第290話 二学期初日の朝 その3

 学園祭(葉月祭)と言っても、中等部の葉月祭は模擬店の出店や、物品販売が出来ないが、高等部の葉月祭は模擬店や物品販売が出来る。

 その為、中等部の葉月祭はクラス単位での催し物に成り、合唱や演奏をしたり、工作展示が中心と成る。


 逆に、高等部の葉月祭はクラス単位では無く、部活やクラブ単位で催される。

 中等部は横の繋がりを意識しているが、高等部の場合は縦の繋がりを意識しているからで有る。


 その様な関係上。俺の様な帰宅部連中は、葉月祭の輪には入れない!///

 そして、その救済措置で、帰宅部も葉月祭に参加出来るように、学年有志でのモザイクアート制作が有る。


 有志なので参加は自由で有るが、帰宅部の殆どはモザイクアート制作に参加する。

 俺も、もちろん参加している。

 やはり……帰宅部では有るが、祭りを見る側では無く、作る側にも参加をしたいからだ。


 当然、特進コースの帰宅部も、学年のモザイクアート制作に参加出来る。

 だが、伊藤さんは去年いなかった。特進コースは祭りどころでは無いのだろう!?

 この事を誰に言っているかは分からないが、俺は虹心に穏やかな表情で話し始める。


「虹心は演劇部だから、葉月祭に向けて忙しく成りそうだな…!」


「まぁ、これから忙しくは成って来るけど、私は所詮、幽霊部員だからね!」

「お手伝い出来る時は、お手伝いするけど、私は部活より家事が優先だから!!♪」


 虹心は嫌な顔をせずに、笑顔で俺に言う。

 冗談抜きで虹心は演劇部より、家事の方が好きかも知れない!?

 なら、家庭科部などの学園でも、家事が出来る部に入れば良かったのに??


(あっ、でも、そうすると……家庭科部に拘束をされるか!)

(虹心はあくまで、隙間時間で部活動を楽しみたいから……)


 俺はそんな事を思いながら、朝食を摂り続ける。

 虹心は当然、手持ち無沙汰だから俺が朝食を食べていても、どんどん和やかな表情で話し掛けてくる。


「今日は始業式と午前中の授業だけだから、午後からは夏休みの余韻が楽しめるね!」

「兄ちゃん!!」


「余韻と言っても……虹心はどうするのだ?」


「私は、何時も通りに過ごすよ!!」

「あっ、でも。一応演劇部顔を出してから家に帰るから、今日のお昼時は居ないからね!!」


 俺が尋ねる表情で聞くと、虹心は和やかな表情で俺に言う。

 俺が朝食を食べ終えるまでは、こんな感じで虹心は俺に付き合ったと言うか、面白がって俺の朝食を食べる姿を見ていた……


 ☆


「行ってきまーす!♪」


「行ってきます…!」


 学園に向かう時間と成ったので、今朝の約束通り。俺と虹心は二人で学園に向かう。

 だが、今朝は虹心の時間に合わせたので普段、俺が出る時間より5分ほど遅い。


 同じ葉月学園なのに、俺が虹心より早く家を出るのは、余裕を持って通学したいからで有る。

 余裕が有れば、忘れ物に気付いて家に取りへ戻ったり、お腹が痛くなった時などの不測な事態に備えられる!!


 後、高等部校舎は学園正門から、少し離れた場所に有るのでその関係も有る。

 虹心と同時に通学した場合。虹心の方が早く校舎にたどり着ける。

 俺たちは徒歩通学で有るので、散歩の延長戦みたいな感じで学園に向かう。


 今日の天気は晴れており、風も爽やかな風が有るので、気分も爽やかな状態で学園に向かえる。

 俺と虹心は、雑談を楽しみながら学園に向かう。


(……やっぱり、虹心を意識していると、私服姿も良いが学園制服姿も良いな!!)

(虹心から告白された時。虹心は制服姿で有ったが、あの時は何も感じなかったのにな…)


 夏休み中でも、学園の学年出校や全体出校は有ったが、時間のすれ違い関係で、虹心の制服姿を見るのは本当に久しぶりで有った。

 そして、俺が虹心を見ているのを当然気付き、虹心は嬉しそうな表情で言って来る。


「兄ちゃんは興味が無いと言いつつ、妹の制服姿が好きなんだね!!♪」


「!///」

「虹心…。余りそう言うのは外で言わないくれ!///」

「俺が恥ずかしいよ!///」


 俺は頬を少し染めて、恥ずかしい表情で虹心に言う。

 だが、虹心は和やかな表情で言い始める!!


「恥ずかしがること無いよ。兄ちゃん!!」

「制服には、不思議な力が有るんだから!!♪」

「それに、家の学園の制服。結構人気度高いんだって!!!♪」


「あっ、やっぱり、そうなんだ!」

「みんな、良いと感じているんだ!!」


 俺は少し嬉しそうな表情で虹心に言う。

 人気が有る制服なら、ガン見をしても問題は無いからだ?


『そんな訳有るか!』と、俺は心の中で突っ込みを入れた……

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