第281話 帰路に就く その1

「別に……見られても問題は無いよと思うよ。武蔵君!」

「却って見られた方が、両親も安心するのでは無いかな…?」

「肩の荷が下りたと……」


 落ち着いた口調で言う今日香ちゃん。

 今日香ちゃんの心は幼い上に、天然も少し入っているのかも知れない!?


(いや、そうはならんだろ。今日香!)

(そこまで養育放棄をしていたら、両親を名乗る資格は無いぞ!(汗))


(今日香と結婚する場合は、簡単そうだが……いや、ケーキ屋のおじいさんが居るか!)

(おじいさんが今日香を溺愛していたら、両親以上に厄介成るだろう…。何せ彼奴らは老○パワーが有るからな!?)


「まぁ、でも、今日は止めておこう……それに、ずっとスマートフォン無しで生活をする訳では無いでしょ!」


 俺は困った微笑み表情で、今日香ちゃんに言う。

 今日香ちゃんも困った微笑み表情で、俺に言い始める。


「うん!」

「今日や明日には、まだ持てないけど……僕が反抗するように成ってからは、両親も僕をビビりだしたからね!!」


「実は……近い内に持てそうなんだ!」

「それも、最新機種のピーチホンを!!♪」←俗に言う“リンゴ”!


「なら、今日香ちゃん!」

「今日香ちゃんが、ピーチホンスマートフォンを持ってから連絡先交換をしよう!!」


(学園生で、最新ピーチホンか…!)

(流石、両親が一流企業勤めだな!?)


(流行に敏感な虹心ですら、家庭の都合でド○イド君なのに……まぁ、虹心は文句を言わなかったが…?)

(俺ももちろん、ド○イド君だ!?)


「それで良いの。武蔵君…?」


 尋ねる表情で聞いてくる今日香ちゃん。

 俺は和やかな表情で答える。


「その方が良いよ!」

「お店のメールアドレスでは、深い会話は出来ないからね!!」

「仲が良くなれば成る程……プライベートな会話が増えるからね!!!」


「……うん。分かった!」

「武蔵君。一日でも早く持てるように私は頑張るよ!!」

「私がスマートフォンを持ててたら、いち早く、武蔵君に連絡するね!!♪」


 和やかな表情で言う今日香ちゃん。

 連絡する方法が無いのに、どうやって、いち早く連絡するのだろうか?

 まさか、俺の家まで来る!?


 ……


 今日香ちゃんはこの後も、俺たちと会話を続けようとしたが、運悪く来店客が来てしまったので、其処で俺たちと今日香ちゃんとの会話は終わりを迎える。

 30分近く…。俺は今日香ちゃんとの会話を楽しんだが、俺と今日香ちゃんとの関係は今後どう成るのだろうか?


『ありがとうございました~~♪』


 今日香ちゃんの陽気な言葉を聞きながら、新倉洋菓子店を出た、俺と虹心は帰路に就く訳だが、虹心の手にはケーキが入った袋を持っている。

 虹心は晩ご飯の為に、買い物に寄るとか言っていたな。


 俺と虹心が駅へ向かい始めた直後。

 虹心が歩きながら俺に、穏やかな表情で声を掛けてくる。


「兄ちゃん!」

「今日は兄ちゃんにとっては、良い日で終わりそうだね!!」


「良い日か…!」

「陽葵先輩とも関係は作れたし、今日香ちゃんと言う、高等部後輩も出来たな…!!」


 だが、俺はそれを嬉しそうな表情では言わずに、澄ました表情で虹心に言う。

 当然、その表情を見ている虹心は、不思議そうな表情で俺に聞いてくる。


「あれ…?」

「兄ちゃんは嬉しくないの??」

「一気に、二人の女性親友と関係が持てたのに!?」


「嬉しいと言えば嬉しいが……陽葵先輩は学園一の美少女だし、今日香ちゃんも家庭環境が複雑な上、ケーキ屋の跡継ぎ問題も有る!」

「俺が今日香ちゃんの人生を知るまでは、今日香ちゃんがベストだと感じていたが、俺の今の力では、今日香ちゃんは重荷の子とだと感じてしまっている…///」


「あ~~」

「兄ちゃんの言っている事は、間違ってないよ……」


 俺が悩んだ表情で虹心に言うと、虹心は理解した表情で言う。

 妹だけ有って、俺の能力や性格を全てを、把握してるのだろうな!

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