第313話 妹に顛末を話すⅡ その1

 ……


 俺は寄り道をせずに、そのまま自宅に戻る。

 とてもじゃないが、寄り道をしたい気分では無い。


 今回。俺へのダメージは無い訳では無いが、またしても俺の恋人作り作戦は失敗に終わってしまう。

 今日香ちゃんを失った今、次の有力候補は陽葵先輩で有るが……非常に厳しい戦いに成るのは目に見えている。


(だけど……俺は他の奴らと違い、陽葵先輩と関係も持てているし、自宅(撫子)も知っている)

(後は……初心うぶ(?)な陽葵先輩をどうやって、俺の方に近付けるかだが……)


 俺はそんな事を思いながら自宅へ戻る。


 ……


 真優美さんの店から自宅に戻った時の時刻は、19時を過ぎた時刻で有った。

 この時間だと、ギリギリ家族での食事時間に間に合うかも知れない。


「ただいま~~」


 俺は玄関内に入って、帰宅挨拶をしながら靴を脱ぐ。

 俺が玄関から上がって、着替える為に自室に向かおうとすると、台所の方から虹心が顔を見せる。


「あれ……兄ちゃん。もう帰って来たの…?」

「もしかして……新倉(今日香)先輩には逢えなかったの?」


 虹心は少し、心配する表情で聞いて来る。

 俺は困った表情で虹心に言い始める。


「今日香ちゃんとは会えたけど、物別れに終わってしまったよ…」


「!///」


 俺の言葉で虹心は一瞬驚くが、直ぐに困った微笑み表情で俺に言い始める。


「そう……それは残念だったね…!」

「もうすぐ、ご飯だから、着替えてきたら!!」


「今晩は豚カツだよ!」

「愚痴は後で、聞いて上げるから…!!」


(とか言いつつ……虹心は、結果内容が知りたいだけだよな!)

(だが、第三者がこれを見れば、素晴らしい妹に見えているに決まっているだろう!!)


 俺は心の中で思ってしまうが、虹心にも聞いて貰いたい部分が有るので、俺も困った微笑み表情で虹心に言う。


「ありがとう……虹心!」

「じゃあ、着替えてくるよ…!」


「うん……」


 虹心は優しく頷いた。

 妹だけど……妹に見えない虹心。


 俺はやはり心の何処かで、虹心を求めているのかも知れない……


 ☆


 晩ご飯は、父親を除く家族全員で摂って、何時も通りの時間が流れる。

 豚カツも揚げたてで、凄く美味しかった!


 母親も、俺が早く帰って来たから驚いていたが、詮索することは無かった。

 日常会話だけで、晩ご飯の時間は進んだ。


 多分……俺が着替えている間に、虹心が母親に話したのだろう。

 兄も、その事に関して、聞いてくることは無かった。


 晩ご飯後はリビングで何時も通りの、家族の団らん時間を過ごすが、今晩は何時もより早く俺は自室に戻る。

 明日の準備も有るし、虹心への相談と言うか報告もしなければ成らない。


 察しの良い虹心は俺が自室に戻り始めると、直ぐに後を追うようにリビングから出て来る。

 虹心は穏やかな表情で声を掛けてくる。


「兄ちゃん!」

「さっきのお話し。聞かせて!!」


「……早速来たか。まぁ……良いけど!」

「じゃあ……今晩は兄が居るから、虹心の部屋で良い?」


「そうだね!」

「私の部屋で、兄ちゃんのお話を聞こうか!!」


 俺は穏やかな表情で言うと、虹心は和やかな表情で言う。

 虹心は当事者では無いので、気楽な者で有る。


 前後が入れ替わり、俺は虹心の後を付いて行く。

 虹心が部屋に入ってから、俺も虹心の部屋に入る。


「兄ちゃん!」

「今回はベッドに座って、お話をしようか!!」


 虹心は和やかな表情で言って、俺をベッドへの着席を促す。

 押し入れからクッションを出すのが面倒くさいのだろう?


 俺は虹心の右横に座る。

 俺が虹心の横に座ると、虹心は穏やかな表情で俺に話し掛けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る