビを見ていた母親が、俺の方に顔を向けて穏やかな表情で言い始める。


「……お帰り。武蔵!」

「晩ご飯は、台所のテーブルに置いて有るから!!」

「後……その、後片付けもお願いね!!!」


 母親は用件を言い終えると、直ぐにテレビの方へ視線を戻す。

 テレビ画面からは『ありえへん~~!』と、アニメのおっさん関西弁で喋っている。


 母親は、このたぐいのバラエティ番組が好きで有る。

 母親がテレビ画面に目を向けた直後。虹心が笑顔で俺に帰宅挨拶をしてきた。


「お帰り~~。兄ちゃん!」


「あぁ、ただいま。虹心!」


 俺は虹心に和やかな表情で帰宅挨拶をするが、虹心も俺の言葉を聞くと直ぐに、テレビの方へ意識を向ける。

 虹心も母親同様。バラエティ番組が好きで有る。


「お帰り。武蔵!」


 虹心の言葉の後。兄も穏やかな表情で帰宅挨拶をしてくれる。

 俺は兄にも、和やかな表情で帰宅挨拶をする。


「ただいま…。兄さん!」


「……」


 俺の帰宅挨拶の後。兄は軽く頷いて、兄はテレビでは無くお酒の方に目を移す。

 家族に帰宅挨拶を終えた俺は、着替えるためと晩ご飯を食べるためにリビングから出る。


『ガチャ!』


(……今夜の晩ご飯は何だろうな~~!)

(真優美さんの店でタルトをご馳走に成ったが、この時間だからお腹は空いている!!)


 俺はそう思いながら、着替えるために自室へ一度戻る。


 ……


 着替えが終わった俺は台所に入り、晩ご飯を食べる準備を始める。

 台所内はエアコンの空調が効いており、快適に晩ご飯が食べられそうだ。


(今夜のメニューは、ソース焼きそばか!)


 俺が座る場所のテーブルには、お皿にラップが掛けられた“焼きそば”や、茹でブロッコリーが置いて有る。

 お茶碗や味噌汁を注ぐ椀も、せて置いて有る。


 俺は“焼きそば”を電子レンジで温めつつ、ガスコンロ上に置かれている、味噌汁が入った鍋にも火を付けて味噌汁を温める。

 この辺りは普段から、やり慣れているのでスムーズに進んでいく。


 ……


「いただきます!」


 準備を終えた俺は食事前の挨拶をして、一人で晩ご飯を食べ始める。

 みんなは既に、食べ終えているからで有る。


 俺は先ず、味噌汁から手を付けた!

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