第210話 公園で食べるお弁当 その1

 虹心は帽子を脱ぎながら、ミニタオルで汗をぬぐっている。

 髪型は何時ものツインテールで有る虹心だが、今日は帽子を被っている。


 屋外に遊びへ来ているから、日差しや日焼けのことも、虹心は考えているのだろう。

 俺は帽子を被る習慣は無いから、何時も通りで有る?


「さて、お弁当を食べる用意をしますか!」

「兄ちゃん!!」


 虹心は和やかな表情で言って、手提げ袋をテーブルに置いて、お弁当箱を取り出し始める。

 東屋あずまやに設置されている、テーブルやベンチは家族連れを想定した作りに成っている。


 そのため、広さも十分で有る。

 俺も昼食の準備を始め、持っている水筒の蓋を開けて、水筒内に入っていたコップを使って、俺と虹心の分の麦茶を注ぎ始める。


『パカ!』


 虹心が、とあるお弁当箱の蓋を開けると、美味しそうな鶏の唐揚げや玉子焼きが顔を見せる!!

 今日の朝食後に、虹心はお弁当を作って持って来てくれている。


 お弁当が入っている容器は3つ有って、1つ目は唐揚げなどのおかず類が入ったお弁当箱。

 2つ目は屋外で食べやすいように、主食の“おにぎり”が入っている。

 3つ目はフルーツ類と漬物が入っている。


(虹心が、この公園で食べる為に弁当を作っていたが、此処まで豪勢に作るとは……)


 俺は料理が出来ない部類に入るので、虹心のお弁当作りには参加と言うか、手伝いはしていない。

 このお弁当を作る為に勿論、弁当代千円を取られたが、これだけ豪華なお弁当なら納得するしか有るまい!?


 これだけ豪華なら今回は絶対に、お釣りは出ないで有ろう!?

 それとも、またお釣りが出来て、虹心の体で払って貰えるのだろうか!!///


「はい!」

「兄ちゃん!!」


 虹心は笑顔で言いながら、紙皿の取り皿と割り箸を渡してくれる。

 俺はそれを、笑顔で受け取る。


「ありがとう。虹心!!」

「凄く、豪華な弁当だね♪」

「母さんが作る弁当より、遙かに豪華だよ!!♪」


「だって、兄ちゃんとの初デートだもん!!♪」

「お弁当だって、もちろん張り切るよ!!♪」


 嬉しそうな笑顔で言う虹心。

 虹心は本当に、俺とのデート気分なのかも知れない。


「じゃあ、食べようか。兄ちゃん!!」


「うん。食べよう、食べよう!!」

「虹心!!♪」


『いただきます!』


 お互い笑顔で言い合って、二人で食事前の挨拶をしてから、虹心が作ってくれたお弁当を俺は食べ始める。

 軽く麦茶で喉を潤した後、お弁当の定番で有る、鶏の唐揚げから箸を付ける。

 唐揚げは当然、揚げたてが美味しいがお弁当で食べる、冷めた唐揚げも何故か美味しい!!


「パク!」

「もぐ、もぐ、―――」


「外で食べても、虹心の味だな!!」

「何時も通り美味しいよ!♪」


 お弁当箱に入っている、鳥の唐揚げは冷凍食品では無く勿論、虹心の手作り唐揚げで有る。

 母親も唐揚げを作るが、虹心の方が美味しいと俺は毎回感じる!!

 鶏肉の種類や味付け、揚げ方も同じはずなのに??


「ありがとう。兄ちゃん!!」

「そう言われると、私も作った甲斐が有るよ!!」

「余るぐらい揚げたから、たくさん食べてね!!♪」


 虹心は嬉しそうな表情で言いながら、玉子焼きを頬張る。

 虹心が作る玉子焼きは、和風出汁の効いた甘い玉子焼きで有る。


 虹心は砂糖だけの玉子焼きでは無く、和風出汁が効いた玉子焼きが好きだと言う。

 俺は別に、こだわりの玉子焼きは無いので、美味しければそれで良い。


 鶏の唐揚げや玉子焼き以外にも、焼きウィンナー、チーズちくわ、茹でブロッコリー、ミニトマトも入っていてバリエーション豊かで有り、栄養バランスも考えられている。



 俺のことを意識しているからこそ、虹心はこれだけ豪華なお弁当を作ってくれたのだろうか?

 俺としては凄く嬉しいけど、兄妹で食べるお弁当をこんな豪華にしてしまうと、この関係を母親に気付かれないだろうか……

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