第3章 身近すぎる異性との関係

第158話 妹と昼食 その1

 ……


 俺は、複雑な表情をしながら家へ帰る。

 だが、全ては終わったことだ。


 園芸クラブの花壇から離れる時、俺は周囲を軽く見たが人気は無かった。

 この時期は梅雨の時期でも有るから、小まめな水の管理をしなくても、良い時期かも知れない?


 俺は家に戻ると、玄関には虹心の靴しか無かった。

 母親の勤務シフトを把握していないが、この時間に居ないと言うことは、先ず仕事で間違いないだろう。

 時間帯的に虹心は、台所のテーブルで昼食を摂っているだろうと思い、俺は自室に戻る前に台所へ入る。


「あっ、兄ちゃん!」

「お帰り~~♪」


 俺の予想通りと言うか、虹心は私服姿で昼食を摂っていた。

 俺の顔を見て、笑顔で声を掛けてくる。


 その時に食べている物を見るが、何かの種類のパスタを食べている。

 俺はパスタ料理に詳しい訳では無い。


「あぁ……ただいま。虹心!」


 俺は虹心に穏やかな表情で帰宅挨拶をすると、虹心は和やかな表情で話し始める。


「兄ちゃんも、昼食まだなんでしょ?♪」

「お母さんがお昼用に、冷凍食品とかを用意して置いてくれたよ!」

「パスタとかピザとか、色々入っているよ~~♪」


 虹心は”はしゃいだ”声でそう言うが、俺はそんな話を母親からは聞いていない。

 俺には言わなかった母親で有るが、虹心には言付けをして置いたのだろう。

 虹心と母親は、女性同士か仲が良い。


「あっ……そうなんだ。虹心!」

「下手にコンビニで買って来なくて良かったよ!!」


 本音を言えば、今日はコンビニに寄る元気も気力も無かったが、わざとらしい口調で俺は言う。


「……」


 虹心は俺の異変に気付いたのか、澄ました表情で見つめている。


「さて……何、食べようかな~~」


 俺は空元気の声で言いながら冷蔵庫に近付き、冷凍庫の扉を開けようとした時、虹心は疑問を感じた表情で聞いて来る。


「ねぇ……兄ちゃん!」

「今日、何か有ったでしょう!!」

「言いたくは無いけど……もしかして、伊藤さんに振られた?」


『ビクッ!』


「!!!」


 虹心の言葉で体が思いっきり反応を示し、同時に俺は驚いた表情をする!

 お前はエスパーか!!

 俺の姿を見た虹心は『あちゃ~~』の表情をしながら言い始める。


「あ~~~、やっぱりか~~~!///」

「最近の兄ちゃん…。私への相談や報告も無かったし、元気さも何処となく無かったからね~~」

「相手が伊藤さんだから厳しいかなと思っていたが、やっぱり駄目だったか~~」


 虹心は言い終えると、パスタをフォークで絡めて食べ始める。

 虹心!! 俺への慰めの言葉は無いの!?


 俺は虹心に慰めて貰いたい気分だったので、冷蔵庫に向けていた体を、虹心の方へ向きを変えて、寂しい表情をしながら話し始める。


「あっ、あぁ……虹心の言う通りだ!///」

「さっきの放課後……。伊藤さんに呼び出されて、お断りの言葉を貰った…///」


「もぐ、もぐ、―――」


 俺はそう言ったのに、虹心は反応を示すこと無くパスタを食べている!?

 俺の失恋話より、パスタの方が大事ですか!??

 と感じた直後。虹心は俺の方に顔を上げて、どうしようもない表情で言い始める。


「終わっちゃった者は、どうしようも出来ないよ。兄ちゃん///」


「けど、兄ちゃんは慣れた者だから、失恋しても食欲は有るでしょ!!」

「この、鮭とほうれん草のパスタ美味しいよ!♪」


 言葉の途中から、和やかな表情で言う虹心!?

 美味しいものを食べて伊藤さんのこと何か、忘れろと言いたいの!?


「……」


 俺は虹心の言葉で、どう返事をしたら良いのか分からなくなる。

 すると、虹心は困った微笑みで話し掛けてくる。


「兄ちゃん……伊藤さんや二村さんを失ってしまったけど、小鞠ちゃんや私が居るから元気出してよ!!」

「伊藤さんから振られてしまった以上、兄ちゃんの選択肢は小鞠ちゃんしか居ないからね!」


「都合良く明日、うちへ小鞠ちゃんが遊びに来るし、小鞠ちゃんにもこの顛末を話そうか、兄ちゃん!!」

「ライバルが居なく成ったことを聞くと、きっと大喜びするよ。小鞠ちゃん!」


(……小鞠ちゃんは本当に、虹心に報告をしていないのか?)

(俺への絶交宣言のことを!!)


(けど、どうしてだろう…?)

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