第301話 お姉さんに頼る その1

 ……


 二学期が始まって、約二週間が経過した。

 夏休みも完全過去の出来事に変わって、学園の授業も通常通りに戻った。

 残暑が厳しい中、俺は今日も勉学に励んでいる?


 この学園の文化祭で有る、“葉月祭”への準備はこれからで有るが、帰宅部の俺にとっては余り関係ない。

 帰宅部代表(?)のモザイクアート制作は一応有るが、大掛かりの作品を作る訳で無いから、早期に取り掛かる物では無い。


 それに、資材なども発注も教員が行ってくれるので、二年生モザイクアート制作委員会のような委員会も発足しない。

 だが、生徒会主導の、葉月祭実行委員会が来月以降に発足されるので、モザイクアート制作は、その葉月祭実行委員会の下で制作される。


 虹心が所属する演劇部も、まだ葉月祭への準備が本格化していないので、幽霊部員で有る虹心は化けて出ることは少なく、ほぼ帰宅部と変わらない生活をしている。


 ……


 俺と今日香ちゃんとの関係は……あの時以降から逢っていない。

 今日香ちゃんはやはり、俺との関係を求めるのでは無く、ケーキ屋の後継ぎ候補が欲しかったのだろう。


 俺にはその度胸はないし、パティシエへの道も進む気は無いので、俺の中では保留状態にしてしまっている!!///

 だが、このままの状態にして置くのでは無く、何処かで今日香ちゃんと話しをする必要性は感じている。


 虫の良いことを言えば、今日香ちゃんと恋人関係を持って、新倉洋菓子店に関しては“おじいさん”に任せろと本音は言いたい。

 しかし、それを言っても今日香ちゃんは、俺の言うことを聞いてくれないだろう。


 近い内に俺から、今日香ちゃんと話し合いの場を作らないと行けないな!

 一年生のクラスに行くのが嫌なら、新倉洋菓子店に出向いてでも……


 ……


 今日も何時も通りの学園生活が終わる。

 だが、まだ今週が始まったばかりで有り、週末まではまだ遠い……


 夕方のHRが終わったら、俺は素早く教室を後にする。


 伊藤さんや二村の関係は全く変化無しで有って、俺はもう、この二人のことは諦めていた。

 実らない恋を引き摺っていても仕方ない。


(この事を、虹心以外の人に相談したいけど……高岡たちに相談してもな…)


 俺はそう思いながら、教室から昇降口に向かっている。


(思い切って……真優美さんのお店に行くか!)

(事前連絡をすれば、真優美さんは俺の相談に乗ってくれると言っていた!!)


 俺は廊下のとある場所で立ち止まり、ポケットからスマートフォンを取り出す。

 俺は真優美さんへ連絡をするため、スマートフォンの操作を始めるが……


(……あっ! しまった!!)

(今日って……月曜日だから、お店は定休日だよな!!)


(けど、来店が目的ではないから、相談目的なら真優美さんは聞いてくれるかな?)

(どうしよう……)


 俺はしばらく悩むが……ダメ元で相談をすることを決める。

『鉄は熱いうちに打て』で有る。


「こんにちは。真優美さん!」

「少し、相談に乗って欲しいことが有るので、相談に乗ってくれませんか?」


「別に今日で無くても良いですから(^_^;)」

「お願いします<(_ _)>」


 俺は顔文字を使って、Railアプリで真優美さんに連絡を取ってみる。

 以前、真優美さんから教えて貰ったRailで連絡を取るのだが、今回が初めてで有る。


(直ぐに返信は来ないはずだから、家に帰るか…!)


 俺は立ち止まっていた廊下から歩き始めて、昇降口へ向かう。

 昇降口で上履きから下履きに履き替えて、昇降口を出た直後。都合良くスマートフォンからRailの着信音が鳴る!


『~~~♪』


(真優美さんからかな!)

(意外に返信が早かったな!!)


 俺は、この着信音を真優美さんからだと確信して、邪魔に成らない場所で立ち止まってスマートフォン操作を始める。


『こんにちは。三國君(*^▽^*)』

『私へ相談ごと?』

『今日はお店の定休日だし、三國君さえ良ければ、今からでも良いわよ♪』


 真優美さんから好感触の返信が来た!

 俺は今から、真優美さんのお店に向かって相談をするべきか!

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