第196話 昼食のリクエスト

「虹心が、昼食を作ってくれるのか?」


 俺は尋ねる表情で虹心に聞く。

 三國家の場合、昼食は各個人で摂る事に成っている。

 大型連休やお正月時は除かれるが、基本はそう言ったスタイルで有る。


 それは、母親や虹心の軽減負担から来る理由で有るが、今まで虹心が俺の為に昼食を作ってくれた事は無いと思う?

 兄妹の関係を深めたから、その流れだろうか??


「そうだよ!」

「兄ちゃんとは兄妹でも疑似恋人関係だし、彼女が彼氏の為に料理を作るのは当たり前でしょう!♪」


 笑顔で、嬉しい口調で言う虹心。

 そう言うもんなのか??


「そっか……!」


 俺は納得した表情で言う。

 虹心が作る料理は美味しいし、それを断わる必要も無い。

 俺は早速、頭の中で昼食リクエストを考え始める。


(俺本来の昼食予定は……買い置きして有る、カップラーメンにするつもりだった…)

(昼食に凝った料理を食べたいとも思わないし、それを虹心に作らせるのも気が引ける……)


 今日の母親勤務シフトは日勤で有るから、晩御飯は当然母親が作る。

 母親が晩御飯を作ると言う事は、その後片付けも母親が中心に行われる。


 最終の生ごみ処分時や、生ごみを専用バケツに入れる時、昼食の調理時に出た生ごみを母親に見られると、不味い事が起きるかも知れない!?

 先ず知られても、正直に話せば問題は無いと思うが……


(なるべく、生ごみが出ない料理にしないとな!)

(……今日の気分はカップラーメンだったから、ラーメンが良いな!)

(それにラーメンでも、俺の場合はインスタントラーメン(袋麺)で十分だ!!)


 俺は頭の中で、昼食のリクエストをインスタントラーメンに決める。

 インスタントラーメンなら、生ごみも出ないし簡単に調理が出来る!!

 俺は穏やかな表情で、虹心に話し掛ける。


「虹心。今日の昼食はインスタントラーメンが食べたい!」


「?」

「……インスタントラーメン?」


 虹心は怪訝な表情で言う!

 簡単な料理なのに、虹心は嫌なのか!?


「えっ!?」

「駄目?」


 俺は少し驚きながらの表情で虹心に言うと、虹心は呆れた表情に変わって言い始める。


「……兄ちゃん。私が料理を出来るのを兄ちゃんは知っているでしょ!」

「何で、そんなお手軽な料理を頼むのよ…!」

「もっと、他に食べたいのが有るでしょ……」


「虹心。今日のお昼は、カップラーメンにするつもりだったんだ!」

「モードが、ラーメンモードで出来てしまっていたし、それに今日の晩ご飯は母さんが作るだろ…」

「余り凝った料理を虹心が作ると、母さんに勘づかれるかなと思ってさ……」


「勘づかれるって……兄ちゃん!///」

「何、変な意識しているのよ///」


 俺は少し真面目な表情で言うと、虹心は頬を少し染めて素っ頓狂な表情で言う!


「別に私が、兄ちゃんの昼食を用意したからと言って、お母さんも過度な意識で見ないよ!」

「却って、仲が良く成って良かったの目線で見てくれるよ!!」


 和やかな表情で言う虹心。

 だが、俺は昼食にインスタントラーメンが食べたく成ってしまった。

 俺は再度、真面目な表情でお願いをする。


「けど、虹心……俺はやっぱり、今日の昼食はインスタントラーメンが食べたいんだ!」

「それに……好きな人のリクエストに応えるのも、彼女の役目では無いか?///」


「……」

「まぁ……兄ちゃんが食べたいのなら、そうするけど本当に良いの?」


 虹心は目を細めながら言う。

 虹心の中では、もっと凝った料理を作る気でいたのだろう。


「うん!」

「インスタントラーメンが食べたい!!」


 俺は張りの有る口調で虹心に言う。

 すると虹心は、困った微笑みの表情に成って言い始める。


「しょうが無い、兄ちゃんだね!」

「私が折角作って上げると言うのに、簡単な物を頼んじゃって!」


「なら、兄ちゃんのリクエスト通り、今日の昼食はインスタントラーメンを作るよ!」


 虹心が折れたと言うのも変だが、今日の昼食は虹心が作るインスタントラーメンに決まった。

 でも、この家にインスタントラーメンの買い置きは有っただろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る