第163話 最後の灯火が消える時 その1

『コン、コン♪』


「兄ちゃん…。まだ起きている?」


 ドア向こうから虹心が、小声で声を掛けてくる。

 時間的に、もう俺が寝ていることを意識しているのだろう。


「虹心か!」

「まだ、起きて居るぞ!!」


 俺はドア向こうに居る虹心に、陽気な声で返事をする。


「あっ、まだ、起きていたんだ!」

「なら、部屋に入るね♪」


『ガチャ♪』


 虹心はドア向こうから元気な口調で言い終えると、ドアを開けて俺の部屋に入ってくる。

 虹心は部屋のドアを閉めてから、俺の方に目線を合わせ、穏やかな表情で話し始める。


「兄ちゃん!」

「さっき、小鞠ちゃんと連絡を取ったのだけどね……」


 其処まで言った所で、虹心は残念そうな表情に変わる!?

 まさか……最悪の事態を迎えてしまうのか!?


「……小鞠ちゃん。兄ちゃんとの関係を一時保留したいんだって…///」


「一時保留!?」

「俺を振ったのでは無く、一時保留なの!?」


 俺は虹心の言葉に、驚きながらの表情で言う!

 小鞠ちゃんの中で、何かしらの問題が発生しているからこそ、俺との関係を保留にされたので有る。


「うん……」

「詳しいことは明日小鞠ちゃんが、兄ちゃんに改めて話すとは言っているけど、小鞠ちゃん。同じクラブの人に告白されたんだって!///」


 少し頬を染めながら、困った微笑みの表情で言う虹心!


本気まじで!?」

「それは何時なの!?」

「虹心!!」


「タイミングが良いと言うのか悪いと言うのか、丁度、兄ちゃんと縁を切った日何だって…///」

「その日のクラブ活動終了時に、クラブの男子から告白されたんだって!///」


「…………」


 俺は言葉が出なかった……

 最後の砦で有る、小鞠前線が意図も簡単に崩壊するとは……


 俺の中では、小鞠ちゃんで巻き返しをはかるつもりで有ったが、それが出来なく成ってしまった……

 虹心は困った表情で俺を見つめているが、静かに話し始める。


「……まぁ、ショックを受けるよね…!」

「午前中、伊藤さんに振られて、小鞠ちゃんも兄ちゃんを選ぶか、クラブの男子を選ぶかで迷っているのだから…///」


「……小鞠ちゃんが保留しているのだから、まだ完全には振られた訳では無いよな!」

「虹心……」


 俺はすがる表情で虹心に言うが、虹心は目線をらしながら言う。


「……言葉的にはそうだけど、小鞠ちゃんは兄ちゃんとの関係を、これ以上求めていない感じで有った///」

「小鞠ちゃんが兄ちゃんと絶交宣言をした時。何故私に、相談をしなかったことも聞いて見たのだけど、兄ちゃんが小鞠ちゃんを意識していないのに、それを小鞠ちゃんが思い続けるのも辛いと言っていた……」


「…………」


(小鞠ちゃんの言い分も、非常に理解出来てしまう!///)


 恋愛で一番辛いのは、勿論失恋で有るが、失恋でも色々な種類が有る。

 定番の、告白失恋が一番ショックが大きいが、片思い中の相手に、彼氏や彼女が居た時を知った時が一番辛い……


 特に小鞠ちゃんの場合は、俺が小鞠ちゃんを眼中にしていないことを理解しつつ、俺へ恋心を抱くのだから、心への負担は半端では無い筈だ!!

 小鞠ちゃんの相手が、同じクラブ同士の人なら、ガーデニング関連でも会話が合うだろうし、お互い素性が良く理解し合えているから、直ぐに破局を迎えることも無いと思う?


「その辺の話しは明日、小鞠ちゃんが改めて言うと思うけど、厳しい状況に成っちゃったね!///」

「兄ちゃん…///」


 虹心は、落ち込んだ表情で言う。

 妹ながらでも、俺の将来を真剣に心配しているだろう。

 俺は異性には恵まれなかったが、妹だけは恵まれたのかも知れない……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る